世の中には多くの博物館や資料館がありますが、成田には羊羹資料館があることをご存知ですか? 「成田羊羹資料館」は、千葉の有名和菓子屋さん「なごみの米屋」さんが運営しています。成田羊羹資料館のついでに、すぐ隣にあるなごみの米屋さん総本店にも立ち寄ることができるので、どっぷりと和菓子の世界に浸ることができますよ!

※内容や価格は取材時点のものです。最新情報は公式HPまたはSNSでご確認ください

公開 2019/11/08(最終更新 2023/11/18)

梶原 よんり

梶原 よんり

大学卒業後、旅行会社の広報部に就職するもライターの夢を追いかけるために退職。現在は雑誌や新聞など各種媒体で執筆中。2019ポートクイーン千葉としても活動している。 ★instagram★ https://21/www.instagram.com/yonri.kajiwara/

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【成田羊羹資料館】企画展 〜人と人を結ぶ絵葉書展〜

成田羊羹資料館は2階建。1階では企画展を開催中です。和菓子や成田などをテーマにしており、半年ごとにテーマが変わります。先月から開催されているのは『人と人を結ぶ絵葉書展』。昔懐かしいような、どこか温かみがある絵葉書が展示されています。2020年3月末日まで開催予定です。

「季節の挨拶や旅先からの土産話しなどに用いられる絵葉書は、人と人の心を結ぶという点で和菓子と似た役割があります」と館長。たしかに、絵葉書も和菓子も、温かくて大事なコミュニケーションの一つですよね。ちなみに、今までの企画展で反響の良かったテーマを伺うと「お菓子の包み紙」だと教えてくれました。

画家さんに絵を包み紙に描いてもらった老舗の和菓子屋さんもあったようです。このように、興味深い内容で企画展が開催されるのが見どころ。半年に1回のペースで企画展の内容が変わるので要チェックですよ!

※その時期のテーマはホームページで確認できます

羊羹となごみの米屋、そして世の中の歴史を学ぼう

2階に上ると、大きな年表がずらっと目に入ります。羊羹となごみの米屋さんの歴史はもちろんのこと、成田や世の中の動きも合わせて学べます。

要所要所に分かりやすくまとめられた資料が置いてあるので、そちらも一緒に読みながら巡るとさらに理解が深まりますよ。日本の初期の羊羹は、小豆と小麦粉、または葛粉を混ぜて作る「むし羊羹」でした。

元々は甘くはなかった羊羹。なんと始まりは、羊の肉や肝をとろみのあるスープに入れた「羹(あつもの)」だったと言います。こちらは中国(当時は唐)から伝わりました。日本に「羹(あつもの)」が伝わったのは平安時代。その時代の日本は仏教の影響で肉食を良しとしない時代だったこともあり、羹(あつもの)は肉以外の原料を使って姿形だけ似せるようになりました。これが、日本での羊羹の原型です。

とっても貴重!昔の道具を見てみよう

実際に羊羹づくりに使われていた道具が展示されています。

また、壁にはなごみの米屋が時代とともに変化した写真も展示されています。創業当初から努力と変化を続けてきたことが写真から伺えました。

創業者、諸岡長蔵のお部屋

米屋さんの創業者、諸岡長蔵さんの部屋を再現したコーナーもあります。

珍しい愛用品が展示されているので、じっくり見てみると面白いかもしれません。

もはや芸術な昔懐かしい羊羹のパッケージ

米屋さんだけでなく、昔、成田にあった羊羹屋さんのパッケージもこんなに多く展示されています。

もはや芸術ですね。色鮮やかな紙色と凝ったデザインが購買意欲を掻き立てそうです。パッケージが羊羹をさらに魅力的にしているのでしょう。

羊羹の材料を触ってみよう

皆さん、羊羹は何でできているかご存知ですか? 成田羊羹資料館では、材料の小豆、砂糖、寒天を展示しています。

豆と砂糖の種類はこんなにも豊富! 様々な豆と砂糖を使い分けて、多種多様な羊羹が作られているのです。

豆は実際に手にとって触ることもできます。子供に大人気だそう!

なごみの米屋が生み出した “初めて” の羊羹たち

羊羹資料館を隅々まで巡り、米屋さんが羊羹界の先駆けとなった存在だと分かりました。最後に、米屋さんが生み出した “初めて” の羊羹を3つ厳選してご紹介します。

(1)栗羊羹を初めて缶詰に(昭和13年)

当時の製造技術では一般的な羊羹は日持ちが短く、船便で日数もかかるため、保存性を高める為に開発されました。缶詰にした栗羊羹を戦地の兵隊の慰問袋に入れて送ったそうです。

(2)缶入り水羊羹を発売(昭和37年)

ちょうど当時は冷蔵庫が世の中に浸透し始めた頃でした。「せっかくだから冷蔵庫で保存できるようにしよう」という米屋さんの思いで缶入り水羊羹がうまれました。5年もの歳月をかけて研究開発されたようです。

(3)小型羊羹「ヨネパック」を開発(昭和45年)

「ヨネパック」はミニ羊羹の元祖と言われています。今は小分けにされた羊羹をよく見かけますが、当時はまだ「切り分ける長い羊羹」が一般的。世の中の個食化(孤食化)を見越して開発されました。

なごみの米屋さんが和菓子屋さんということは知っていましたが、ここまで羊羹に力を入れていたなんて知りませんでした。もっと皆さんにも和菓子の魅力を知ってほしいです。こうして和菓子の代表格である羊羹について学ぶと、不思議と和菓子の魅力に取り憑かれてしまうのは私だけではないはず。

ライターあとがき

自宅から往復2、3時間もかけて成田の總本店まで行き、取材時間はたっぷり1時間半! 担当の方が熱意を持ってたくさん説明してくださり、私もその熱意に負けないように食らいついて取材しました。

今回の取材は私にとって特別な思い入れがあります。というのも、実家の付近にはなごみの米屋さんの直営店があり、幼い頃から慣れ親しんだ和菓子屋さんだからです。小中学生の頃、友達との待ち合わせ場所はなごみの米屋さんの前がほとんど。待ち時間があまりにも長いと、たまに試食をしたり、お店の方からお茶をいただいたり・・・。

大学生になってからは、初詣のついでに妹や恋人と一緒にいつも寄っていました。恋人のご両親に初めて手土産を買ったのも、ここでした。家族との楽しい思い出もここにあります。まだ私が7、8歳の頃に家族で和菓子作り体験をしました。すごく幸せでした。もしかしたら、この思い出が私の支えになっているのかもしれません。

とにかく、私にはなごみの米屋さんの思い出がたくさんあります。大好きななごみの米屋さん。いつか取材したいと密かに願っていました。やっとやっと、こうして取材ができました。とっても嬉しいです。幼い頃からの幸せな記憶や楽しかった感情が、再び呼び起こされました。「ライターをやっていて本当によかった」そう強く思えた取材でした。

成田羊羹資料館
営業時間/10:00~16:00
※2019年10月1日~2019年12月26日は9:00~16:00
※1月1日~1月3日は9:00~17:00
※展示替えの際のみ休館
電話番号/0476-22-2266
住所/千葉県成田市上町500
アクセス/JR成田線・京成本線「成田駅」から徒歩10分
ホームページ/https://nagomi-yoneya.co.jp/youkanshiryoukan/