【八千代市】今年も「黒沢池のたたら祭り」で鍛冶工房 metalsmith iiji 他の鍛冶実演!

千葉県八千代市、勝田台駅から徒歩5分ほどのところに、「鍛冶屋」さんがあるのを知っていますか? 

そこにいるのはなんと女性の鍛冶職人、伊藤愛さん。

工房は緑に囲まれ、階段を昇ると、かつてカフェとして利用されていた古い都電が残る広場があります。

まるでおとぎ話の世界のような場所で、日々真っ赤な炎が輝き、「カンカン」と金属を叩く音が響いているのです。

そんな工房で20185月に開催された1周年記念イベントを取材しました。

愛さんが実演を行う、2019年11月17日(日)開催の「第3回 黒沢池のたたら祭」情報も!

※この記事は2019年10月18日(金)に更新されました。

公開 2019/10/19(最終更新 2023/03/07)

編集部 広田 みずほ

編集部 広田 みずほ

編集者。埼玉県春日部市出身→千葉県八千代市在住。地域新聞社で広告の仕事をして16年。地域の魅力、お店の魅力を伝えます。好きなものは東南アジアとハイボール。勝田台駅周辺の酒場放浪記を書きたい。★X(旧Twitter)★@tahirom2 ★note★nue34

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イギリスでの修業を経て勝田台に工房をオープン

炎、汗、力、鉄。

鍛冶屋といえば、そんな勇ましいイメージですが、愛さんは現在3歳の娘さんを持つ笑顔の優しいお母さん。

 

 

千葉県佐倉市に生まれ、ジュエリーデザイナーを夢見て、イギリスの美大へ留学。

渡英後、鍛金に引かれ、夏休みのインターン先を探していたとき、南部の村の鍛冶屋・テリー・タイハーストさんに出会いました。

鍛冶職人で女性は「9対1いや、9・5対0・5くらいかな?しかも現地では珍しいアジア人」と笑います。

職人肌で寡黙な師匠はさぞ戸惑ったことでしょう。

それでも卒業後本格的に弟子入りし、3年間修業に励みました。

 

(イギリスの教会で風見鶏の修復作業をする愛さんと師匠)

 

30歳までに自分の工房を持つ」と決めていたという愛さん。

帰国後、結婚と出産、成田空港勤務を経て、20175月、八千代市勝田台に鍛冶工房Metalsmith iijiをオープンしました。

イギリスの師匠に工房と古い電車の写真を送ると、「Great」と言ってくれたそう。

 

「鉄は人類との付き合いが長い素朴な素材。一生ものどころか自分の人生よりはるかに長く残るのが魅力」と語ります。

硬い金属が愛さんの手にかかり、熱せられ、たたかれ、ねじられ、曲げられているのを見ていると、何か温かな生き物のように見えてきます。

ジュエリーデザイナーに憧れた少女の繊細さと、師匠譲りの武骨さを違和感なく融合させてしまう愛さんの包容力。

 

「これからは、鍛冶屋を開放してワークショップを開催したり、地元のイベントに出店したり、地元にも少しずつ貢献していけたら」という言葉通り、201851日(火)と2日(水)の2日間、鍛冶工房Metalsmith iiji1周年記念イベントが行われました。

その手から生まれた作品たち

イベント初日は最高気温27℃。

鍛造のデモンストレーションを見せていただいた工房内はすごい熱気でした。

 

大きな手すりを曲げる作業をしているところ。

適切な火の温度は、炎の色を見て判断するそうです。

間近で見るとその迫力に圧倒されます。

 

実際に鉄を叩く貴重な音はこちらの動画でお聞きください。

 

 

工房上のトレイン内には、愛さんの作品が展示されました。

作品の一部をいくつかご紹介します。

 

 

金属でこんなにも精巧な表現ができるのかと驚かされるトンボ。

羽は1羽2時間程かけて糸鋸で一つ一つ穴を空けていくそう。

女性ならではの繊細さが光ります。

 

 

S字フックやハンガーなど、日常生活で使えるものも。

S字フックには、「伸ばす」「曲げる」「ねじる」といった鍛冶屋の技術のすべてが詰まっているそうです。

特徴はその頑丈さ。

強い力を加えてもびくともしません!

