【千葉都市モノレール】車両基地でモノレールの秘密を発見!

「千葉駅って意外に栄えてるよね」。

都内で働いている頃のこと。千葉出身だと話すとよくこう言われました。

駅前の近未来感がすごい、と。

とにかく宙づりで走る千葉都市モノレールが、初めて見る人に大きなインパクトを与えるようです。

千葉都市モノレール
(画像提供:千葉都市モノレール)

千葉市民にとって身近な存在であり、県外の人に自慢したくなる千葉都市モノレール。

ですが、動く仕組みやメンテナンス方法など、案外知らないことも多い…。

今回なんと特別に、「ちいき新聞」(※)読者のみなさんと一緒に、普段は見られない車両基地の見学をさせてもらえることになりました。

開業から今日まで、安全に快適に走行してきた千葉都市モノレールの秘密が明らかに!


<目次>

・実は地下鉄案もあった! 千葉都市モノレールの歴史

・宙づりのモノレール、洗われる姿はこんな風

・車両工場(車両検査修繕庫)は5階建て!

・おまけ・オリジナルドロップがおいしい

※ちいき新聞とは…千葉県北西部を中心に埼玉県・茨城県の一部エリアへ地域密着の生活情報を発信する(株)地域新聞社発行のフリーペーパーです。

公開 2020/01/28

編集部 モティ

編集部 モティ

編集/ライター。千葉市生まれ、千葉市在住。甘い物とパンと漫画が大好き。土偶を愛でてます。私生活では5歳違いの姉妹育児に奮闘中。★Twitter★ https://twitter.com/NHeRl8rwLT1PRLB

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実は地下鉄案もあった!千葉都市モノレールの歴史

今回、案内してくれたのは広報担当の経営企画課林さん。

千葉都市モノレールの広報担当者
▲雄弁で親しみやすいお人柄。運転士の経験もアリ!

 

千葉駅から千城台駅、千葉みなと駅から県庁前駅をそれぞれ結ぶ千葉都市モノレール。

総走行距離は15.2キロと、懸垂型モノレールとしては世界一の長さを誇ります。

1988年の開業から昭和、平成、令和と走り抜け、2019年で開業31年を迎えました。

【千葉都市モノレールの歴史】

1960年代、人口や交通量の増加に伴い、朝夕の慢性的な交通渋滞が問題に。

そこで1979年に千葉市や千葉県が出資し、第三セクターによる鉄道会社が設立。

地下鉄を含むさまざまなプランを検討した結果、1982年に道路の上の空間を利用する新たな交通手段・懸垂型モノレールが採用されました。

 

「懸垂型」とは、レールから列車がぶら下がっているタイプのモノレールのこと。

計画は約40年前からスタートしていたんですね。

 

ちなみに、千葉都市モノレールのいくつかの駅は無人駅。

これらの駅ではモニターを通じて、遠隔でサービスを行っているそうです。

いわれてみれば、確かに駅員さんの姿を見かけた記憶があまりありません~!

 

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宙づりのモノレール洗われる姿はこんな風

モノレールの車体は、ピカピカの状態をキープするために定期的に洗車が行われています。

「ホームに面しているサイドだけでなく、走行中は車体の底が下から丸見え。黒く汚れていると『腹黒』っていわれちゃうんです」と冗談交じりに話す林さん。

 

そう、普段は線路にぶら下がっているモノレール。どうやって洗うんでしょうか…?

実は、この車両基地内に専用の洗車機が置いてあるんです。

 

それがこちら。

千葉都市モノレールの洗車機

底までしっかり洗えるよう3方向にブラシが付いているのが、懸垂型モノレールの洗車機の特徴です。

 

ブラシに向かってモノレールが走って行きます。

大量の水しぶきが上がり迫力満点!!

千葉都市モノレールの洗車機

今洗った車両は10日以内にまた洗浄。

現在千葉都市モノレールが所有している車両は、16編成(※2両で1編成)。

洗車タイムは1日2回なので、これらを交代で洗っています。

 

ここでは「分岐ポイント」も見学できました!

 

普段は高い高い場所にある「分岐ポイント」。

こんなに近くで動くところを見られる機会もそうそうありません。

 

写真では分かりづらいですが、矢印部分が「分岐ポイント」です。

千葉都市モノレールの分岐ポイント

作動させると「ゴゴーッ」という大きな音が鳴り、分岐ポイントが左から右に移動します。

動いた部分の重さは5.5トン。

 

人の力で動かすことはできないので、モーターで起動させています。

ただし停電の時は、線路の上部にハンドルを指し、手動で動かさなければいけません…。

 

「とっても重いので、一生懸命ハンドルを回しても、悲しいくらいに少ししか動かないんです。それでも、もしもの時にはやらねばならないので、3カ月に一度の割合でレールの上に上って訓練しています」(林さん)。

 

雨の日も、猛暑の日も線路の上に乗って訓練しているというお話に、頭が下がりました!

