2018レッドブル・エアレース千葉大会開催決定 日本人パイロット室屋義秀さんインタビュー

 (c) Joerg Mitter / Red Bull Content Pool

室屋義秀

1973/1/27生まれ 福島県福島市在住
2009年にレッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップにアジア人で初めて参加(6位入賞)後、2014年初の表彰台(3位)。2016年千葉大会で初優勝。2017年年間総合優勝を獲得。

 

皆さんはレッドブル・エアレースをご存知ですか? FAI(国際航空連盟)が公認する究極のモータースポーツで、空のF1とも呼ばれています。世界最高の飛行技術を持つ14人のレースパイロットたちが、最高時速370km、最大重力加速度12Gの中、操縦技術の正確さ、知力、体力、そして精神力の限りを尽くしてタイムを競います。

 

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2018年シーズンは2月2日UAE・アブダビで開幕。そして、5月26日(土)、27日(日)、千葉県立幕張海浜公園にて、レッドブル・エアレース千葉2018開催が決定。

 

昨年、日本人パイロットとして初めて年間総合優勝を果たした室屋義秀選手。2月2日に行われたアブダビ戦では2位という好スタートをきりました。

 

このまま今年も総合優勝を目指して2連覇を達成してほしい!

そこで、昨年の優勝のこと、今年の意気込みなど室屋義秀さんに聞いてみました。

 

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ーーー早速ですが、アブダビ戦2位おめでとうございます! 出だし好調ですが、やはり今年の目標は年間総合優勝ですか?

 

2018年シーズンの目標は年間総合優勝二連覇です。アブダビ大会ではチームの戦略通りに安定したフライトができ、満足しています。

昨シーズンは8大会中4大会で優勝をしたので、本来であれば最終戦を待たずに年間総合優勝を決められても良かったのですが、最終戦まで僅差で年間王者争いをしていました。その理由はフライトが安定せずノーポイントで終えた大会もあったためです。今年は一か八かの勝負を仕掛けるのではなく、コンスタントに上位に入り、安定してポイントを重ね、再び年間王者を目指します!

 

ーーー着実に攻めていくそんな1年になるということですね。それでは、昨年初の年間王者に輝いた率直な気持ちをお聞かせください。

 

操縦技術世界一を目指してから22年。今まで積み重ねてきた努力が正しかったことが証明できてうれしかったです。今後もさらに努力を重ねて、操縦技術を追求していきます。

 

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ーーー22年の積み重ね! 室屋さんは下積みが長かったと度々取り上げられています。2009年から参戦しているレッドブル・エアレース。総合優勝までの道のりは長かったですか?いつ頃から年間総合優勝を狙っていましたか?

 

レッドブル・エアレースには2009年から参戦していますが、「操縦技術世界一になる」という目標設定をしたのは1995年(22歳の時)です。

私が子どもの頃は、エアレースや曲技飛行を見聞きする機会はなく、練習を行うための機体も環境もなかったために、まずはそれらを準備する事から始めました。世界を目指すためのノウハウも日本にはなく、航空文化が根付いていない日本で飛ぶためのさまざまな道を切り開くことに約20年もの時間を要しました。

エアレースでの総合優勝は、2010年から思い描き始め、2014年からは詳細な実行プランに沿って一歩ずつ進んできました。

 

ーーーお話をうかがうと年間総合優勝がさらに重みのあるものに感じます。日本ではあまり浸透していなかったエアレースですが、2015年に初めて千葉で開催されてから認知度もあがってきました。そうなると、6月の千葉大会(2017年・幕張)での優勝は大きかったのではないでしょうか。日本での開催は、他国でやるときと気持ちの違いなどはありますか?

