変わる大学受験 英語勉強法やAO入試対策、学習塾アルテ北習志野で聞きました
2020年度実施を予定されていた「大学入試英語成績提供システム」の導入が延期となりました。
しかし、大学入試における英語外部検定試験(英検・GTEC・TEAP・TOEICなど)の利用がなくなるわけではなく、英語4技能化の流れを受け、こうした民間試験を利用する大学は2020年以降も増えるといわれています。
また、私立大入学者の約5割が推薦・AO入試での合格者となり、AO入試が一般入試と並ぶメジャーな方式となりつつあるという傾向も。
今後大学入試はどうなっていくのか、そして高校生はどのように受験対策をすべきなのか、難関大合格者を多数輩出している学習塾アルテ(千葉県船橋市)で聞きました。
●お話を伺ったのは…
※ 2019年12月4日現在の情報をもとに編集しています。各情報は変更の可能性もありますので、文部科学省や各大学のWebサイトをご確認ください。
公開 2019/12/04
これからの大学入試一体どうなる?
今回の議論で2024年までの延期と制度見直しが決定*1されたのは、民間試験の得点を一括化し大学へ送る「大学入試英語成績提供システム」です。
しかし従来の「センター試験英語」が廃止されること、2021年1月以降は「大学入学共通テスト」として設問が変更され、リスニング比率が増加*2することは決定済みです。加えて各大学による英語民間試験の採用増加傾向を考えると、受験生にとって英語4技能の重要性は依然高い状態です。
英語民間試験の対策により「大学入学共通テスト」のリスニング対策を兼ねつつ、一般入試や各種推薦入試の出願ルートも拡大できますから、受験メリットは大きいと言えます。
*1 文部科学省 : 令和3年度大学入学者選抜に係る大学入試英語成績提供システム運営大綱の廃止について(通知)(高校向け) (PDF:236KB)
*2 文部科学省 : 大学入試英語成績提供システムの導入延期に伴う令和3年度大学入学者選抜大学入学共通テストの出題方法等について
延期された「大学入試英語成績提供システム」からTOEICが撤退を発表*3する一方で各大学のTOEIC採用が続くなど、受験生・保護者様の視点からは分かりづらい状況になっているのが現実です。
文科省や周辺組織に働く力学を考慮すると「英検 / GTEC / TEAP」が手堅い試験とは言えます。英検は勉強できる環境も豊富ですし、最難関大レベルの受験生にとっては準1級の単語レベルがそのまま一般入試に近しいというメリットもあります。
*3 IIBC : 「大学入試英語成績提供システム」へのTOEIC® Tests参加申込取り下げのお知らせ
2020年時点での一般入試採用例はパスナビ*4様の記事がわかりやすいかと思います。
当塾からの受験者も多い首都圏大の特別入試(AO、各種推薦)における外部試験採用例や小論文の有無、出願時期については下表に抄録しました(詳細は必ず大学の要項を直接確認してください)。
首都圏特別入試例(一部抜粋) / 令和3年度以降の出願資格・加点例
2019年11月 株式会社Arte 調べ。各大学の入試要項より抜粋、入試名等の呼称は各大学の入試要項に基づく。
随時変更の可能性があるため詳細は各大学の要項を参照のこと。
たとえば上智大学の公募推薦ですと、「評定平均」+「英検2級かTOEIC L&R550 / TOEIC S&W240」で出願可能です。英検2級は中学~高校1年生で取得している方もそれなりにいらっしゃるので、上智大学の受験者層を考えれば緩めの条件です。
一般入試を見ても、英検2級でいわゆるGMARCHクラスの大学を幅広く受験可能です。
また英検2級に比べると格段に難しくはなりますが、準1級では上智大学英文学科(AO)、青山学院大学英米文学科(AO)、明治大学国際日本学部(一般)といった英語系、グローバル系の学科にも利用可能です。
令和3年度入試ではCEFR A2(英検準2級相当)以上が千葉大学、電気通信大学等の国公立大出願資格になる*5とされていますので、引き続き注視が必要です。
*4 大学受験パスナビ
2020年 一般入試 外部検定 利用一覧 国公立大学編
2020年 一般入試 外部検定 利用一覧 私立大学編
*5 文部科学省 : (大学入試改革)2021年度入学者選抜(一般選抜)における国立大学の英語資格・検定試験の活用予定の公表状況について
効果的な英語勉強法とリスニング対策
