小林武史氏プロデュース「KURKKU FIELDS(クルックフィールズ)」シフォンケーキにモッツァレラチーズ…木更津で自然の恵みを体感
2019年11月2日に木更津市にオープンした「KURKKU FIELDS(クルックフィールズ)」が話題です。
運営するのは、音楽プロデューサーの小林武史さんが代表を務める株式会社KURKKU。
小林武史さんといえば、ミスチル世代の筆者にとってスター的存在。
そんな超有名人が、われらが千葉県で何か始めるらしい…というだけでも私の周囲はざわつくのですが、この「クルックフィールズ」は農業・食・アートを軸にした、サステナブル(持続可能な)ファーム&パークとのこと。
なんだか、すごそうな雰囲気です。
というわけで、千葉県内で今最も注目度が高いと言っても過言ではない(?)クルックフィールズに取材に行ってきました!
公開 2019/12/18(最終更新 2021/01/08)
編集部 モティ
編集/ライター。千葉市生まれ、千葉市在住。甘い物とパンと漫画が大好き。土偶を愛でてます。私生活では5歳違いの姉妹育児に奮闘中。★Twitter★ https://twitter.com/NHeRl8rwLT1PRLB
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「農業」「酪農」「養鶏」が土台に
かずさアカデミアパーク(木更津市鎌足)からほど近い場所にある「クルックフィールズ」。
30haと広大な敷地では、のびのびと牛やヤギが暮らし、有機栽培によるさまざまな農作物が収穫されています。
今回、施設を案内してくれた新井さんによると、実はここの開拓を開始したのは10年前。
昔は牧場だった土地ですが、牧場閉鎖後は残土受け入れをしていた時期もあったようで、KURKKUが開拓に入った当時、土には「力」が全くなかったそう。
「次世代へと豊かな土地をつなぎたい」という思いから、KURKKUのスタッフで土を耕し、10年の歳月をかけて荒れ果てた大地を農作物が育つまでに生き返らせました。
そんなクルックフィールズでは3つの「一次産業」がベースとなっています。
その1 農業
オーガニックファームでは環境の負荷になる農薬を一切使わない有機栽培にこだわっています。
7haの畑は、すべて有機JAS認証を取得。年間を通じて10数種類の野菜やハーブが栽培されています。
来場者が種まきや収穫などの農業体験ができる「エディブルガーデン」では1haの土地に年間100種類の多種多品目栽培を行っており、一般見学可能。
その2 養鶏
8年前にスタートした、クルックフィールズ第一号の一次産業。
広々とした鶏舎で平飼いされたニワトリから生み出される卵は、鮮度バツグン&臭みがないのだそう。
飼料は、お米を中心におからや小麦、だしがらなどを発酵し、自家配合しています。
このような飼料で育ったニワトリの卵は黄身がオレンジ色ではないのが特徴です。
平飼い卵を使った「クリームぱん」(223円税別)を試食しましたが、割ってみるとご覧の通り中身のカスタードクリームがこんなに真っ白!
その3 酪農
クルックフィールズには、水牛30頭、ブラウンスイス(乳牛)3頭、それにヤギたちが飼育されています。
食事時間と授乳時間、睡眠時間以外は、自由に過ごすブラウンスイスたち。
遠くで元気に跳ね回るヤギの姿も。
それぞれのミルクは、そのまま味わったりチーズなどの加工品に利用されたりしています。
水牛やブラウンスイスのいる牛舎は、一般開放していないのですが、来年のGW頃からはヤギたちとはふれあいが楽しめるそう。餌やりなどの体験プランもスタート予定です。
酪農や養鶏で出た動物の糞は大型プラントで発酵させて農業に利用。
(カラフルな堆肥舎 提供:クルックフィールズ)
さらに、野菜くずや畑で抜いた雑草、施設内の飲食店で出た生ゴミも堆肥化しています。
この施設のテーマ「サステナブル」がここに生きているわけです。
11月2日の第1期オープンでは、これら「農業」「養鶏」「酪農」の恩恵を存分に味わえる「ダイニング」をはじめ、さまざまな施設が登場。
次は、それらを詳しくご紹介します!