線路のメンテナンスはどうしてる?

モノレールの線路の中は、軌道作業車によってメンテナンスされています。

写真奥に見えるオレンジの車がそれ。

千葉都市モノレールのメンテナンス見学

通常の車両が走っていない、終電から始発の間に点検を実施。

線路の中には、モノレールを動かすための送電線があり、高圧の電流が流れています。

とっても危険なので、通電を止めてから点検を行います。

 

なので軌道作業車の動力は自前のバッテリーから。

千葉都市モノレールのバッテリー

右へと延びる黒い線はコード。使っていないときはこうやって充電しています~。

 

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車両工場(車両検査修繕庫)は5階建て!

車両基地内にある車両工場(車両検査修繕庫)。

工場といってもイチから車体を作るわけではなく、車両の点検や修理・修繕を行う場所です。

 

懸垂型モノレールのボディを検査するのに真横から見ないといけません。そのため、5階建てと大きな建物になっています!

千葉都市モノレール
▲車両工場から発車するモノレール

 

1階は搬入フロア、2階は車体を持ち上げるジャッキ装置や新品タイヤをストックするフロア。3階は車体を点検、4階はタイヤ交換や台車を点検するフロア。そして5階は、4年に一度の車検の分解整備を行うフロア。

こうやって多層階からモノレールを整備・点検しているんですね。

モノレールの車体、注文から納品までの期間は…

1階は新しいモノレールを搬入する「搬入庫」のような役割を担っています。

千葉都市モノレールの搬入庫

5階までの吹き抜け部分は、ちょうどモノレール一両分の大きさ。

 

モノレールの車体は、注文してから組み立てられます。

納品までの期間はどのくらいかというと…

 

 

約2年半もかかるそう!

 

 

そのため千葉都市モノレールでは、古い車体を引退させて新しい車体を入れる…ということを長期的な計画で実施しています。

完成した車両は広島のメーカー工場からトラックに積まれ、夜間のみ、しかも下道を走って3日をかけて千葉都市モノレールの車両工場に到着します。

モノレールは大きく3つに分かれている

モノレールは、実際にお客さんが乗る車体部分、タイヤやモーターなどの台車部分、この2つをつなぐ「懸垂リンク」の3つに分かれて納品されます。

3つをつなげて「懸垂型モノレール」にするのも1階の搬入庫で行われます。

千葉都市モノレールの車両は2タイプあり

現在走行している千葉都市モノレールは、開業からずっと使っている「1000形」と2012年から走り出した「ゼロ形(アーバンフライヤー)」の2種類。

千葉都市モノレール1000型
1000形

 

千葉都市モノレールのゼロ型
0形 (写真提供:千葉都市モノレール)

 

合わせて16編成を保有しています。

 

こっそり価格も教えてもらいました…。

 

1000形は1編成なんと3億円

 

0形は1編成もっとオドロキの6億円!

 

モノレールの車両は、オーダー制。

大量生産しているわけでもなく、千葉都市モノレールで新車を購入するのは数年に一度。

加えて地上を走る電車の部品をそのまま使えることはなく、専用のものが多いとのこと。

これらの理由から、どうしても高額になってしまうのです。

金額が大きすぎて捉えようがありませんが、6億円というと、N700-S東海道新幹線の先頭車2両とほぼ同じ価格なのだそうですよ!

線路に隠れた台車の姿

こちらが懸垂型モノレールの台車。普段は線路の中に隠れて見えない部分です。

千葉都市モノレールの整備

赤い四角で囲んだ部分が、本来線路がある場所と考えてみてください!

 

頭上の送電線には直流1500ボルトと高圧の電流が流れていますが、見学時には切ってあるのでパトランプも消えています(ホッ!)。

 

台車は1両につき2つ、1編成につき4つあります。

天井部分にはパンタグラフがありますが、地上を走る電車のパンタグラフと比べてとってもコンパクト!