もちろん目標とする試験のレベルと現状の英語力、試験日までの残り期間で変わってきますが、最終的に高いレベルの大学を目指すのであれば文法的側面から原理的・体系的に学ぶことを推奨します。そうすることで知識が繋がってきたときに理解が深まり、忘れづらく、応用もしやすくなります。
たとえば単に “make much of : ~を重視する” と覚えるのも大切ですが、 “make A of B : Bに対してAの見方をする” という構造からアプローチしておくと “make a great deal of ~” と少し変化しても似た意味だと推測できますし、 “What do you make of him? : 彼のことどう思う?” なども覚えやすくなります。
当塾の英語テキストも、ひとつの仕組みを扱うごとにそれを様々な形で繰り返し問うことをコンセプトに編集しています。
体系化し、関連付け、実際の試験問題に繰り返し挑戦することが大切です。文法問題集を解くだけでなく、文法解説書を読み込んでください。記憶研究でもよく言われるように「深層処理、関連付け、反復」はあらゆる勉強に有効ですから、ぜひ意識してみてください。
体系的な学習を重視して編纂された学習塾アルテの英語テキスト
人間の認知資源(脳の情報処理体力)は限られていますので、体力を消費せずに処理できる部分を増やすことが重要です。
たとえば音声自体を認識する負荷が強すぎると意味処理が間に合わなくなります。したがって単純な音声認識部分に割く認知資源を節約できるよう鍛えることが重要です。これだけ聞くと「慣れ」に収斂してしまいそうですが、英語の音声変化を理論的に学ぶことでぐっと効率化が可能です。
一例ですが “wanted a desktop” という綴り字はしばしば次のように発音されます。
ウォンテッ[ダ] デスクトッ
こうした実際の発音変化を一期一会で聞き流していくのではなく「子音+母音の連結」「末尾の弱子音脱落」といった法則に基づいて理解しておくことで、似た音声変化に予測が立つようになります。
→ “Choosin[g a] jacke(t)”
チュージン[ガ] ジャケッ
“Mine is a cat”
→ “Mi[ne i] [s a] ca(t)”
マイ[ニィ] [ザ] キャッ
こうした音声変化を確認しながらシャドーイングを覚え込むまで、つまりあまり負担なく復唱できるレベルまで反復訓練することをオススメします。
※もちろん第二言語研究には様々な議論るため、あくまでひとつの意見に過ぎないことをお断りさせてください。
増加傾向のAO入試とは
「AO入試」という言葉自体はアメリカの選抜制度に由来しますが、日本でAO入試と呼ばれるものは大学や学部学科ごとにその内実が異なるため、個別的に確認する必要があります。
AO入試に加え「自己推薦」「公募推薦」といった制度も近年拡大していますが、この三つを束ねて「特別入試」という呼称を使う場合があります。こうした特別入試ごとの違いについては「学力試験や面接の有無」「高校の成績関与」といった面から解説されることも多いのですが、これは昨今の入試実態を反映していない説明です。
現状では、いずれの呼称であれ学力試験や面接、内申点の有無は試験ごとに異なります。
実際的な区分としては「併願の可不可」にあります。
名称に「推薦」を含む入試制度は併願不可 | 合格=進学を前提 |
「AO入試」は併願可能 | たとえば国立大AOに合格後、一般入試で私立大も受験可能 |
ただしAO入試にも専願(合格=進学)を条件としたものが存在するため、結局は各大学の要項を詳しく確認するほかありません。
AO入試拡大の背景には志望動機の強い学生(入学後のGPAが高い傾向にある)の確保や定員厳格化と助成金の関係など様々な理由が考えられますが、純粋に多様な人材を確保するために入試も多様化しているという側面が大きいです。
モデルとなっているアメリカの、とくにリベラル色の強い大学では、文化的・人種的バックグラウンドを多様化する動きが従来存在してきました。
たとえば社会福祉制度やマイノリティ問題について議論を行う場合、それを金銭的文化資本的に恵まれた学生のみで行うよりも、そうでない学生を含めて行うほうがより広い意見が湧出するというのは想像に難くないでしょう。
その意味で「大学における多様性の確保」は漠々とした美辞麗句ではなく、現代のような多元社会における喫緊の課題です。日本においても選考方法を工夫し多様な学生を確保する動きがあると言えます。
この傾向は試験内容にも現れており、AO入試登場時に批判の多かった「一芸」的なものばかりでなく、現在では「指定の文献や時事に対する意見論述やディスカッション」あるいは「経済問題や哲学思想といった各学術分野への理解と思考力を問う設問」が増えています。
