動物に関わる仕事がしたい 彼らが「馬の学校」を選んだ理由

カメラを向けると、ぴったりと頬を寄せ合ってこちらを見てくれた
牝馬「シルクエアリー」と犬塚あいさん(16歳 ※取材当時)。

愛知県の実家を離れ、現在千葉県で寮生活をしているあいさんは、山武郡芝山町にある馬の学校「アニベジ アニマル・ベジテイション・カレッジ」高校課程に通う1年生です。

この笑顔からは想像できませんでしたが、中学時代は引きこもり状態で不登校だったというあいさん。

親のすすめで「ホースセラピー」に出合い、馬に癒されたことで、「動物に関わる仕事がしたい」と、馬の学校に進学することを決めました。

公開 2019/02/27

編集部 広田 みずほ

編集部 広田 みずほ

編集者。埼玉県春日部市出身→千葉県八千代市在住。地域新聞社で広告の仕事をして16年。地域の魅力、お店の魅力を伝えます。好きなものは東南アジアとハイボール。勝田台駅周辺の酒場放浪記を書きたい。★X(旧Twitter)★@tahirom2 ★note★nue34

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ホースセラピーの効果を伝えたい

シルクエアリー(通称エアリー)は、あいさんが「アニマル・ベジテイション・カレッジ(以下アニベジ)」でほぼ毎日乗っている馬です。
エアリーもあいさんも互いに“一緒にいられてうれしい”という感じで、本当にかわいい!

でも、最初からうまくいったわけではありませんでした。
エアリーは繊細な性格で、どちらかというと扱いが難しい馬。
嫌なことがあると暴れてしまったり、噛まれたりすることもあったといいます。
ですが、馬場馬術(馬をいかに正確かつ美しく運動させることができるかを競う競技)の大会に出場したり、毎日お世話をしたりするうちに信頼関係が生まれ、今ではこんなに仲良しに。

二人(?)の関係性は、動画の方がよく伝わると思いますので、
まずはアニベジ入学のきっかけや将来の夢などについて聞いたインタビュー動画をご覧ください(途中でついあいさんに甘えてしまうエアリーに注目)。

 

―――――あいさんにもう少し詳しくお話を伺いたいと思います。まず、中学を卒業してすぐに馬の学校に進むのは不安じゃなかった?

かなり迷いました。

でも当時中学校に行ってなくて、ずっと引きこもりだったので、「自立しないとな」と思って。

尞に入ったら絶対に生活のこととかを一人でやらなきゃいけないし、馬にも毎日触れられる。
多分このまま実家にいたらダメだなと思って決めました。

アニベジを選んだのは、自分でネットで調べたら馬の数がとても多くて、深く学べそうだと思ったからです。

 

―――――しっかりしてる…でもやっぱり愛知のご家族は心配したのでは?

最初はすごく心配されたし反対されました。

でも馬が好きで、もっと馬のことを勉強したいという意志は固かったので自分で説得して、今は応援してくれています。

ホームシックになった時もあったけど、友だちもできたし、自然と慣れました。

 

―――――尞は成田市内にあるそうですが、千葉県での暮らしはどう? 

都会だなと思います(笑) 地元は愛知の田舎の方だったので。

休みの日は友だちと銚子の海を見に行ったり、ショッピングセンターに買い物に行ったりもします。

 

―――――思い切って親元を離れて毎日馬と学んでみて、成長したなと感じることはありますか? 

精神的に強くなれました。

毎日結構大変な作業もあるし、全然うまく乗れなくてへこむこともあった。

でも、こっちに来てからは全部ポジティブに考えられるようになりました。

地元では嫌なことがあるとすぐしゅんとして沈んじゃったりしてたんですけど。

ちょっとくらい嫌なことがあっても「明日学校に行けばエアリーに会える」って思ったり。

学校に来るのが楽しみです。

 

―――――すごい。好きなことだから頑張れるんですね。将来はインストラクターになって馬の素晴らしさを伝えたいそうですが、馬の素晴らしさって具体的にどんなところ?

