引きこもりがちな子どもが社会に復帰するには? 「働く力」を育てる場所埼玉とうぶ若者サポートステーション

就職がうまくいかない、自宅に引きこもりがち、いわゆるニートである…。

そんな若者たちが仕事に就いて自立するには、まずどこから始めればいいのでしょうか。

 

昨今、改めて社会問題として注目されている「引きこもり」。

厚生労働省の委託事業として全国に設置されている「地域若者サポートステーション」(通称サポステ)は、引きこもりなど就職に悩む若者とその家族の受け皿として、社会復帰の手助けを行っています。

 

公開 2019/07/17(最終更新 2023/03/06)

編集部 モティ

編集部 モティ

編集/ライター。千葉市生まれ、千葉市在住。甘い物とパンと漫画が大好き。土偶を愛でてます。私生活では5歳違いの姉妹育児に奮闘中。★Twitter★ https://twitter.com/NHeRl8rwLT1PRLB

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就労したい気持ちがあるなら「地域若者サポートステーション」へ

仕事がしたいのに見つからない、いつかは働きたいけど今すぐには無理…。

そんな若者の自立を応援するのが、「地域若者サポートステーション」です。

サポステは厚生労働省から委託された支援機関で全国に175カ所あり、今回取材にご協力いただいた「埼玉とうぶ若者サポートステーション」もその一つです。

 

 

 

■対象者

原則として、15歳から39歳までの若者とそのご家族または保護者の方で、次に該当する方が対象です。

・現在、仕事に就いておらず、家事も通学もしていない方で、就労を目指す方。

 

保護者からの勧めで来所する人も

サポステには、親御さんに勧められて相談に来る若者も多いそう。

そうはいっても、親が働きかけることで逆に尻込みしてしまうお子さんもいるはず。

そういうときは、あえて「就職」という言葉を出さずに「相談だけでもしてみれば?」と軽く誘ってみるのがいいかもしれません。

 

若者の自立を支援埼玉とうぶ若者サポートステーション

厚生労働省の委託事業所として、地域若者サポートステーションが各地にでき始めたのはいわゆる「ニート」という言葉が世間に浸透し始めた10年ほど前から。

春日部市と越谷市に事業所を構える埼玉とうぶ若者サポートステーションは、2017年に開所しました。

ここは、専門家による面談や充実の講座を通じて心身ともに「働く準備」を整える場所。

 

実際にどんな人が、どんなときに利用しているのか、総括コーディネーターの浜田さんに教えてもらいました。

 

埼玉とうぶ若者サポートステーション 産業カウンセラー

総括コーディネーター 浜田広平さん

 

相談するかしないかを「相談」するところ

 

――来所しようと思ってもきっかけがつかめない方も多いかと思います。

どんなタイミングで相談に伺えばいいですか?

埼玉とうぶ若者サポートセンターの浜田さん浜田さん:ズバリ、「相談するかどうか」を私たちに相談しに来てください。

サポステのゴールは「就職」ではありますが、仕事を探しに来ていただくわけではなく、「どうやって働く準備を始めるか」をスタッフと一緒に考えていく場所です。

「就職活動がうまくいかない」という方はもちろん、「やりたいことが分からない」「何からはじめていいのか分からない」というような方も大歓迎です。

相談も講座もすべて無料。10代後半から30代後半と幅広い年齢層の方に利用いただいています。

 

例えばこんな人…

・人とのコミュニケーションが苦手で引きこもりがち。

・一度就職して嫌な思いをしたので仕事についてネガティブなイメージがある。

・自分に向いている仕事が分からない。

・人間関係につまずいて人と接するのが怖い。

 

――話はどんな方が聞いてくださるのですか?