箱型の線路内に収める必要があるのでミニサイズなんですって。

 

マイナス用のパンタグラフは二号車に、プラス用は一号車にあります。

なぜ分かれているのかというと、狭いスペースの中でうまく役割分担をさせるため。

 

二号車(マイナス)は、おもにエアコンなどのサービス機器。一号車(プラス)はモーターを回してスピード調整をする機器や高圧の機器が乗っています。

林さんの言葉を借りると、このペアリングはとっても「いちず」。

別の車両と交換することはないそう。

生まれたときから、引退するまでの約30年間、仲睦まじい夫婦のごとく添い遂げます!

安全性は十分な「命綱」

林さんが手に持つのは懸垂リンクの模型(手作り)。

千葉市モノレール整備する男性

これで台車と車体をピンでつないでいます。

万が一、ピンが割れたり外れたりしたらどうなるのでしょう…?

 

安心してください。

 

このワイヤーがあります。

千葉市モノレールのワイヤー

この太く頼もしいワイヤーが、もしものときに命綱となります。

どのくらい頼もしいのかというと、定員の78人が乗ったとして、車体の総重量は21トン。

対して、ワイヤーの最耐荷重は90トンと、4倍近い安全を確保しているんです。

 

そんな「落ちない」ワイヤーを使った、合格祈願の「落ちないお守り(400円)」も、千葉みなと、千葉、都賀、千城台の各駅窓口で販売中。

「このお守りは、30年近く安全を守ってきた引退車のワイヤー(縁起物)を使用しています!」と林さんもイチオシです!!

 

走行タイヤには「あれ」がない

台車についている大きいタイヤが駆動タイヤである走行タイヤ。

実は、自動車のタイヤには必ずある、水はけのパターンが付いていません。

理由は箱型の線路の中を走るタイヤなので、基本的に雨に濡れることがないため。

だから、自動車のようなロードノイズ(騒音)が少ないそうですよ。

 

でも実物を見てみると、縦に溝が入っています。

千葉都市モノレールのタイヤ

これは「スリップサイン」。タイヤのすり減り具合をチェックするためのものなんです。

 

タイヤ1本の寿命は、総走行距離にして約25万キロ。

モノレール1編成で、1カ月あたり約7000キロ走るので、3年弱は持つという計算になります。

それでも、モノレールの車検は4年に一度あるので、それまで使い続けるということはできません。

 

車検までに必ずタイヤ交換が必要になるので、4階でその作業を行っているのです。

スリップサイン8か所のうち、1カ所でもすり減りを確認したら交換しています。

 

2階ではその他、モノレールの車体を下から点検。

すぐ近くで見るモノレールの「おなか」部分にみんな興味津々でした!

千葉都市モノレールのおなか

 

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おまけ・オリジナルドロップは「なし味」「さつまいも味」でおいしい

千葉都市モノレールでは、さまざまなグッズも展開しています。

 

マスコットキャラクターのモノちゃんのことは、ラッピング車などで目にしたことがある人も多いはず!

地域新聞社のちいきくんと千葉都市モノレールのマスコットキャラクターモノちゃん

動く姿もキュートなんです。

弊社のキャラクター「ちいきくん」(左)とも写真の通りすっかり仲良しに♪

 

そんなモノちゃんのぬいぐるみはもちろん、車両をモチーフしたミニカーやライト、先ほどご紹介した「落ちないお守り」まで、多種多様な楽しいグッズがいっぱいです。

千葉都市モノレールのグッズ販売

 

そんな中、試食させてもらったこちらのサクマドロップとのコラボ品。

 

千葉都市モノレールとサクマドロップのコラボ品

 

パッケージには、千葉都市モノレールの制服を着たキャラクター「鉄道むすめ・葭川となみ」が描かれています。萌え!

 

「梨味」&「さつまいも味」となかなか攻めたラインナップ。

ですが、なかなかどうして、食べてみるとめちゃめちゃおいしい!!

 

コクのある甘みの「さつまいも味」が個人的には大ヒットです。

飴なのにまるでスイートポテトを食べたかのような満足感! 

 


 

筆者が小学生のとき、できたばかりの千葉都市モノレールに少し緊張しながら乗った記憶があります。

それまで電車というと、地上を走るのが常識だったのに「こんなに高いところを、こんなに大きなものが走ってる!」とカルチャーショックを受けました。

大人になった今でも、モノレールに乗るとあの時のワクワク・ドキドキ感を思い出します。

 

そんなモノレールが毎日安全に定時走行する裏には、日々の点検や訓練があったんですね。

そして、職員のみなさんの深い深いモノレール愛を感じた見学ツアーでした。

 

※千葉都市モノレールでは不定期に車両基地見学ツアー(有料)を開催しています。

情報は「モノちゃんトラベル」から。

 

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