「生シェイク」に俳優兄弟 館山の須藤牧場がユニーク!
館山市にある須藤牧場。約100年の歴史を持ち、「酪農教育ファーム活動」の一環として全国から小学生の校外学習の受け入れもしています。
そんな須藤牧場の若き跡継ぎが四代目の須藤健太さん。健太さんは、実兄の高伸さんと共に、酪農をテーマにした演劇を上演する劇団「須藤兄弟」としても活動しています。
一方で健太さんの姉の由紀乃さんは、須藤牧場自慢の牛乳を使ったソフトクリームなどの新メニューを開発。中でも2年前に登場した「生シェイク」が好評で、昨年夏には、館山市内を中心にしたイベントも開催しました。
そんな個性豊かな須藤三きょうだいを育んだ、須藤牧場の魅力を三男の健太さんにお聞きしました。
公開 2020/03/24
編集部 モティ
編集/ライター。千葉市生まれ、千葉市在住。甘い物とパンと漫画が大好き。土偶を愛でてます。私生活では5歳違いの姉妹育児に奮闘中。★Twitter★ https://twitter.com/NHeRl8rwLT1PRLB
記事一覧へミルクのおいしさをぜいたくに閉じ込めた「生シェイク」
健太さんが小さい頃から、ご両親が手掛ける須藤牧場の牛乳のおいしさには定評がありました。
「僕は子どものときから飲んでいますがほんとにおいしい!ホルスタイン種とジャージー種の乳をブレンドしているため、両方の良さがあるのが特徴ですね。さっぱりしているのに濃厚な味わいです。
父は、牛の餌を作る名人なんですよ。おいしいごはんを食べて健康な牛に育てることが、やはりおいしい牛乳を作ることにつながるんです」(健太さん)。
須藤牧場自慢の牛乳をふんだんに使った人気メニューが、ソフトクリームです。
材料は牛乳が80%以上と、一般的なソフトクリームと比べて割合が高いため、口あたりがなめらかで後味すっきり。
さらに甘過ぎないので、フルーツなど、他の食材とも合わせやすいそう。
そんなソフトクリームのおいしさに着目して、さらに進化させたのが「生シェイク」です。
生シェイクは須藤牧場のソフトクリームと牛乳、それに「何か」を混ぜて作るオリジナルスイーツ。
「何か」とは季節のフルーツや、抹茶やコーヒーなどのさまざまな食材。
ソフトクリームと同様に、健太さんのお姉さんである由紀乃さんが考案しました。
ここで食べられる!
気になる生シェイク、どこで食べられるのでしょうか?
通年楽しめるのは、2カ所です。
須藤牧場にある「COWBOY」では、シンプルな「ミルク味」のみを提供しています。
カフェでは、他にソフトクリームや牛乳など牧場ならではのメニューがそろっています。
牛乳はジョッキ提供もあり!
ちなみに、須藤牧場の牛乳が飲めるのはココだけとのことなので、お出かけの際はぜひご賞味ください♪
須藤牧場直営のお店がイオンタウン館山内にあり、こちらではさまざまな味わいの生シェイクを販売しています。
バナナやモカ、宇治抹茶やイチゴ、季節によってはトウモロコシやドラゴンフルーツの生シェイクが登場することも!
2019年夏に開催!生シェイク祭り
驚くほどいろいろな食材と相性がいい生シェイク。
2019年夏には「生シェイク祭り」と題して、館山市(一部東京都)にある16の飲食店が、それぞれでオリジナルの生シェイクを提供する、というイベントも実現させました。
参加した店舗は、カフェやレストラン、豆腐店までバラエティ豊かな顔ぶれ。
1店舗1店舗、健太さんがお店を尋ねて口説き、メニュー開発にも協力したそうです。
豆腐屋さんとコラボした「豆腐生シェイク」など、一見意外な食材でも合わせてみるとマッチするのだとか。
「豆腐生シェイクは試作の段階では、シンプルに豆腐を合わせただけだったんです。そのままでもおいしかったんですが、もうひと味ほしいね…と話していたところ、たまたまお店に来ていた近所の人に『豆腐なんだからしょうゆやみそを入れてみれば?』とアドバイスをもらって。まさかと思いつつもちょっと足してみたら、とってもおいしくなりました(笑)。
そんな風に1品1品、試行錯誤して作り上げるのも楽しかったですね」。
その他、バーではリキュールと合わせた大人向けの品が登場したり、養蜂園でははちみつとブレンドしたり、多彩な生シェイクが館山の夏を盛り上げました。
「そのお店の良さを、生シェイクとコラボすることで、広く知ってもらえるきっかけになったらいいなと思ってます」と語るように、健太さんがここまで情熱を注げるのは、生シェイクを通じて個人店を応援したいという強い思いから。
生シェイク祭りは2020年も開催予定。
今年は、参加店舗をグッと増やし、館山市だけでなく、南房総市、木更津市、東京や神奈川まで範囲が広がりそうとのこと。
「例えば『コーヒー味の生シェイク』をいくつかのお店が提供するかもしれませんが、そこに現れる味の違いこそ楽しんでもらいたいです。同じコーヒーでも豆や淹れ方、アレンジによって各店で特徴が出るはず。すごくワクワクしますよね」と締めくくってくださいました!