関わったら関わった分だけ信頼関係が生まれて、自分の気持ちに馬も応えてきてくれたりするところ。

私が馬に触れたきっかけは、中学時代に親が「ホースセラピー」をすすめてくれたことでした。

それから乗馬を始めて、本当に癒されてすごく良くなった。

そういう自分の経験も伝えていきたいと思います。

 

「ホースセラピー」とは、今注目されているアニマルセラピーの一種。

馬に乗ったり触れたりすることは、心身に不調を抱える人々を癒やしたり、状態を改善したりする効果があるといわれています。

リハビリテーションの方法の一つとしてニーズが高まっており、アニベジでもホースセラピスト養成課程を2020年4月から新設する予定です(2019年4月より募集開始)。

 

あいさんの場合は、高校卒業資格も取得できる高校課程。

馬術は早く始めることで騎乗バランスを早期に習得できるため、アニベジでは中学卒業後すぐに馬のプロを目指すことができるよう、高等学校と連携した高等学校卒業サポート制度があります。
近年は、さまざまな理由から高校へ進学しなかった、高校を中途退学してしまったという人も増えており、そのようなケースのリスタートにも適した課程となっています(他校からの転入や編入も可能)。

高校卒業に必要な74単位のうち20単位はアニベジの動物実習が高校の授業として認められるので、あいさんいわく「両立はそれほど大変ではない」とのこと。

尞は全室個室で、勉強に集中できる環境も万全。
馬の勉強と高校の勉強に励みながら、アルバイトもしています。

目下の目標は、馬術の大会でエアリーと納得できる演技をすること。
「結果は後からついてくると思うので」と、力強く語りました。

女性騎手の藤田菜七子さんが話題になるなど、どんどん女性進出が進んでいる馬の世界。
アニベジでも近年女子生徒の入学が増えているといいます。

あいさんのこれからの活躍も楽しみですね。

 

競走馬を育てたい

続いて、アニベジ一般課程・厩務員コース2年生の鳥海翔貴さん(23歳)にもインタビューさせてもらいました。

 

高校卒業後、一度は大学進学を考え浪人しましたが、やはり子どもの頃から憧れを抱いていた馬に関わる仕事に就きたいとアニベジに入学。

競馬の迫力や走る姿の美しさに魅了され、もともとはジョッキーになりたかったという鳥海さん。

現在は競走馬の育成や生産に携わるのが夢です。

 

 

―――――馬の学校の一日って具体的にどんなことをするのですか?

1年生のうちは9時頃から一日がスタートするんですが、2年生になると6時半に尞を出るバスに乗って7時には学校に来ます。
馬のエサやりやきゅう舎の掃除をするためです。

それから乗馬レッスンを受けたり、座学の講義を受けたりします。

馬の手入れなどの実習は学年を超えた数人のグループで行うので、先輩からもいろいろ教えてもらえます。

 

―――――朝早いですね! 辛いことや失敗はないですか?

失敗は多いです(笑)
落馬することもあります。

うまくいかないこととか、できないことはたくさんあって、先生や先輩、友だちに聞いたりもするけど、最終的には自分で感覚をつかむしかない。
正解がないので、毎日が勉強。大変だけどそこが面白いところでもあります。

馬に関わる仕事をしていきたいので、多少のことでへこたれてはいられないです。

 

―――――なんと頼もしい…学校生活や尞生活を通して、自分で「ここが変わったな」と感じることは?

もともとは内気な方で、こうやって話をするのも苦手だったんですけど、分からないことは自分で聞かないと成長できないので、集団生活の中で積極的にコミュニケーションを取るようになりました。

毎日やっていることで自信がついて、精神的に強くなったと思います。

 

―――――今お話していて、内気だったとは全然感じさせないですね。就職に向けて、卒業までにできるようになりたいことはありますか?

競走馬は若いし、個性もあったりして特に育成が難しいので、乗馬の技術と馬を扱える知識をしっかり身につけたいです。

馬は賢いので、人間の気持ちを察する。
こちらが緊張しているとそれが伝わって馬も硬くなってしまう。
逆に馬と心が通じ合ったと感じる時もあります。それが毎日できるようにしたいです。

 

(颯爽と馬を引く鳥海さん。かっこいい!)

あいさん、鳥海さん、二人に共通していたのは、夢に向かってまっすぐであるということ。
キラキラした目が、学校生活に対する充実感を物語っていました。

「好き」を極めるということは、こんなにも人を強くするのだなと感じさせます。
彼らと同じ年の頃、私は何がしたいかも分からずただなんとなく進学してしまった気がするので、若くして目標を見つけている二人に感心すると同時に、うらやましくもなりました。

さまざまな経験をし、視野を広げることは、人生の幸せな選択に繋がるのではないでしょうか。

 

引く手あまたの就職先

気になるのは実際の就職状況。
馬の学校で学んだ生徒たちは、具体的にどのような仕事に就いているのでしょう?