埼玉とうぶ若者サポートセンターの浜田さん浜田さん:埼玉とうぶ若者サポートステーションの場合、原則初回相談は相談援助の専門職の国家資格を持った相談員が対応します。

その方の状況を鑑みて、担当相談員を決めます。

その後、担当相談員と面談を何回か重ねて、セミナーの受講などを提案していきます。

その方の希望やペースに合わせて、ゆっくりとステップアップするのでご安心ください。

 

相談しに来た方からは、「これまで1人で悩んでいたけど来てよかった」「もっと早く来ればよかった」という声をたくさん頂いています。

 

(相談はプライバシーが守られた個室で実施します)

 

相談のステップ

(1)予約をする

電話または問い合わせフォームで予約を。

 

(2)初回相談

まずは軽くお話をして、登録するかどうかを決めます。

 

(3)個別面談

登録後、面談を行います。回数は人それぞれ。

専門のスタッフがしっかりと向き合い、相談者にとってベストな解決方法を探ります。

 

(4)就労支援プログラム

適職診断やコミュニケーション講座、パソコン講座、職場見学や就労体験といった各種支援を受け、就職に必要な力を身に付けていきます。

 

(5)就職

いよいよ就職活動開始!

基本的にご自身が、ハローワークや求人サイトなどを利用して仕事を探します。

キャリアコンサルタントから、仕事の探し方や履歴書の書き方、自己PRの方法などのアドバイスもあるのでご安心を。

 

(6)就職定着、ステップアップ支援

就職すれば終わりではなく、アフターフォローもばっちり。

就職した後の悩みや不安を相談できる窓口を用意しています。

 

――具体的な目標がなくても相談に来ていいのは心強いですね。

相談者と接するうえで大切にしていることはありますか?

埼玉とうぶ若者サポートセンターの浜田さん浜田さん:

社会に踏み出せないという人の根底には、「自分に自信が持てない」という気持ちが隠れていることが多いんです。

なので、人と接することが苦手な方や仕事に対して苦手意識のある方には、すぐに就職の話をするのではなく、講座を受けてもらうなどして、自信を付けるところから始めています。

 

最初はうつむき加減の方が、だんだんと自信を持ち始め、顔つきが変わったり自分からスタッフに話しかけたりしているのを見ると、私たちもうれしい気持ちになります。

 

あとは頭ごなしに否定をしないこと。

とにかくじっくり話し合うことに重きを置いています。

 

――こちらで実施している講座について詳しく教えてください!

埼玉とうぶ若者サポートセンターの浜田さん浜田さん:

就職に役立つ講座を多数ご用意しているのでぜひ活用いただければと思います。

例えば、いきなり面接を受けるのも不安があると思いますので、「面接対策講座」で慣らし運転したり、スキルに不安がある方は「パソコン講座」で知識を磨いたり…。

どんな仕事が向いているのか分からないという方に向けて「適職診断」も実施しています。

すべて無料で受講できますよ。

 

【就職応援】
応募書類の書き方/面接対策講座/仕事の探し方

【スキルアップ】
パソコン講座/知っておきたいビジネスマナー/コミュニケーション講座

【適職を見つける!】
適職診断/職業人講話

 

…などなど。

 

(コミュニケーション講座の様子)

 

また、春日部の他に、越谷にも相談所を設けていますが、相談者の方は、加須、幸手、羽生、吉川、草加市など幅広いエリアからいらっしゃいます。

春日部まで来るのが大変…という方のために、定期的に出張セミナーや相談会を実施しています。

講座や出張相談会のスケジュールは公式HPでお知らせしてますので、興味のある方は確認してみてください!

 

――職場での体験もできるのだとか。

埼玉とうぶ若者サポートセンターの浜田さん浜田さん:

はい。就労経験のない方はなかなか「働く」ことがイメージできないので、近隣の企業にご協力いただいて職場見学や職場体験も行っています。

だいたい2週間前後の期間で実際に働いてもらうので、仕事内容がリアルに分かります。

中には、職場体験した企業にそのまま採用された方もいらっしゃるんですよ。

 

<実際に体験した利用者の声>

「職場体験を通じて現場スタッフの役に立ち、喜びと達成感を得ました。
仕事に対する苦手意識や不安がありましたが、仕事に対して前向きになれました。
現場スタッフに恵まれて就労の意欲が増しました。」(30代男性)

体験期間:3週間

体験内容:病院・福祉施設向けの寝具・リネン類の洗濯(工場内作業)

 

また、サポステならではの特徴として、就職した後でも相談に来ていただけるという点があります。

 

――それは安心ですね!