大地の恵みをいただく「食」
クルックフィールズには全部で5つの食に関する施設があります。
まず中心となるのが、「ダイニング」。
ダイニング
こちらでは畑で採れた野菜を使った天然酵母の旬菜ピザなど、「いのちのてざわりを感じる」メニューが味わえます。
取材の日、試食させてもらった「サラダと自家製シャルキュトリー盛り合わせ」。
サラダは場内で採れたクレソンなどに、平飼い卵から作られたシーザードレッシングがかかっていました。
ゆで卵ももちろん平飼い卵。
前述したとおり、黄身はクリーム色に近い色味です。
こちらの「自家製ソーセージと農場温野菜」では、豚とパプリカのソーセージ、猪と赤紫蘇のソーセージの2種が楽しめました。
ダイニングでは、ピザ窯で焼く旬菜のピザ(1,200円)などのアラカルトの他、クルックフィールズの恵みをたっぷりと味わえる「クルックフィールズコース」(2,500円)も用意されています。
搾りたての水牛のミルクで作られるモッツァレラチーズを使った「作り立て水牛モッツァレラのマルゲリータ」はコースでのみ味わえる特別なピザ。
20食限定です。(コース料金に+300円かかります)。
ダイニングの建物自体もめちゃめちゃ素敵。
開放感のある吹抜けの空間に、サンサンと日の光が入るチャペルのような大きな窓。
アンティークのようなフローリングには、もともとあった古い牛舎を解体した際に出た古材を再利用しています。
提供されるおしぼりも繰り返し使える素材のものを採用。
コンセプトがどこまでも徹底しています!
ベーカリー
ダイニングの裏手にあるのが「ベーカリー」。
店頭には常時20種前後のパンが並びます。もう全てがおいしそう!
パンの具材に使われるのは、農場で採れた野菜やハーブ、シャルキュトリーのベーコンやソーセージ、平飼い卵…とクルックフィールズで収穫されたり、作られたりしたものが中心。
テイクアウトして、場内でピクニックするのも楽しそうです。
天然酵母も場内で採れた野菜などを用いた自家製のものを使用。
また、クルックフィールズでは少しずつ小麦の生産も始めています。
製粉機も完備されており、今は100%ではありませんが、将来的には全てこちらで採れた「自家製」の小麦粉でパンを作れるようにしたいとのこと。
まさにクルックフィールズの恵みが凝縮されたパン。パン好きでなくとも気になりますね。
シフォン
シンプルだからこそ、素材の風味が味を左右するシフォンケーキ。
ここはシフォンケーキのみ、しかもプレーン1種類のみという、思い切ったラインナップの専門店です。
(シフォンケーキのような外観 提供:クルックフィールズ)
もちろん、使用するのは平飼い卵とブラウンスイスのミルク。
卵は朝採れ、ミルクは搾ってから半日ほどととにかく新鮮。それらが熟練のパティシエールの手によって、ふんわりと軽いシフォンケーキへと生まれ変わります。
ショーケースなどはなく、オーダーを受けてからこちらのカウンターで型から外し、ラッピングして手渡してくれます。
建築家・FUJIWALABOと左官職人の久住有生氏による建物はもはやアート作品。
空気と水を練り上げる左官の技術とシフォンケーキの工程はどこか共通するものがある…そんな考えから左官作りを採用。
外壁は、シフォンケーキの素材の肌触りや質感を再現しているそうです。
シャルキュトリー
シャルキュトリーとはフランス語で食肉加工のこと。
クルックフィールズではおもに、場外にあるオーガニックブリッジ(食肉処理場)からのジビエ肉を加工して、ハムやソーセージを作っています。
野生動物による農作物被害が深刻な木更津市において、捕獲したイノシシやシカをおいしく加工することで、地域に貢献したいという思いを体現しています。
こちらでは「ダイニング」でも提供される、ハムやソーセージ、ハムなどを扱っています。
ジビエというと、「固い」「クセがある」というイメージがありますが、こちらのジビエはどれも食べやすい!
これは丁寧な下処理のたまもの。
さらに処理から加工までを一貫して自社で行っているので、一般的な価格より少しお安く販売できるのだとか。
お土産にも喜ばれそうですね。
ガゼイフィーチョ
本場ヨーロッパのフェルミエ(フランス語で「農家製の」の意味。酪農業を伴ったチーズ工房のこと)をベースにしたチーズ工房。
場内で飼育された水牛のミルクから作られるモッツァレラチーズがおすすめ!