館山で生まれ、これから世界へ広がっていきそうな生シェイク。要チェックです!
詳細はHPをどうぞ~。
健太さんのもう一つの顔「劇団・須藤兄弟」とは
牧場経営の傍ら、実兄の高伸さんと共に劇団「須藤兄弟」を立ち上げ、出演はもちろん、脚本・演出を手掛ける健太さん。
毎年5月の大型連休に牧場内の屋外ステージで行われる舞台公演は、毎回満席。遠方から演劇好きが見に来るほどの評判を呼んでいます。
実は健太さん、小5のときから牧場を継ぐことを決めていました。
当時から須藤牧場には、酪農教育ファーム活動で多くの小学生が見学・体験に訪れていました。
その都度、子どもたちに牛や牧場の仕事について生き生きと説明する両親の姿を見て、「この場所をなくすわけにはいかない」という気持ちが芽生えたそうです。
その一方で小さい頃から、劇やお芝居に興味があり、高校在学中には俳優の養成スクールにも通っていたことも。
高校を卒業すると、酪農修業のために北海道へ。
「実は北海道って、アマチュア演劇がさかんな土地なんです。
北海道大学の演劇サークルは地域に開かれていて、僕も遊びに行かせてもらいました。
札幌市内には、東京の下北沢ばりに小劇場がたくさんあって、見るのはもちろん実際に舞台で演じる機会もありました」。
酪農と演劇。北海道でたくさんの刺激を受けて、須藤牧場に戻ってきたのは2011年。
牧場の仕事に専念する毎日でしたが、やがて行き詰まりを感じてしまったそうです。
「牛への情熱はもちろんあったのですが、それだけだと僕の場合はダメだったんです。だから、好きなことも並行してやろうと思い、劇団を立ち上げることにしました」。
東京で俳優活動をしている兄の高伸さんに相談し、牧場ならではの「酪農」をテーマにした劇を上演することに。
初演は2014年。隕石の衝突から酪農家が地球を守るという、ちょっと奇抜なストーリーでした。
「牧場で演劇、というのは世間的に前代未聞だし、僕らにとっても観客にとっても初めての経験。だからこそ、分かりやすさやキャッチーさに重きを置いて、脚本を書きました」。
例えば、「隕石が地球に衝突する」はシンプルに危険性が伝わる題材。
劇中にはバター作り体験を盛り込み、観客参加型にしました。
結果、100人以上が来場し大成功をおさめます。
各方面のメディアにも取り上げられ、劇団「須藤兄弟」は一躍知名度を上げました。
健太さんがシナリオを作るうえで大切にしているのは、牛や酪農を知らない人でも楽しめる内容にすること。
初演の劇であれば、隕石を回避するために牛の栄養素が大きなファクターとなっています。
楽しく観劇して、いつの間にか牛や酪農への知識が身に付いている。見た人が少しでも酪農に関心を持ってくれたら…と思いを込めています。
ちなみに、この劇は現在でも体験メニュー「酪農劇団による牧場劇と牧場案内セット」内で上演しています。
▶ 酪農劇団による牧場劇と牧場案内セット
所要時間/3時間
30名から120名まで
1人 2,160円(税込み)
その他、体験メニューはこちら
第1回の上演では、須藤兄弟と牛一頭のみの出演でしたが、回を重ねるごとに演者も増え、地元館山や東京に一緒に芝居を作る仲間が増えました。
小学生から社会人まで、幅広い世代が参加しています。
取材に伺った2月現在は、2020年5月公演に向けて稽古の真っ最中。
拠点が離れた団員たちは、なんとLINEを使って稽古しているそうです。さまざまな立場の人がかかわるからこそ、新たな発見や驚きがあり、稽古が一番楽しい!と健太さんは話していました。
2020年の公演は「喋る牛」と題した3話オムニバス劇。
初の試みとして、観客が見た後に料金を決める「フリープライス」を実験的に採用しました。
「自分たちの劇をお客さまに金額で評価いただく。少し怖いですが、楽しみでもあります」と健太さん。
今後は地元を飛び出して日本各地での公演を計画中。さらなる大舞台へ羽ばたく須藤兄弟に注目です!