市川の魅力をSNSで発信する写真家 Shun Shiraiさん
2月5日、市川市のアイリンクタウン展望施設には、ダイヤモンド富士の瞬間をとらえようとカメラを抱えた人たちが集まっていました。
その中に、仕事を終えて駆け付けた人気の写真家Shun Shiraiさんの姿もありました。
公開 2020/03/09
編集部 R
「ちいき新聞」編集部所属の編集。人生の大部分は千葉県在住(時々関西)。おとなしく穏やかに見られがちだが、プロ野球シーズンは黄色、Bリーグ開催中は赤に身を包み、一年中何かしらと戦い続けている。
記事一覧へ市川にはインスタ映えする素材がいっぱい! その魅力を伝えたい思いが活動の原動力
四国・高松生まれのShun Shiraiさんは約35年前、市川に転居してきました(現在は松戸市在住)。
中学生のときから住み慣れたこの土地で、現在福祉関係の仕事に従事しています。
休日などを利用して撮影に出かけ、ほぼ毎日、作品をSNSにアップ。
動物や料理などを撮ることもありますが、メインで扱う題材は鮮やかな色彩で切り取られた市川の風景です。
Shunさんがいちかわの魅力新発見&再発見のアカウントでインスタグラムを開設したのは4年前。
たちまち大きな反響を呼び、フォロワーは月1,000人近いペースで増え続けました。
開始1年半で1万人に到達、現在は1.2万人を数えます。
インスタの他、ツイッターとフェイスブックでも更新を行っています。
▲市川愛あふれるShunさんのSNSのアイコンは、市川市動植物園のレッサーパンダ・ライチくん。寝起きで目を開きかけた瞬間をとらえたレアな1枚
現在、勤務時間以外は写真関係の活動で忙しいというShunさんですが、本格的に撮影にのめり込み始めたのは、意外にも「SNSを始めてから」だそうです。
約十年前に初めて一眼レフを購入し、少しずつ撮る機会が増えていきました。
撮影技術は見よう見まね、誰かに指導を受けたり教室に通ったりということもなく、ネットなどを利用しての独学。
失敗を繰り返し、いろいろな方法を試しながら上達していったとのこと。
特別な機材がなくても、一眼レフと無料で手に入る写真加工ソフトを駆使して、人の心に訴えかける現在の作風を築き上げました。
▲Shun Shiraiさん Photo by 三條康貴 #Suncame
―なぜSNSで市川の風景を発信するようになったのですか。
「ある冊子に自分の撮影した市川の写真が掲載されたのですが、かなり好評だったので、せっかくだから、もっと多くの人たちと市川の感動的な風景を共有したいと思ったのがきっかけです」
ちょうど「インスタ映え」といった言葉がはやり出した頃。
インスタグラムは多くの人に作品を見てもらうのに最適なツールでした。
「市川にもインスタ映えする風景がたくさんあります。それが知られていないのはもったいない、もっとアピールしたい、そんな気持ちで始めました」。
▲アイ・リンクタウン展望施設から2018/8/26撮影
Shunさんのコメント
当時、ニュースやSNSでも話題になり、『ラピュタ雲』とも呼ばれた巨大積乱雲。
この日たまたまアイ・リンクタウンで開催されたイベントの主催者が私のSNSのファンで、『イベントを見に来て』と誘われていたおかげで偶然撮れたミラクルな1枚。
巨大積乱雲と雷光の隣に暮れゆく青空~夕焼けのグラデーション、手前には雷雨とは対照的に平穏な夜を迎えようとする市川~東京の街と江戸川。
あの日あの場所に居合わせることができなければ、こんなドラマチックな形では絶対撮れていなかったので、本当にラッキーでした。
最も苦労した1枚はこれ。
▲真間川・八方橋から2019/4/10撮影
桜がほぼ満開の時季、薄暮の時間帯に強い雨が降っていたので「チャンス!」と思い、雨に濡れて震えながら撮影。
場所を変えながら30分以上撮り続けた中で、ストロボに照らされた雨粒と桜、暮れゆく空の色、アングルと全ての要素がそろった苦労の末の力作。
―市川の中でも撮影対象として特におすすめなのは…?