毎朝3時に絞ったミルクをその日のうちに加工しています。
超レアなモッツァレラチーズを試食!「体験プラン」に参加しよう
クルックフィールズでは、施設内のコンテンツをより楽しむための「体験プラン」を数種類用意しています。
ガイドしてくれるのは場内で働くスタッフたち。
中には「体験プラン」でしか見学できない場所もあるので、おすすめです!
【HPで事前予約制】(空きがあれば当日でも可)
チーズツアー
普段は来場者は入ることのできない、水牛の牛舎に特別に入れるプラン。
人懐こい水牛を目の前に、できたてのモッツァレラチーズが食べられるという超レアな体験ができるんです!
人を見ると遊んでほしくて寄ってくる水牛たち。
水牛がこんなにかわいいなんて…知らなかった!!
本場イタリアで修業を積んだチーズ職人の竹島さん(写真)による、水牛についての解説を聞きながら、モッツァレラチーズをいただきました!
おいしい! フレッシュ!!としか、ボキャ貧の筆者には言いようがありません!
そのくらいおいしかった…。
竹島さん曰く、「モッツァレラチーズは作った当日が一番おいしい。ベストな状態をぜひ味わってほしくて、このプランを考えました」とのこと。
できたてを味わう機会は日本ではなかなかないとも教えてくれました。
ちなみに、ホルスタインは1日30~40Lのお乳を出しますが、水牛はわずか5L程度。
そんな希少なミルクから作られる希少なチーズ、ぜひ味わってください!!
9時30分~10時(所要時間30分)
※荒天中止
大人1名 2,000円(税込)
子ども(小学生以下) 無料
※チーズ試食を希望するお子さまは、別途1名500円(税込)で可能
エディブルガーデンツアー
畑をスタッフと周りながら、みずみずしい野菜やエディブルフラワーを見学し、自然の力を感じるプラン。
13時~14時(所要時間60分)
※荒天中止
大人1名 1,500円(税込)
子ども(4歳〜小学6年生)1名500円(税込)
子ども(3歳以下) 無料
※フレッシュハーブティーと季節の野菜やハーブの小さなお土産付き
その他、「採れたて野菜のピザ作り」や、広大な敷地を巡ってクルックフィールズの「命の循環」を体感する「クルックフィールズツアー」、季節限定のプランも用意。
詳しくはHPでどうぞ~!
触れて、感じる草間作品「アート」
クルックフィールズには、アート作品も点在。
日本を代表する前衛芸術家の草間彌生作品を見ることもできます。
1つは、鏡面になった正方形のボックスが目を引く「無限の鏡の間 ー心の中の幻/Infinity Mirrored Room -Illusion inside the Heart」(2018)。
近付くと、丸い窓がたくさんついていることに気づきます。
作品には扉が付いていて、中に入ることができるんです。
扉を閉めると…。
なんとミラクルな光景。
箱の中で無数に輝く色とりどりの光はすべて自然光。
なのでこの作品は日中しか楽しめないのです。
日はまた昇り、沈んでいく…24時間明るい場所で過ごすことができる現代人は、そのサイクルを忘れがち。
当たり前のように頭上に太陽があることへの感謝、またいつまでもこのサイクルが続くことへの願いが込められているそうです。深い…。
(※体験は「アートチケット1,000円」を購入する必要があります。)
もう1つは、「新たなる空間への道標 GUIDEPOST TO THE NEW WORLD」(2018)。
草間彌生の代名詞ともいえるドット模様の作品です。
その他、パリで活動する現代美術家カミーユ・アンロによる「Derelitta」(2016)、フランスのコンテンポラリーアート界の鬼才ファブリス・イベールの「ベシーヌの人」(1991,2017)など、無料で鑑賞できる作品がたくさん。
小さな子ども連れだとなかなか美術館にも行けないものですが、ここなら自然の中で遊びながら気軽にアートに触れられ、情操も育まれそうです。
タイニーハウスで宿泊体験も
こんなに魅力あふれるクルックフィールズ…、帰りたくなくなってしまいそうですよね。
実は、近日中に宿泊もできるようになる予定なのです!
