海外に行けない今だからこそ
旅の達人・秋山秀一さんに聞く

コロナ禍で世界が遠くなったように感じる昨今。

こんなときこそ外国の人々の暮らしに思いをはせ、身近に感じてみてはいかがでしょうか。

訪れた国や地域90以上、海外への旅は213回という旅行作家の秋山秀一さんにお話を聞きました。

秋山秀一さん

秋山秀一さん
旅行作家、元東京成徳大学教授、NHK文化センター講師。日本旅行作家協会顧問理事、日本エッセイスト・クラブ理事、日本外国特派員協会会員。ちばぎん総合研究所発行『マネジメントスクエア』の連載「旅の達人が見た 世界観光事情」他、多数の旅行エッセーを執筆。鎌ケ谷市在住。鎌ケ谷市国際交流協会(KIFA)会長。

<目次>

・世界の国々と人々の暮らしに魅せられて

・コツコツ歩いて蓄えた旅の体験が財産

・旅に行けること自体が尊く素晴らしい

世界の国々と人々の
暮らしに魅せられて

鎌ケ谷のご自宅に秋山さんを訪ねました。 

世界各国の旅で撮影した写真や記念の品々、書籍や映画のDVDであふれんばかりの室内は、さながら博物館のよう。

それぞれにまつわる思い出を気さくに話してくれる秋山さん、次から次へと湧き出る話の泉は尽きることがありません。

海外への興味の芽生えは小学生時代。

学校近くの公立図書館で、世界の国々を紹介した写真入りの本に心躍らせ、夢中でページをめくりました。

マチュピチュ
▲ペルーの世界遺産、マチュピチュ遺跡

ノエルのシャンゼリゼ
▲一年で一番美しいノエル(クリスマス)のパリ。
シャンゼリゼのイルミネーション 

アンコール・トム
▲カンボジア。アンコール・トムの中心、
バイヨンの観世音菩薩像

卒業文集に書いた将来の夢は既に「海外に行くこと」。

当時は今のように海外旅行が一般的でなかった時代ですが、25歳で初めての海外行きを実現して以来、毎年世界のあちこちに出掛けては旅の思い出をエッセーにしたため、発表してきました。

40回以上も訪ねているロンドンをはじめ、何度も繰り返し訪れる場所も多く、そのたびに街の変化を目の当たりにします。

何度行っても新しい発見があるのが旅の魅力なのです。

ナショナルギャラリー
▲ナショナルギャラリーで好きな絵を観るために
何度もロンドンへハーマジェスティ劇場
▲「オペラ座の怪人」を見るために何度も足を運んだ
ハーマジェスティ劇場(ロンドン)

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コツコツ歩いて蓄えた
旅の体験が財産

秋山さんの旅の基本は「まち歩き」。

自分の足で実際に現地を歩き、自ら撮影することを大事にしてきました。

一見当たり前の事のようですが、現在は借り物の情報や写真でもそれなりの旅行本が作れる時代。

ただ、秋山さんから見れば「本当に歩いて書いているかどうかは、読めばすぐに分かる」のだそう。

「旅に行って書いておしまいではなく、10年後、20年後にも残るものを」との思いで書いているエッセーは、自分で見たもの、感じたもの、シャッターを切った写真にこだわっています。

イグアスの滝
▲世界三大瀑布の一つ、イグアスの滝。
悪魔ののどぶえ(アルゼンチン)。撮影していると…

イグアスの滝の蝶々
▲カメラに蝶々が止まってそのまま動かず…
しばらく一緒に行動したそうです

ナイアガラの滝
▲せっかくなので他の世界三大瀑布も。
これはナイアガラの滝(スカイロン・タワーから眺めるカナダ滝)

ビクトリアの瀧
▲そしてこれがビクトリアの滝。
ヘリコプターに乗り下流側から眺めたところ

そんな秋山さんですが、今年2月のトルコ旅行以来、海外に行けていません。

もちろん新型コロナウイルス感染症流行のためです。

今年予定していたイスラエル・ヨルダン、中国・杭州、カナダ、パラオ、北欧、ニュージーランド、スイスなどの旅は全てキャンセル。

「幸いまだ原稿にしていないストックがたくさんあるので、現在はそれらを整理しながらじっと我慢の日々」を過ごしているそうです。

ロンドン
▲今年は大好きなロンドンにも行けていません

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旅に行けること自体が
尊く素晴らしい

3年前からYouTubeで「旅行作家秋山秀一の世界旅」を配信しています。

思いがけず「取材の様子をそのまま動画に撮影しよう」と提案されたので、その流れでいろいろ質問させていただきました。

(取材の様子を収めた動画はこちら

―好きな国ベスト3はどこですか?