埼玉とうぶ若者サポートセンターの浜田さん浜田さん:

「何かあったら相談できる」という場所があるだけでも、気持ちが楽になるのかなと思ってます。

 

――確かに、仕事の悩みを話せる相手がいるのといないのとでは大違いですよね。

私も日々痛感しています。

 

最後に、実際に支援を受けて就職した方のエピソードも教えてもらいました。

 

<モデルケース:Aさんの場合>

Aさんは専門学校を卒業後、専門性を生かした仕事に就職しましたが1年ほどで退職してしまいました。

事務職を希望して就職活動をするもうまくいかず半年ほどが経過。

悩んだ末に、埼玉とうぶ若者サポートステーションへ相談に訪れます。

 

スタッフがなぜ事務職を希望したのかを尋ねると、Aさんは世の中には「営業」と「事務」の2種類の仕事しかないと思い込んでおり、営業よりも事務が向いていると思って求職していたとのこと。

そこでスタッフは、まずは適職診断をして、向いている職業を提示することにしました。

営業と事務以外にも職業の選択肢はあり、視野を広げてほしかったためです。

 

そして、たくさんの仕事があると理解したうえで、Aさんはやはり「事務職がいい」と結論を出しました。

専門学校ではパソコンに触れなかったため、次にAさんが受講したのは「パソコン講座」。

事務職に不可欠なスキルを身に付けた末、事務職で正社員として採用されました!

 

その期間はおよそ3カ月。

就職が決まった時、Aさんは「1人で悩んでる時間がもったいなかった。早くここに来ればよかった」と担当スタッフに話してくれたそうです。

まだまだ知りたい!Q&A

【Q1】人間関係に不安があります。途中で挫折しないか心配です

 

【A1】

初回の面談は、その方の状況や環境を理解するところから始めます。

「つらい」「不安」などの気持ちに寄り添い、相談者の無理のない形で最善の方法を探るのでご安心ください。

 

 

【Q2】正社員でも可能性はありますか?

 

 

【A2】

もちろん可能性はあります。

ただし、来られる方の状況によっては、アルバイトで仕事の経験を積み、徐々にステップアップしていくこともお勧めしています。

ですが、前述したとおり相談者の希望を頭ごなしに否定することはありません。

面談を通じて「なぜ正社員なのか」というところもじっくりと話し合い、1人1人にマッチしたプランを考えていきます。

 

 

 

【Q3】採用されるまでどんなペースで通えばいいですか?

 

 

【A3】

人によってさまざまですが、だいたい3カ月~6カ月程度です。

相談は週に1~2回で、講座を受ける場合はさらに週に1回来所される方が多いですよ。

聞き上手の相談員が待ってます!

学生時代に人間関係に悩んだり、仕事をする中で嫌な思いをしたり…。

そんなことが原因で、自信が持てず、なかなか一歩踏み出せない若者たち。

彼らにとって、自分の胸の内や心に渦巻くモヤモヤを親身に聞いてくれる人がいるだけでも救われるような気持ちになるのではないでしょうか。

 

実親や身内に悩みを打ち明けるのはちょっと抵抗があるという場合でも、こういった支援機関で専門家を相手にならば、話しやすいということもありそうです。

 

取材時に印象的だったのが、コミュニケーションが苦手な人でも優しく受け止めてくれる浜田さんの温かな人柄。

「雑談をするような感覚で、まずは気軽に来てほしい」ということを、何度も繰り返しお話くださいました。

 

(左・理事長の須田彰さん、右・浜田広平さん)

 

埼玉とうぶ若者サポートステーション

予約・問い合わせ/048₋741₋6583

相談の予約は、電話またはHPの問い合わせフォームから


【春日部事務所】

住所/埼玉県春日部市粕壁東1-19-14 ホワイトストーンハイツ1階

開所時間/10時~17時

開所日/月曜~金曜、第2・第4土曜

 

【越谷相談所】

住所/埼玉県越谷市南越谷1₋2876₋1 越谷サンシティ1階

開所時間/午前10時~午後5時

開所日/月・火・水・木曜(その他の曜日についても対応可能)