しかも、宿泊するのはアメリカ・ポートランド発祥のタイニーハウスというおしゃれさ。
コンパクトながら、ベッドやデスクなどが完備された快適そうな空間。
レコード鑑賞が楽しめる他、バーカウンターも備えた「センターハウス」も併設されています。
「養鶏場や牧場は、朝が一番忙しいんですよ」と冒頭に登場した新井さんのお話が印象的だったのですが、ステイプランなら、閉園後の夜や開園前の早朝という、いわば「素」のクルックフィールズが見られるのです。
朝ごはんとか絶対おいしいんだろうな…。
価格は1棟25,000円(予定)~。
すべてがつながる!「サステナブル」なエネルギーシステム
クルックフィールズ内にはきれいな小川が流れていて、小魚が泳いでたりカエルが隠れていたりと、水面を見ているだけでも癒されたのですが、実はここに流れる水は、ダイニングなどから出る生活排水なんです。
浄化システムとして採用しているのは「バイオジオフィルター」。
ダイニングの地下にある浄化槽にたまった排水を微生物の力で有機物に分解し、浄化しています。
その分解したものを植物が栄養として吸収することで、汚水がろ過されるそう。
水辺に植栽されたヤナギやクレソン、空心菜といった吸水力の強い植物により、何度もろ過されながら流れていきます。
特にクレソンはどんどん茂って、今ではダイニングで提供されるサラダに使われるほど!
「自分たちが出した汚水をよりきれいな水にして外に流す」。
生活するうえでどうしても出てしまうものだからといって、放置するのではなく、きちんとした形で自然に還しているんですね。
クルックフィールズにはスタッフたちが手作りしたビオトープもあります。
バイオジオフィルターでろ過された水が流れつく場所の一つです。
ここに集まった昆虫などの生き物が、畑に行って害虫を駆除。
さらに、収穫が終わると畑からビオトープに帰ってきて、冬の季節はここが虫たちの住処になります。
人が手を加えて誕生したビオトープが自然のサイクルにきちんと組み込まれていることに不思議さを感じつつ、「人間だって自然にいいことができるんだな!」と勇気をもらいました。
加えて、場内には2メガワットの発電量を誇る巨大なソーラーパネルが設置されています。
「未来に向けた、新しいエネルギー環境を実践するクルックフィールズの象徴」とうたわれているように、農作業などで使われる場内の電力は、この太陽光エネルギーを使用。
台風15号、19号の際に起きた大規模停電も記憶に新しい今日この頃。
被害を受けたクルックフィールズとしても、災害時の自立的なエネルギー生産は重要視しているとのこと。
このシステムを軌道に乗せることで、周辺地域の安心・安全の助けになれたら…と考えています。
まとめ
日々の忙しい生活に追われて、「時短、時短」と便利な生活を当たり前のように享受している筆者ですが、クルックフィールズが掲げるコンセプトに触れたとき、ハッとしました。
忙しさや余裕のなさを言い訳にして、半径数メートルの物事にしか目を向けないことは、もしかしたら空しいことなのかもしれません。
例えば物を選ぶとき、立ち止まって「自分の手に届くまでの工程」や「自分の手から離れた後の工程」まで考えてみる。
少しずつでもそんな生活にシフトチェンジしていけたらな…と、ちょっとした意識改革が私の中に起きています。
クルックフィールズでのさまざまな体験は、大なり小なり、誰にでも「気付き」を与えてくれるはず!
真面目なことを考えるきっかけにもなりますが、ただただおいしい食事を楽しんで、雄大な自然に癒されるのも全然アリ!
ぜひ一度足を運んでみてください。
住所/千葉県木更津市矢那2503
営業時間/9時~17時
定休日/火曜、水曜(祝日の場合は営業)
料金/平日無料、土日祝は中学生以上1,000円、4歳~小学6年生500円、未就学児無料
千葉県にお住まいの方は第2期オープン(2020年春予定)まで週末も入場無料
※千葉県在住を証明できるものを当日インフォメーションにご提示ください。
P/無料
アクセス/館山自動車道木更津北I.Cから車で10分
電話番号/0438-53-8776
※荒天時:飲食エリア以外クローズの場合無料