日本で開催される事により、さまざまなメディアで取り上げていただけるので、レッドブル・エアレースファンも増え、多くの方からの応援を後押しにして年間総合優勝ができました。

レッドブル・エアレースに参戦する前から飛んでいた馴染みのある千葉・幕張での大会は、風の特徴などを知っている私にとって有利であったと思いますし、日本での開催は気候や時差の面でストレスがなく、良いコンディションでレースに臨むことができます。

 

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ーーーその流れで最終戦を迎えられたわけなんですね。最終戦では、元F1レーサーの佐藤琢磨さんが応援に来てくださっていました。どのようなお気持ちでしたか? 

最終戦はインディアナポリス・モーター・スピードウェイ(IMS)でおこなわれたのですが、同じモータースポーツの世界で活躍し、(IMSでおこなわれた)2017年のインディ500でアジア人として初めて優勝した佐藤琢磨さんが応援に来てくれたのは、とても心強かったです。

最終戦の会場で初めてお会いしたのですが、アスリートとして積み重ねる準備内容が非常に似通っていて、とても話が盛り上がりました。

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ーーー初めてとは思えないほど、仲良い感じにみえました(笑)。アスリートとしての準備内容というお話がでましたが、常時、レース前、レース中、レース後はどのようなことを考えていますか?

 

よく験担ぎや勝負飯などについて聞かれるのですが、私もチームメンバーも、レース前・レース中は、あえて特別なことをしません。体調管理・機体の準備・イメージトレーニング・フライト・フライトレビュー等、練習でも、大会でも常に同じルーティーンを繰り返し「普段通り」レースに臨めるようにしています。

 

ーーー“いつもどおり”できることが大切。どんなことにでも共通していえることかもしれないですね。エアレースのことを知らない方たちに向けて、エアレースの楽しさってどんなところかを教えてください。

 

レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップは時速370kmで飛ぶ小型プロペラ機が技術とスピードを競うモータースポーツで、国際航空連盟公認の世界選手権です。レース機が通り抜けるのは地上や海面から約20mの高さ。観客の目の前の三次元空間で非日常が繰り広げられます。

モータースポーツならではの先進技術、それを扱うパイロットのスキル、勝負時のメンタル、そしてタイムで勝負が決まる分かりやすさ。さらには、世界のトップパイロット達ととてつもなく高いレベルで競い合うのは、スポーツとしての醍醐味があります。

 

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ーーー室屋さんがそのトップパイロットの中で活躍されているということが私たちの誇りになります! レースだけにとどまらず、今後どんな展望をお持ちなのかをお聞かせください。

 

国内では、日本の未来を担う人材育成と、航空文化普及の拠点作りを行う「VISION 2025」というプロジェクトの始動に向けて動き始めています。

私が拠点とする福島県では航空宇宙産業の集積が進められており、ホームベースである「ふくしまスカイパーク」には国産小型機の開発企業やパイロットの養成実習をおこなう大学の進出などが予定されています。さまざまなこれらのプロジェクトが産声を上げている現在、夢溢れる新機軸を担う人材の育成はふくしまの使命です。そんな未来の実現に向けて、私の得意とするスカイスポーツ分野から、多くの人に航空に興味を持ってもらい、さらにその中から次世代を担う航空人を育成するプロジェクトを開始します。このプロジェクトを推進するための、専用の学習施設となる展示場も今秋ふくしまスカイパークに誕生する予定です。

 

ーーー育成に力を注がれるということ…ますます子どもたちの目標として輝いてください! 最後に、ファンの方へメッセージをお願いします。

今年も長いシーズンが始まりました。息切れしそうな時には、皆さんの応援が頼りです。今年も最終戦までご声援いただければ幸いです。

 (c)Joerg Mitter / Red Bull Content Pool

以上、室屋義秀さんのインタビューでした。見た目はもちろん(!!)、パイロットとしての生き方、人としてのたくましさ…全てがかっこいい室屋義秀さん。5月26日、27日に行われる「レッドブル・エアレース千葉2018」に足を運び、思いっきり応援したいと思いました。皆さんもぜひ!