2022年2月、恩田家住宅主屋と蔵、八條八幡神社本殿の3件が、八潮市初の国登録有形文化財に登録されました。
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公開 2022/07/25(最終更新 2022/07/25)
3件の文化財の歴史と見どころ
八條八幡神社は、宝徳年間(1449~1452年)に山城国から八幡大神、武蔵国岩槻から久伊豆大神、同じく武蔵国大宮から氷川大神の三神を併せ祭ったのが始まりと伝えられ、他の八幡神社と区別するため「八條八幡神社」と呼称されています。
明治24年(1891年)に再建された本殿には、埼玉県内社寺に江戸時代から見られる彫刻建築の伝統を引き継ぎ、柱や桁の木口には丸彫彫刻、向拝柱(こうはいばしら)には昇降対の竜の彫刻が。
また、再建2年前に公布された大日本帝国憲法の発布式や御前会議の様子を題材とした彫刻も施されています。
恩田家住宅は、八潮の伝統産業である染色業を営む七代目により建設されました。
明治30年(1897年)に建てられた蔵は木造真壁造り桟瓦葺き。
西側に大きく下屋庇(げやひさし)を設けて必要な作業スペースが作られています。
大正6年(1917年)に建てられた主屋は木造平屋建て寄棟造り桟瓦葺きで、昭和41年(1966年)の大幅な改修までは、千葉県・松戸や流山周辺で見られるような客座敷(トコノマ・ナカノマ・ゲンカンノヘヤ)につながる出入口風の玄関が設けられた間取りでした。
都市化が進む八潮市域で、当時の形式を残す住宅は貴重な存在です。
記念講演会と見学会
登録を記念し、去る6月に八潮市立資料館主催の講演会と見学会が開催されました。
講演会は、芝浦工業大学の小柏典華(こがしわ のりか)助教(文化財博士)が講師となって、国登録文化財の意義や社寺建築の変遷から、八條八幡神社の特徴などが幅広く語られました。参加者からの質疑もあり、予定時間を超える講演会となりました。
翌日の八條八幡神社見学会では、講演で紹介された本殿の彫刻などを間近に見ることができました。
恩田家住宅は現在も所有者が居住中のため、普段は見ることのできない主屋内部の立派な大黒柱や欄間の精細な彫刻なども見学でき、貴重な機会となりました。
見学会の最後にはそろって記念撮影など、和やかな雰囲気。八潮市立資料館の職員による進行と丁寧な説明で、参加者一同充実したひと時を過ごすことができました。
八潮市立資料館で「八潮建物解体新書」
建物は、用途や建てられた年代、土地の気候風土や文化により異なる個性を持つことから、その特徴により先人の暮らしや歴史を読み取ることができます。
八潮市立資料館ではこの夏、建物の構造や意匠、市域の職人に焦点を当てて八潮の建物の魅力を紹介する企画展「八潮建物解体新書」を開催。
会期中には展示解説会や「八條の建物見学会」(事前申し込み制)も予定されています。
6月の講演会、見学会を逃した人もこの機会に足を運んでみては。
(取材・執筆/松島徹八)
※写真はすべて八潮市立資料館提供
八潮市立資料館 第47回企画展「八潮建物解体新書」
日時/8月6日(土)~9月19日(月・祝)午前9時~午後5時
※期間中の休館日は月曜(最終日除く)および8月12日(金)
場所/八潮市立資料館
住所/埼玉県八潮市南後谷763-50
料金/無料
TEL/048-997-6666(八潮市立資料館)
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