江戸から明治初期にかけて交通の要所だった船橋市本町界隈。

かつては宿場としてにぎわっていましたが、明治27年の鉄道開通で商店街へと変貌しました。

現在ビル群の中にありながら、明治・大正の建築当時の姿が感じられる3店を紹介します。

船橋市本町付近の地図

公開 2020/03/03(最終更新 2024/01/10)

ショー

ショー

市川・船橋担当。主に市内の歴史、民話、建造物、イベント等の情報発信。個人的には1980年代より、東京・昭和初期の面影を撮影中。1989年銀座ニコンサロンで個展「都市観察―木造3階建てのまわりでは」、2010年オリンパスギャラリーで「トーキョー・人模様」

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船橋本町通りの歴史:中央図書館に写真展示あり

昭和30年代には宿場の名残がある商家が約200軒近く存在していましたが、その後多くの商店が耐火構造のビルになりました。

昭和30年代撮影の商家の写真76枚が船橋市中央図書館の3階展示コーナーに展示されています。

本町通りにある「明治天皇行在所跡」の石碑、案内板は、明治天皇が大和田原の近衛兵演習を統監した際、この地にあった桜屋という旅館に立ち寄ったことを示しています。

県内で最も多く訪れた場所だということです。

(掲載記事の一部は平成13年船橋市発行の「船橋市史」を参考にしています)

船橋の本町通り
【船橋市の景観に対する取り組み】市では景観計画を平成22年に施行。景観法に基づいて景観上重要な建造物を指定し、良好な景観の形成に活かしています。

紹介する3店はいずれも江戸時代創業、店舗は明治~大正期の建築物です。

(1)つるや伊藤:手ぬぐいから舞台設備まで扱う船橋の老舗

つるや伊藤
住所/船橋市本町4-31-25

安政元年に創業し166年。

現在の建物は江戸時代建築の平屋を大正期に2階を増築したもの。

江戸時代の染めの技法「注染本染め」を今に伝えています。

印染めを主として手拭い、祭り用品、山車幕、校旗、緞帳などを制作しており、ふなばしアンデルセン公園の手拭いが人気です。

祭礼で使う100~200年前の「のぼり」「山車の飾り幕」の復元新調も手掛けています。

つるや伊藤の商品
注染本染めの江戸小紋、 柄物の手拭い。中央下は「ふなばしアンデルセン公園・花と緑の手拭い」

(2)森田呉服店:船橋本町通りにある明治5年建築の老舗

森田呉服店
住所/船橋市本町4-35-14

江戸時代末期、本町通りに面した場所で、本家から分家して創業しました。

今の建物は明治5年建築、外観も店内も明治の2階建て商家の様式が感じられます。

戦前はきもの全般を販売。

戦後、本町通りは大神宮参拝者でにぎわい、店は夜遅くまで営業していました。

現在は浴衣、手拭い、和装小物、バッグなどを販売していて、若い来店客も増えています。

森田呉服店の店内
森田呉服店の店内

(3)廣瀬直船堂:船橋市の景観重要建造物に指定されている老舗和菓子店

廣瀬直船堂
住所/船橋市本町3-6-1

安政年間創業の和菓子店で、現在の店舗は大正7年建築の2階建て出し桁造り。

船橋市の「景観重要建造物」に指定されています(平成28年)。

江戸時代は「成田街道名所せんべい」が人気商品で、成田詣での旅人がよく立ち寄ったとのこと。

大正から昭和にかけては「真中まんじゅう」を売り出し、名物の土産としても買い求められました。

廣瀬直船堂の店内
廣瀬直船堂店内。奥の店看板は明治期に使われていました

割烹玉川:かつて湊町にあった老舗旅館

割烹玉川
住所/船橋市湊町2-6-25

隣の湊町には、太宰治も執筆に使ったという有名な老舗旅館「割烹玉川」がありました。※2020年春閉館

玉川は惜しまれつつ約100年の歴史に幕を閉じましたが、本町通りに残る老舗に時代の雰囲気を感じながら、のんびり散策してみてはいかがでしょう。