「一生ものどころか自分の人生よりはるかに長く残る」という愛さんの言葉に納得。

 

作った人の顔が見えるものを、次の代、またその次の代へとずっと受け継いでいく。

そんな風に大切にできるものを持つって素敵なことです。

 

こちらはアンティークのスプーンを使って作られた指輪。

古いものや、一度は使えなくなったものを再び蘇らせることができるのも鍛金の魅力だと愛さんは言います。

元々ジュエリーデザイナーを目指していた愛さんの作品には、バングルなどのアクセサリーも多く、結婚指輪のオーダーを受けることもあるそう。

 

この他、かわいいキーチェーンやストールピンから傘立てに表札、BBQスティックなどのキャンプ用品やガーデン小物まで、愛さんが生み出すものは多岐にわたります。

体験ワークショップやイベントで地域との繋がりを

 

「あなたの町の鍛冶屋さん」として、地域に根付いた活動をしていきたいという愛さん。

1周年イベントには八千代市上高野にあるカフェ、LOCAL LOCAL GARDENさんと、八千代市在住のレザー職人、makecrewさんも登場しました。

写真の素敵なテラス席は、LOCAL LOCAL GARDENさんがお店で使っている家具などを持ってきてセッティングしたもの。
LOCAL LOCAL GARDENはピクニックやバーベキューなどもできる森の憩いの場)

 

 

トレイン内ではLOCAL LOCAL GARDENさんがおいしいコーヒーと焼き菓子を提供。

ちなみに、手前にあるコーヒードリッパーも、馬の蹄鉄を利用して作った愛さんの作品です。

 

 

makecrewさんは愛さんと同世代の職人さん。

こうした繋がりが広がっていき、じんわりと地域を包み込んでゆくのでしょう。

 

汗をかき、顔や手を炭で真っ黒にしながら、

「誰かの生活の一部に、人生の一片になるものを作りたい」

と語る愛さんの笑顔は、きらきらして見えました。

 

この日買って帰ったS字フックは、すっかり私の生活の一部になっています。

 

11月17日(日)黒沢池のたたら祭で実演!

 

今年も第3回 黒沢池のたたら祭で、愛さんが実演します!

東葉高速鉄道の線路工場中に発掘された、黒沢池公園近くの「村上沖塚遺跡」をご存知でしょうか。

日本最古級とされる製鉄所(鉄を作った炉の跡)です。

 

鉄は砂鉄の他、水に浸かる葦やイネ科の植物の根に自然に発生する「湖沼鉄」を溶鉱炉で溶かして作られます。

黒沢池にかつて自生していた葦の記録や、鉄を多く含む地層が黒沢池公園近くの崖で発見されていることから、輸入しなくても村上(村神)産の材料で鉄を作れたのではないかといわれています。

歴史に残る発見にも関わらず、八千代市でも一部の研究家の間でしか知られていないのが現状。

八千代の歴史として誇りを持って子どもたちにも伝えていきたい。

そんな願いを込めて「黒沢池のたたら祭」は生まれました。

 

第1回開催時に、偶然このお祭りのことを知ったという愛さん。

工房の目と鼻の先に古代の製鉄所があったことに運命とロマンを感じ、実演したいとオファーした結果、昨年実行委員として企画の段階から参加し、鍛冶の実演・子どもたちへの体験ワークショップを行うこととなりました。

 

 

第3回 黒沢池のたたら祭

開催日時/2019年11月17日(日)10:00~16:00 ※雨天中止

会場/東葉高速鉄道 村上駅前広場(千葉県八千代市)

●第3回 黒沢池の音楽祭
村上小・村上東小・村上北小・村上中・村上東中・八千代東高校のブラスバンド、コーラス他出演多数

●古工具市・フリーマーケット

 

※この記事は201832日号八千代市エリアのちいき新聞に掲載された記事(取材・文/レポーター 巡)を再編集してお届けしました。

 

 

Metalsmith iiji 

住所/千葉県八千代市勝田台北31011トレイン下(東葉高速鉄道 東葉勝田台駅 T1出口より徒歩5分 京成線 勝田台駅 北口より徒歩10分)

お問い合わせ/ ajiko27@gmail.com

Instagram/@iiji_metalsmith

イベント以外の工房・都電の見学は行っていません。ご依頼のご相談はメールにてお問い合わせください。

 

 

■伊藤 愛 プロフィール■

2017- :千葉県八千代市に工房を構える
2011 – 2017: (株)NAAリテイリング(成田国際空港)
2008 – 2011: イギリス Glynde Forge 鍛冶屋テリー・タイハーストの元に弟子入り
2007 – 2009: イギリス ブライトン大学 立体造形コース・金属工芸&木工芸専攻
2006 – 2007: イギリス カンバーウェルカレッジオブアーツ・ロンドン立体造形コース
2005 – 2006: イギリス カンバーウェルカレッジオブアーツ・ロンドン基礎コース・彫刻&ファインアート専攻
2001 – 2004: 東京学館総合技術高校工芸科・金属工芸専攻(現・東京学館船橋高校美術工芸科)

1986:千葉県佐倉市出身