卓球台のトップメーカー「三英」で聞いた、アスリートを支える卓球台の話
多くの選手が世界で活躍し、2018年には卓球リーグ、Tリーグが開幕するなど、華やかな卓球界。
大舞台で選手に存分に力を発揮してもらうため、高品質な卓球台を作り続けている株式会社三英(千葉県流山市)で話を聞きました。
※取材日/2019年11月22日
公開 2020/01/07(最終更新 2021/07/24)
卓球台といえばこのロゴ!高品質な三英の卓球台
千葉県流山市に本社を構える株式会社三英は、卓球台や公園遊具を製造している会社。
特に卓球台は国内シェア75%を占めるトップメーカーです。
卓球台の製造拠点は北海道足寄町の工場。
年間製造台数は約1万4千台で、1台の製造期間は2週間~1カ月ほどだそう。
北海道足寄町にある工場で製造
国際大会、世界選手権、全日本卓球選手権、Tリーグなど、国内外の大会で公式卓球台に採用されています。
また、学校や公民館などにある卓球台も多くは三英の製品。
アスリートにとっても、一般の人にとっても意外と身近な存在です。
このロゴ、見たことあるという人も多いのでは?!
三英の前身は1940年に開業した松田材木店。
材木提供や加工の依頼を受けていく中で技術や知識を培い、1957年に卓球台専用工場を設立しました。
技術を磨き、何層にも重ねられた「スーパープライコア天板」を開発。
スーパープライコア天板の断面
「木でできている卓球台はどうしても反ってしまう。いかに『反らないようにするか』が重要なんです」と話すのは、経営企画室の泉澤典栄(のりひで)さん。
木が反ってしまうと球の弾み方が変わり、勝敗に影響が出てしまいます。
選手の力を用具が妨げてしまうのは絶対に避けたいこと。
「スーパープライコア天板」は薄い板の木目を交互にして重ねることで、反りにくい天板を実現しました。
経営企画室の泉澤さん
しかし、「反らないこと」はあくまで前提条件。
大会で公式台になるには、細かい国際基準に基づいて製造しなければなりません。
例えば、基準の一つが球の弾み方。
規定の高さから球を落とした時の弾む高さの規定値が決まっているので、天板はその規定値に合うように製造します。
製造後は検査を受けますが、検査をする場所は卓球台の片面でなんと19カ所!
卓球台のサイズは、高さ760mm、長さ2740mm、幅1525mm。
どの場所に打ち込んでも安定した弾み方をするのは厳しい基準をクリアする技術があるからこそ。
高品質の卓球台は、選手の力を引き出すと同時に信頼も得ているのです。
すごい!
卓球の歴史を変えた?! 天板の色変更と「ショーコートテーブル」導入
天板の色は日本では青が主流になっています。
かつては黒板のような深い緑色が一般的で、卓球は「暗い」「地味」というイメージがつきまとっていました。
そのイメージを払しょくさせようと、三英が天板色を青に変更したのが1991年のこと。
華やかな青い卓球台は、卓球を徐々に明るいイメージとし、その後、世界のスタンダードカラーへと変化させていきました。
一方ヨーロッパでは緑色の天板が現役。
そこで、海外の選手も戦いやすいようにと三英が開発した新たな色が、青と緑の中間色「レジュブルー」。
フランス語で「青い瞳」という意味だそう。
レジュブルーは、2016年から三英のメインカラーとなっています。
卓球台の色も変化し続けているんですね。
「レジュブルー」の卓球台
そして、変化は卓球台の「脚」にも表れているのを知っていますか?
2001年に登場したのが「ショーコートテーブル」というもの。
こちらも三英が開発した卓球台です。
脚部にデザインを施し、「魅せる卓球」を意識したものに。
決勝の大舞台でセンターコートに置かれた特別感のあるショーコートテーブルは、「ここで戦いたい」と選手の気持ちを鼓舞することでしょう。
ショーコートテーブルのデザインは大会によってさまざま。
脚部にモニターテレビをはめ込んだユニークなものがあったり。
モニター付きのショーコートテーブルは2009年世界卓球選手権大会で
ネーミングに地球を意味する「THE EARTH」は神秘的!
「THE EARTH」は脚部にライトが!
SAN-EI infinity(インフィニティー)は、日本の匠の技術が生きた曲線が印象的なデザイン。
木製の脚部は芸術品とまで言われるほどの出来栄えでした。
「SAN-EI infinity」。1台130万円!
そして、2019年11月には新しいショーコートテーブルも発表されました。
「MOTIF(モティーフ)」
Table Tennis・卓球の「T」を象徴としたデザイン。
細部にわたり、日本の技術の粋がつまったショーコートテーブルです。
トップレベルの卓球大会の決勝では、卓球台の脚部にも注目です!
製造だけじゃない。“世界の三英”の役割
世界クラスの大会や日本選手権などで使用される卓球台は約60台。
海外での大会の場合、日本から開催地まで船便で運ぶのですが、卓球台が温度・湿度で反ってしまわないように、温度管理されたコンテナで運ぶそうです。
「輸送の温度管理は失敗から学びました」と泉澤さん。
過去には、国際大会への輸送の段階で卓球台が反ってしまうというハプニングがあったそう。
メンテナンスで事なきを得ましたが、この経験がその後に生きているといいます。
また、大会では台の移動・セッティング、メンテナンスのため三英のスタッフが待機。
台の提供だけではなく、現場のサポートもこなしているとは!
この他にもアフリカに卓球台を寄付するなど、三英は卓球普及の一助を担っています。