「たくさんありますが、何といっても江戸川の存在は大きいですね。
川幅もあって、川向こうに夕焼けや朝焼けが見えて…絵になりやすいです」。
▲新行徳橋のたもとから撮った夜明けの江戸川放水路と東西線
▲市川橋の向こうに落ちる夕日。右は京成線、左は総武線の鉄橋
浮世絵のような青にこだわり絵画のような表現で現実を映し出す
Shun Shiraiさんの風景写真を語る上で最も重要な色は「青」。
特に空の青。
「よく晴れた昼間の空の色も好きですが、グラデーションが鮮やかなマジックアワーの空は格別ですね。夕空を撮るときはブルーの部分をしっかり出すことにこだわっています」とのこと。
マジックアワーの濃い青は、浮世絵を想起させます。
Shunさんに影響を受けたアーティストを尋ねたとき、真っ先に名前が挙がったのが写真家ではなく「歌川広重」だったのも納得です。
「ジャパンブルー」「ヒロシゲブルー」などと呼ばれ、ヨーロッパの美術界に大きな影響をもたらした広重の深い藍色。
Shun さんにとっても特別に思い入れのある色です。
浮世絵は、ドラマチックな構図など写真に通じる要素も多く、Shunさんに刺激をもたらす存在となっているのです。
歌川広重以外に好きな作家は…と尋ねると、東山魁夷、笹倉鉄平…、やはり写真家ではなく画家の名前が並びました。
▲2019/7/8国府台緑地で撮影
「縦構図でまぶしい夏の太陽を入れているところが、私も大好きな東山魁夷画伯の名作『夏に入る』とは異なる点ではありますが…複数の方から東山魁夷の世界を思わせると言われました」
あらためて作品を見せていただくと、思わず「これ…写真ですよね?」と確認したくなるテイストのものもありました。
▲まるでポスターのような本八幡交差点
「ヒロ・ヤマガタやラッセンに似ていると言われることもあります」。
確かに、目に見える光景を写しているのに、どこか創作された世界のような味わいも。
「京都アニメーションの作品や、『君の名は』『天気の子』の新海誠監督作品の背景画のような雰囲気」というコメントをもらうことも最近増えているそうです。
これらの作品がファンタジーの中に現実世界のリアルな情景を取り入れているのに対し、Shunさんはまず、現実の風景の中にファンタジックな瞬間を見出し、構図や色味などを調整してそれをブラッシュアップすることで印象を強めているとのこと。
現実とファンタジーの融合を試みようとする点において、通じるものがあるのかもしれません。
「僕は実際に生きている現実の街の素晴らしさを表現したいと思っています。
刻一刻と移り変わっていく街の、今しか見られない表情を大事に残していきたい」。
そう言って、市庁舎改築作業中のクレーンが写りこんだ1枚を見せてくれました。
建設が終われば見られなくなる、今だけの光景です。
単純な見た目の美しさに加え「街らしさ」を感じる風景に惹かれるというShunさん。
今までもこれからも、撮りたいのは歴史や文化が息づいた街の情景です。
▲真間川・鬼高歩道橋から2019/8/13撮影
建て替え工事中の市川市役所本庁舎に設置された大型クレーン。「何だか巨大ロボットが手を振って合図しているようで可愛らしく見えました」
SNSからリアルなつながりが生まれ被写体にも変化が
SNSの反響は市川にとどまらず、国内はもちろん、海外からも反応があるそうです。
「TOKYOに来たついでに市川にも立ち寄ってみた」などという外国人フォロワーのコメントも。
忙しい中でもまめに更新を続けるモチベーションにつながっています。
しかし、やはり最も熱いのは地元市川の人たちの反応です。
SNSでのやり取りを通じて知り合いや仲間が増え、地元のイベントに呼ばれたり、市川を盛り上げる企画に参加したり、地域のコーディネーター的なサポートにも携わるようになりました。
それに伴い、SNSを始めた4年前には撮影しなかったような被写体も増えてきました。
イベント開催場所周辺の風景を中心に、より「街」をしっかり意識して撮るようになったのはその影響だといいます。
▲ニッケコルトンプラザでのフォトコーナー展示をきっかけに撮影したメディアパーク市川。
ハッとするような日没後の表情
▲夜霧の本八幡交差点。
2019年10月、初の個展の会場となったのが本八幡のサイゼリヤ1号店記念館でした
さて、場面を2月5日の市川アイ・リンクタウン展望施設に戻しましょう。
午後5時5分、夕日が富士山の頂上に落ち、見事なダイヤモンド富士が出現!
1枚、2枚、…設定を確かめながら最高の1枚にこだわってシャッターを切り続けます。
ダイヤモンド富士を撮りつくした後も日没後まで残り、大好きなマジックアワーを堪能しました。
▲これぞマジックアワー!
この後、「夜7時からTMO(第12期いちかわTMO講座=まちづくりリーダーの養成塾)を受講するので、そろそろ失礼します」と展望施設を後にしたShunさん。
「今日撮った写真は帰ってきてからアップします」と忙しい。
休む間もなく翌2月6日には、市内を移動して奉免町からのダイヤモンド富士を撮影。
その日のうちにSNSで公開されていました。
これからも自転車で市川の街中を巡りながら、新たな魅力を発見するたび、シェアしてくれるはず。
次はどんな市川を見せてくれるのでしょうか?
楽しみに待ちたいと思います。
▶ Shun Shiraiさん 今後の活動予定
オリジナルの市川絵はがき集の販売
※5月ごろから販売開始予定
「エドロック アートコンペ受賞者作品展」出展
※エドロックアートコンペ受賞作家7人によるグループ展。今夏開催予定
問い合わせ/shun.ichikawacity@gmail.com