従来の筆記試験で測れる能力があるように、こうした新世代の試験によって測れる能力も当然あるはずです。そういった観点からは、試験の多様化をポジティブに捉えてもよいのではないでしょうか。
特定の学部学科、学術分野への志望動機が強い受験生に向いています。
一方で対策に割く時間的・体力的リソースを考慮すると、それが強くない方には心理的にも厳しいかもしれません。当該分野への関心が高ければ試験対策もある程度楽しめると思いますし、当塾でもそうした方には特別入試受験を勧めています。
出願時期自体は高校3年生の夏~秋となっておりますが、できれば高校1~2年生のうちに過去問と出願要件を確認してください。専門色の強い設問が多いのもそうですが、評定平均や外部英語試験が出願資格になることも多いので、計画的に受験準備を進める必要があります。
先ほど特定分野への志望動機が重要だと述べさせていただきましたが、設問内容はあくまで試験ごとに精査してください。たとえば「文学部」と言っても政治・社会系の学部が別に存在する大学と、それらが文学部に含まれている大学では出題範囲も異なります。
一例として慶應大学文学部は人文系を広く包含しており、その推薦入試では広範な知識と思考力を問う小論文試験が課されます。
ニーチェ『道徳の系譜』を引き「呪詛の苦しみは無意義ということであって苦しみそのものではなかった」という部分ついて論じさせる問いから「ポピュリズムと民主主義の違いについて述べよ」といった設問まで登場します。
また千葉大学教育学部のAO入試では「『安楽への隷属状態』とはどのような状態か論じなさい」という出題もありましたが、これも漠然と「学校の先生になりたい」と考えているだけでは解答が難しいはずです。
したがって、一般入試よりも早い段階からの過去問分析が重要となります。
「小論文」が武器になる理由
小論文はAOなどの特別入試だけでなく一般入試でも増加傾向にあります。
たとえば青山学院大学総合文化政策学部には「英検2級 / TOEIC 500点+小論文」の受験方式が存在します。こちらの小論文試験は多少の歴史知識を問う設問も含みつつ、ルソーやフロイトの文献に現代的なテーマを重ねた論述を求めています。
この種の小論文対策にはそれなりの勉強量が必要ですので、たしかに国語や理科といった一般科目と両立させるには一定以上の努力が必要です。
とはいえ小論文を学ぶ中で身につく「主張 (Topic) – 論証 (Supporting)」の論理構造はそのまま国語の一般試験に使えますし、大学レベルに踏み込んだ背景知識は一般科目の各分野で間違いなく役立ちます。
そして小論文試験の多くは突飛な発想力を求めているわけではなく、その分野への基本的な知識量と思索能力を求めています。知識量で押せるという意味では一般科目の「国語」より、むしろ勉強量を武器にできるケースも多いかと思います。
付け加えると倍率面でのアドバンテージもあります。概して小論文を使う試験は倍率が低い傾向にあります。前述の青山学院大学総合文化政策学部では、A日程と呼ばれる旧来の3科目入試倍率は21倍ですが、B日程と呼称される「英語民間試験+小論文」入試では10.7倍となっています。*6
したがって当該分野への志望度が高い受験生でしたら、多少無理をしても他科目の勉強と両立させる価値はあると思います。
*6 青山学院大学 : 過去の入学試験結果・参考データ 2019
昨今の小論文入試はたしかに骨太な設問が多く、専門家の間でも議論の割れるテーマが出題されます。
しかしあくまで事実のみ述べれば、これまで当塾から慶應大や国立大の小論文試験を突破してきた方々でも、もともと教科書以上の知識を持っていた人はほぼゼロでした。
また「小論文は地頭のいい人しかできない」と言われることもありますが、予備校も通い2年間真剣に勉強しながらセンター本番の評論文が4点だったという方もいました。そうした方々でも3ヶ月〜半年ほど学術書を読み込んで要約と議論を繰り返すと、最終的には小論文を得点源にしていきます。
もちろん地頭の定義は人それぞれでしょうが、私的には才能云々ではなく勉強量が結果に結びつきやすい科目だと考えています。
学習塾アルテでは個別授業で小論文対策を行っている
私は人文系なのであくまでそれについてという形にはなりますが、フーコーやミルといった文系学問の大御所は常に出題されています。そして慶應義塾大、青山学院大、上智大などに共通しますが「近現代思想に現代の諸問題を結びつけて論述させる」設問が多く存在します。
