千葉ミラクルズSCの皆さんに聞いたパラ水泳の魅力
健常者の水泳とのルールの違いは?

千葉県唯一のパラ水泳クラブ「千葉ミラクルズSC」。

チームの練習拠点となっている習志野市の千葉県国際総合水泳場を訪ねると、

そこには障害も健常も関係なく、純粋に水泳を楽しむ選手たちの笑顔がありました。

千葉ミラクルズSCの皆さん千葉ミラクルズSCの皆さん

千葉県初の身体障害者水泳チーム。2008年結成。昨年11月の日本パラ水泳選手権大会2位。秦由加子選手をはじめ有力選手を多数輩出。

<目次>

日本のパラ水泳をリードする強豪チーム 目標は打倒神戸!

パラ水泳では「クラス分け」が重要! 公平に戦うための仕組み

パラ水泳の魅力とは? 千葉ミラクルズSCのメンバーに聞きました

パラ水泳のこれからの課題とは?

日本のパラ水泳をリードする強豪チーム
目標は打倒神戸!

千葉ミラクルズSCの結成は2008年。

この年、関東身体障害者水泳大会が千葉県で開催されることになっていましたが、当の千葉県には身体障害者の水泳チームがありませんでした。

その時は都内のチームで泳いでいたという代表の上田孝司さん。

たまたまそのチームの会長が関東身体障害者水泳連盟の会長でもあったため、「千葉にもチームを作った方がいい。

君が先頭切ってやりなさい」と発破をかけられ、千葉ミラクルズSCが誕生することになりました。

千葉ミラクルズSC代表の上田卓司さんダイエット目的で24歳から水泳を始めた上田さん。
アトランタやシドニー大会開催時は、パラリンピック代表候補になったことも

 

6人でスタートしたチームはその後メンバーを増やし、最近はずっと20人ぐらいで活動しています。

パラ水泳チームとしての実力は国内トップクラス。

昨年11月に行われた第36回日本パラ選手権でも神戸楽泳会(兵庫県)に次ぐ2位の成績を収めました。

ちなみにこの神戸楽泳会に優勝を阻まれることが多く、国内最大のライバルだそうです。

2008年に取材させていただいたときは、「将来パラリンピック選手を輩出するのが夢」と話していただきましたが、その夢は現実のものとなり、チームからは多くの有力選手が誕生。

リオパラリンピックのトライアスロン6位入賞の秦由加子選手をはじめ、競泳では東京2020大会に向けて活躍が期待される森下友紀選手、窪田幸太選手、荻原虎太郎選手らも千葉ミラクルズSCの出身です。

 

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パラ水泳では「クラス分け」が重要!
公平に戦うための仕組み

泳ぐ前準備運動をする千葉ミラクルズSCの皆さん 
月2回ほど行われる千葉県国際総合水泳場でのチーム練習。あとは各自で自主的にプールに通って練習に取り組んでいます

 

一口に障害と言っても、下肢に麻痺がある人、目が見えない人など、状況はさまざま。

また、同じ障害であってもその重さによって、運動能力は違ってきます。

その中で競技を成立させるため、パラ水泳には健常者の水泳にはない、独特のルールがあります。

基本となるのが選手の状態に応じたクラス分け。

クラスは「泳法」と「障害の種類・程度」の組み合わせで表記され、例えば「SB7」は「肢体不自由(クラス7)の平泳ぎ」を表しています。

 

パラ水泳のクラス分け

競技の公平性を保つため、レースは同じクラスの選手の中で行われます。

どのクラスに入るかで勝負が大きく左右されるため、判定のための審査はかなり重要。

大きい大会の前には必ずクラス分けのための審査をし、陸上での動きや水中での推進力、可動域などをチェックします。

大会中はクラス判定の委員がレースをチェックし、「クラス分けが適切かどうか」目を光らせるのだとか。

クラスが一つずれるだけで獲得できるメダルの数や色が違ってくるので、真剣です。

視覚障害者に壁を知らせるタッピング選手と介助者が息を合わせ、きれいなターンでタイムを縮める

 

パラ水泳では必要に応じてさまざまな介助が認められています。

スタート地点まで選手を車いすで運んだり、ゴール後引き上げたりする「サイド補助」。

競技直前のスタートを助ける「スタート補助」では、飛び込み動作をサポートしたりします。

視覚障害の選手に前方の壁の存在を知らせるのが「タッピング」。

あと2、3かきで壁に到達、というタイミングで頭に棒でタッチし、激突を防ぎます(上の写真)。

タッピング棒先端にビート板、胴体部分は釣りざおをリサイクルした手作りのタッピング棒

 

このようにルールなどに違う点はありますが、練習方法もかなり違うのでしょうか?