秋山(以下):…どの国もそれぞれ良い所があるんですよね。

三つに絞るのは難しいなあ。

ロンドンは好きですね。

ぶらぶらっと歩いてパブに行ったり、「オペラ座の怪人」などミュージカルも見たい…。

香港周辺の島もいいな。

パリはパリの良さがあるしアイルランドもいいし…。

あ、ポルトガルも好きですね。

次々出てきて困ったもんだ(笑)。

香港周辺の島
▲香港、ラマ島。自然と食が魅力。
ソックー湾の眺め

リスボンの街
▲ポルトガル。坂の町リスボンを100年以上も走り続けるケーブルカー、グロリア線エッフェル塔と桜
▲満開の桜とエッフェル塔(パリ)

―では食べ物はいかがでしょう?

:臭いなんて言われているドリアンですが、マレーシアの山奥で採りたてをパカッと割って食べると、クリーミーで本当においしい! 

イギリスの料理はまずいなんてよく言われるけれど、パブ「シャーロック・ホームズ」の2階のサーロインステーキは絶品ですよ。

軟らかくておいしいのに20ポンドしないんですよ。

パリにもおいしいものがある。

だから…それぞれだね(笑)。

パリのサーモン
▲パリで食べるサーモンは大変美味

バイキング料理▲アイスランドの伝統的なバイキング料理

―逆にこれはダメだ…というものは?

:だいたいどんなものでも食べられるんです。

ただ、びっくりしたのはパリでの食後のお茶かな。

僕らは食事の後、口をスッキリさせたくてお茶を飲むイメージだけど、パリでは料理には砂糖を使わない代わりに、最後に出てくるお茶は緑茶でも烏龍茶でも砂糖が入っている。

文字通り食後のスイーツなんだ。

それには驚いたね。

―事前に抱いていたイメージと最もギャップがあって驚いた国は?

:あんまり事前に調べて行かないんです。

比較的柔軟性が強いのか、見たもの聞いたもの食べたもの、そのまま「こういうものなんだ」と受け入れて楽しめるので。

―自分ばかりでなく、関わった周りの人も幸運になる「グッドラック秀ちゃん」だそうですが、それを実感するエピソードがあったら教えてください。

:古希を迎えても好きな旅をしてエッセーを書かせていただく、それ自体がグッドラック。

本当にありがたいことだと思っています。

アイスランドのオーロラ
▲アイスランドで見たオーロラ

―できなくなってあらためて気付いた旅の素晴らしい所は?

:今回のコロナだったり、紛争があったりすると旅に行くことができない。

そう考えると「旅ができる」ということ自体がどんなに素晴らしいことなのか、実感します。

普通に動けるというのは本当に素晴らしいことなんだと。

また絶対行ける状況になるはずだから、今はその時に備えてじっくり準備をしたいと思います。

アンコールワット
▲カンボジア、アンコールワット。
朝焼けの中、日の出を待つ

―秋山さんにとって旅とは何ですか?

:旅は僕の学校。

子どもの頃から人の集まる所に行ったり、新しいモノ・事を体験してみることが好きだった。

なんでも自分で見て確かめたかった。

「自分の知らない所にいろいろな人生がある」と教えてくれたのも旅。

いつも歩きながら考え、学んできました。

だから旅は学校なんです。

動画撮影終了後、今後の抱負を伺うと、「大好きな映画をテーマに、旅先の写真を絡めた癒やしのエッセーを書きたい」という構想をを明かしてくれました。

「旅と映画と本こそわが人生」と語るグッドラック秀ちゃんの旅は、まだまだ続きます。(R)

旅の達人に聞く世界観光事情
▲8月に出た新刊『世界観光事情 まち歩きの楽しみ』(新典社)では35カ所の旅を収録

 

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この記事を書いた人

編集部 R

「ちいき新聞」編集部所属の編集。人生の大部分は千葉県在住(時々関西)。おとなしく穏やかに見られがちだが、プロ野球シーズンは黄色、Bリーグ開催中は赤に身を包み、一年中何かしらと戦い続けている。

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