フロイトの「人間の作る社会が人間を疎外する」という指摘、そうした矛盾の中で「人間文化は戦争を防ぐことができるのか」というアドルノの問い、そして「社会は個人に何をどこまで求めるべきか」といった自由に関する提起——こういった問題群は時代を問わず私たちの前に横たわっています。
ミルは『自由論』の中で、その社会の覇権的価値観を「客観的で妥当な基準」として適用し続けることで、社会の誤りが正されない可能性を指摘しました。たとえばこうした考え方を今日のAIスコアリング問題と結びつけさせるような設問も登場するかもしれません。
我々は機械に「客観的な」データ分析を求めますが、そこに入れ込む変数やアルゴリズムの公正さを担保するのは容易ではありません。実際「性別データを持たないAI」に個人の信用度をスコアリングさせることで、むしろその社会が持つ性差別を温存してしまうという問題*7もすでに表出しています。
こうした価値判断に関わる問題について落としどころを探るには社会的・哲学的議論が要請されます。そう考えると、あるテーマが出る出ないという行き当たりばったりな姿勢ではなく、思想家達の指摘してきた人文社会問題を咀嚼し、それを土台に現代を見つめ直すという姿勢が肝要です。
何百年も読み継がれてきた思想を今の社会に重ねられるのは現代人だけです。アリストテレスはアウシュビッツを知りませんし、カントは制御不能になった原子力発電所を見たこともありません。彼らの思索を現代に蘇らせて使えるのは、今を生きる我々のみです。
大学が小論文試験で要請しているのも、一つにはこういった部分でしょう。
小論文対策に役立つ文献が揃う学習塾アルテの書棚
*7 WIRED : The Apple Card Didn’t ‘See’ Gender—and That’s the Problem
これまで述べさせていただきました通り、とにかく土台となる知識を体系的に学ぶことが重要です。
これは受験生をみていても実感のあるところですが、知識がない状態で議論を行うと皆同じような論を組み立てます。逆に知識が増えていくにつれ、各々オリジナリティのある論を展開するようになります。
誤解を恐れずに述べさせていただくと、小論文でもっとも重要なのは情報量です。思考の前提は情報だからです。考えるという行為はその大部分を「比較する」ことに負っており、その前提となるのは情報です。無い袖は振れぬと言われるように、必要な情報がなければ思考力を発揮することもできません。
学術書を日頃から自分で読むというのはなかなか難しいかと思いますが、その分野にある程度通じている身近な先生などを見つけ指針をもらう、あるいは該当分野の入門書を読んでからそこに登場した学術書に入っていくという流れがオススメです。
また、難しい本はあと書きや解説から読むことも推奨します。全体的な流れやポイントを押さえると格段に読みやすくなるはずです。
志望校合格に必要なこと
私自身、塾講師という仕事を始めて以降、大手予備校の映像授業から1科目の授業料が月10万円超の個別指導塾まで経験してきました。
各人各家庭に様々な方針があるように、受験産業にも各人各様のコンセプトがあります。自分に合った環境を見つけられればそれに越したことはありませんが、良くも悪くも「最後は自分で勉強するしかない」という認識でいたほうが安定して勉強を続けられると思います。
いまは質の良い参考書も揃っておりますし、オンデマンドで学べる映像授業も安価で充実しつつあります。現状を認識した上で未来に向けて何をすればよいか具体的に考え、淡々とタスク処理をしていってください。
受験に限らずいろいろな立場の人間が様々な、時には相互に矛盾するような言葉をかけてくるかもしれません。しかし自分に対しても他人に対しても決めつけることなく、総合的に物事を考えるよう心がけていくのが良いと思います。
学習塾アルテの自習室
大学進学や文理に関係なく、本をたくさん読んでみてください。
情報量は思考力に繋がり、世界との関係性をより深めてくれるはずです。世界には複雑で難しい問題がたくさんあります。詩篇で「主には少しの不義もありません」と書かれたほどには、この世界は公明正大に作られていないようにも見えます。
そうした世界の中で、簡単な言葉や構図にからめ取られないよう思考の体力を鍛えてください。自分がいままで考慮に値しないと考えていたような立場や意見が、突如違った見え方をするかもしれません。
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