伊藤コーチに聞くと、「パラ水泳ならではといった独自の練習はありません。

使える箇所を動かし、持っている能力を生かして速くなる部分を強化する。

選手と一緒に考えて、相談しながら、その人なりの泳ぎを作っていく」そうです。

伊藤コーチの指導「手はこういうふうに。アイーンの感じで」身振り手振りで教える伊藤コーチ

 

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パラ水泳の魅力とは?
千葉ミラクルズSCのメンバーに聞きました

佐久間勇人さん(44歳) クラスS8

「『1リットルの涙』の主人公と同じ病気なんです」と屈託なく教えてくれた佐久間さん。

伝達神経系が徐々に破壊されていく遺伝性の難病で、患者会(全国SCD・MSA友の会)の副会長も務めているそうです。

千葉ミラクルズSCには5年ほど前に入会。

「手や足のない子が泳いでいる姿に涙が出て…。そこで思ったんです。悲劇の主人公をきどるのはやめようって」。

年々進行する病状に不安になることもありますが「仲間がいて助けてくれる。それに泳ぐのが楽しいから」とチーム練習がない土日も自主練に励んでいます。

千葉ミラクルズSCの佐久間さん
同じ病気だった母親も笑顔を絶やさない方だっだそうで「笑顔も遺伝です」

 

奥山あずささん(25歳) クラス S7

 リハビリ目的で3歳から水泳を始めたというあずささん。

陸上で転ぶと骨折しやすいことから、安心して体を動かせる水泳を選んだそうです。

千葉ミラクルズSCのメンバーになったのは中学生の時。

「最初は自由型しかできなかったけど、今ではバタフライもできるようになりました」。

得意のバタフライでは2018年に金、19年には銀メダルを獲得!

リレーにも出場、チームメイトを応援したり応援されたり、その一体感がたまらなく心地よかったそうです。

現在は千葉県内で働きながら、時々チームの練習会に参加。

傍らに付き添う母親の薫さんは、千葉ミラクルズSCのボランティアも務めています。

※チームではボランティア参加希望大歓迎とのこと。
関心のある人はこちらへお問い合わせを。

千葉ミラクルズSCの奥山さん
「これまでミラクルズで一緒にやってきた仲間や大会で知り合った選手が、今年のパラリンピックで活躍するのが楽しみ」と話してくれたあずささん

 

水越ほの香さん(高校2年) クラスS8

チーム最年少の水越ほの香さんは、千葉県立古和釜高校に通う現役の女子高生。

右半身にまひがあり、水泳を始めたのは小学校1年生から。

中学校の特別支援学校の先生の勧めで2年前に入会しました。

泳法は自由形で、現在50mのタイムは1分10秒ぐらい。

「1分を切るのが目標です」。

伊藤コーチの練習メニュー(なかなかハードだそうです)に従って、1回3000mを休みなく泳いでいました。

深いプールが苦手でこれまで参加していなかったリレーも、昨年デビュー。

「チームに迷惑を掛けたらいけないので(リレーは)緊張します」と言いつつ、「ミラクルズの皆さんは明るくて話しやすい。楽しいチームです」

ほのかさんをやさしく見守る新谷さん
インタビュー中、「ちゃんと答えられる?通訳してあげようか?(笑)」と冗談交じりに温かく見守る副代表の新谷さん(左)

千葉ミラクルズSCの水越ほの香さん
「好きなアイドルはHey! Say! JUMPです」とはにかむ笑顔がかわいいほの香さん

 

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パラ水泳のこれからの課題とは?

今年のパラリンピック開催で、今まで以上にパラ水泳にも注目が高まっていますが、まだ課題もあるそうです。

「日本にはスポンサーが少ないから、パラ水泳で食べていくことができないし、何より充実した練習ができる環境がないんです」。

障害者が気軽に練習できるバリアフリーの水泳場が、まだ少ないのが実情とのこと。

練習場確保などで苦労が絶えないそうですが、それでも大会でチームがメダルを獲ったときなどは「やっててよかった」と喜びがこみ上げてくるそうです。

パラ水泳は年齢に関係なく、長く楽しめるのも魅力。

「泳いだ後はご飯もおいしいしね(笑)」

次の大会での好成績を目標に、モチベーション高く、明るく練習に励む皆さんでした。

 

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この記事を書いた人

編集部 R

編集部 R

「ちいき新聞」編集部所属の編集。人生の大部分は千葉県在住(時々関西)。おとなしく穏やかに見られがちだが、プロ野球シーズンは黄色、Bリーグ開催中は赤に身を包み、一年中何かしらと戦い続けている。

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