「競馬」や「乗馬」を中心に多種多様な産業があり、すそ野が広がっている馬事関連業界。
ですが、現在深刻な人手不足に直面しているのだそうです。

若い力が求められる中、馬に関する専門知識と技術が必要とされるため、実践的な経験を積んだ人材は貴重な存在。
そのため、ニーズは非常に高まっています。

アニベジでは、卒業生の技術力・即戦力が企業や牧場から高く評価され、なんと求人倍率は300%超え!
就職率は100%となっています(2002~2015年実績)。
JRAの三浦皇成さんもアニベジの卒業生です。

卒業生の主な進路
・育成牧場
・生産牧場
・乗馬クラブ
・テーマパーク
・馬関連会社
・きゅう務員
・ジョッキー
・専修課程編入・進学、競馬学校、装蹄学校進学
etc…

 

就職後のミスマッチを防ぐため、アニベジではインターンシップ制度を推奨しており、在学中に研修生として現場で実務を経験することができます。
そこで就職が決まるケースも多いそう。
手厚い就職支援があるのは心強いですね。

最後に、千葉県富里市にある「富里トレーニングファーム」(富里市根木名)で、走路を使った本格的なレッスンを見せてもらいました。

富里市は、古くから馬と深い関係がある街。
武士の時代に軍馬を確保するための牧場、「牧」がつくられ、現在では競走馬の生産地として知られています。

 

走路で迫力溢れる素晴らしい走りを見せてくれたのは5名の3年生です。

 

3年生ともなると、ここまで上達できるのですね!
間近で感じる馬の息遣い、疾走感…かっこよかったです。

聞けば、彼らも全員卒業後の進路は決まっているとのこと。

この通り表情も晴れやかです。

 

競馬場のきゅう務員になる人、競走馬の育成をする人、装蹄師を目指して更に学校で修業を積む人…春からそれぞれの道へ。

 

装蹄学校に進む3年生の塩見さん。装蹄師として一人前になるには約10年かかるそうで、まだまだ勉強の日々は続きます。

 

千葉県の馬専門学校アニベジ卒業生の就職先は競馬場の厩務員など多数あります

笑顔がまぶしい佐藤さんは、競馬場のきゅう務員に内定しました。

 

彼らに素敵な未来が待っていますように!
馬に青春をかけ、ひたむきに努力を重ねる若者たちに、心からのエールを送りたくなりました。

 

取材を通して馬に触れ、私自身も馬に癒されたような気がした一日。
言葉は通じなくとも、その優しい目が何か語りかけてくれているような、何とも言えない安心感がありました。

 

アニベジの生徒さんたちは皆、「馬が教えてくれる」という表現をしていましたが、彼らが頑張れるのは、馬が寄り添い、応えてくれるからなのかもしれません。

 

アニベジでは、馬を愛する人なら年齢性別問わず、随時学校見学・無料体験入学を受け付けています。

※募集要項はこちら

成田空港への送迎、東京都内・成田駅からはスクールバスの利用が可能です。
尞に宿泊することもできます。
興味がある方はお電話もしくはHPからお申込みを。

アニマルベジテイションカレッジHPバナー

オリンピッククラブ 馬の学校 アニベジ
アニマル・ベジテイション・カレッジ
学校事務局
住所/千葉県山武郡芝山町宝馬21-5
電話番号/0479-74-3717(受付時間9:00~17:00)
FAX/0479-77-1548(24時間受付)

※動物取扱業者としての表示
動物取扱業者の氏名 (株)ニューオリンピッククラブ 代表取締役 渡邉義男
事業所の名称 オリンピッククラブ
事業所の所在地 千葉県山武郡芝山町宝馬21-5
動物取扱業の種別登録番号  〈展示〉『07-山保 5-1』 〈販売〉『07-山保 1-16』 〈貸出〉『07- 山保 3-1』
登録年月日 平成24年5月21日
有効期限 平成34年5月20日
動物取扱責任者 伊藤和之

動物取扱業者の氏名 (株)ニューオリンピッククラブ 代表取締役 渡邉義男
事業所の名称 富里トレーニングファーム

事業所の所在地 千葉県富里市根木名813-2
動物取扱業の種別登録番号  〈保管〉『13- 印旛福 548-1』 〈訓練〉『13- 印旛福 549-1』 〈展示〉『13- 印旛福 550-1』
登録年月日 平成25年6月12日
有効期限 平成35年6月11日
動物取扱責任者 六沢 優