あっという間に今年もあとわずか。
年始といえばの「おせち料理」、みなさんはどうしていますか?
今は市販のものも充実しているし、品数が多くとにかく手間がかかるおせちを作るのは敬遠したくなりますよね。
でもせっかくのお正月。子どもたちに伝統行事を伝えるためにも手作りおせちに挑戦してみませんか?
時間がない、料理が苦手…という人でもノープロブレム!
千葉県習志野市の「おはしのくに」主宰の廣瀬夏子さんに、時間のやりくり方法や子どもウケするおせちメニュー、詰め方や盛り付け方のコツについてお話をお聞きしました。
ここ数年トレンドの「ワンプレート」の盛り付け方も紹介!

廣瀬夏子さん
《プロフィール》
食育アドバイザー、野菜ソムリエ、アスリートフードマイスター、調理師。
学生時代旅した東南アジアの食文化に影響を受け、帰国後味澤ペンシーの下でタイ料理の基礎から応用まで習得。
産後自身のアレルギー体質が悪化し、仕事復帰後も度々体調を崩していた事から、食生活を一から見直すため日本料理を本格的に学び、以降食のスタイルが和食中心に。
小4・小2の二児のママ。
おせちアイデアとコツ
メニュー構成のコツ
廣瀬さんのおせち作りのコンセプトは「無理をしない」。
「実家の母がずっとおせちを手作りしてくれていたこともあり、結婚してから毎年おせちは作っています。
ただ、すべての品をきちんとまじめに作るのは大変。ほどよく手を抜くのが毎年続けるポイントです」と廣瀬さん。
廣瀬さんがおせちに必ず入れるのは「黒豆」「数の子」「田作り」の祝い肴三種(三つ肴)。
その他の品は、自分が食べたいものや時間の余裕を鑑みて決めていくそう。
「日本では奇数が縁起のよいものとされているので、おせちの品数も奇数になるよう気を付けています。
我が家は、だいたい9品か11品くらいが多いですね」(廣瀬さん)。
廣瀬さんが三つ肴以外によく作るのは、伊達巻や栗きんとん、お煮しめ。
伊達巻はミキサーを使って簡単に、栗きんとんもさつまいもの分量を多めに、生クリームなどを加えて「スイートポテト風」に仕上げるそう。
黒豆と数の子だけは3~4日前から仕込みを始めますが、それ以外は30日に買い物をして、31日の大晦日に大掃除の合間を縫って作っていきます。
Point
1.祝い肴三種(黒豆、数の子、田作り)は必ず入れる
2.おせちの品数は縁起がよいとされる「奇数」で
3.黒豆と数の子以外は大晦日の1日で作る!
子どもが手を伸ばすコツ
せっかく作ったおせち、子どもにも食べてほしいですよね。
廣瀬さんが気をつけていることはまず味付け。
味が濃いと少しの量で飽きてしまうので、甘すぎず、濃すぎない味付けを心掛け、調味料は控えめにだしを利かせた薄味に仕上げているそう。
また、メニューにも一工夫。
「『ザ・おせち』だと子供も手を伸ばしづらいので、中華風、洋風のメニューも積極的に取り入れています」。
おせちに欠かせない海老は、鬼殻焼きにするよりも「海老チリ」や「海老マヨネーズ」に、タコやブリも焼いたり酢締めにするよりも唐揚げにした方が子どもウケします。
また、お煮しめの炒め油をゴマ油に変えてショウガやニンニクを加えて中華風の味付けにする年も。
年末になると限られた食材しか手に入らないことも多いので、調理法や味付けでバリエーションを出すのがコツとのことです。
廣瀬家の洋風メニューの定番は「生ハム&クリームチーズ」。
クリームチーズを芯にして生ハムをくるくると巻くだけで華やかな一品に。
ライスペーパーがあれば、残り物の野菜と一緒に生春巻きにしても◎。
祝い肴三種の田作りはくるみと一緒に甘く炊いて、つまみやすく。
この田作りは廣瀬さんの上のお子さんも大好きでパクパク食べてくれるそうですよ!
また、王道ですが子どもも好きなローストビーフやチャーシューを入れるのもオススメ。
廣瀬さんはなるべく手作りしますが、もちろん市販のものを利用してもOKとのことです。
Point
1.味付けは甘すぎず濃すぎず
2.和風にこだわらず、中華味やマヨネーズ味も取り入れる
3.田作りはくるみを加えて食べやすく
挫折しないためのコツ
廣瀬さんがおせちを作るのは毎年12月31日。
おせちを作る合間に大掃除もこなすというから驚きです!
ポイントは前日までに「メニューを決めてタイムスケジュールを立てておくこと」。
朝6時30分からおせち作りをスタートし、17時には完成することを目標にしているそう。
そのためにはまず、タイムスケジュールが重要。
メモ用紙などに横軸にメニュー名、縦軸に各メニューの工程を箇条書きにします。
メニューごとにやることを書き出したら、今度は全体を見て取り掛かる順番を考えます。
例えば乾物を戻す、煮物を煮るなど時間がかかる工程は朝一番に、焼く・揚げる・和えるなどサッとできる工程は午後にまわす…など。

(その場でササッと書いていただいたメモ)
普段作り慣れていない品ばかりのおせち料理。
ともすると初心者は「いつまで経っても作り終わらない!」という事態に陥ってしまいます。
「伊達巻は焼いて終わりではなく、巻いたあとに形をなじませる時間が必要だったり…。工程はシンプルでも時間がかかるメニューも多いんです。
そのうえ、何品も並行して作るので、実際に行う作業を書き出すことが肝心。
そうすることで頭の中が整理されてムダなく動けますよ」と廣瀬さんが話すとおり、事前にシミュレーションしておけば途中でイヤになってしまうという事態も防げるんですね!
また、本来なら食材ごとに別々に煮る「お煮しめ」は、時短と割り切って一度にわっと煮てしまいます。
「筑前煮風…というか、完全に筑前煮ですね(笑)。もちろん、面倒な飾り切りも極力しません。
せいぜい(気が向いたら)ニンジンを梅の型にくりぬく程度です」。

とにかく、疲れないように楽しく新年を迎えるために、「ほどよく手を抜きつつ、時には出来合いのものを使いながら」が重要なのだと教えてくれました!
Point
1.やることをすべて書き出して整理しておく
2.出来合いのものもほどほどに取り入れる
3.飾り切りなどは出来る範囲でOK
ワンプレートおせちの盛り付けテク
おせちといえば重箱に詰めるものですが、最近では1人分をお皿に盛り付けたワンプレートスタイルも人気です。

食器は白でも黒でも、長方形でもオーバル型でも、リム付きでも何でもOK。
ただ、盛り付けたときに「余白」がある方がキレイなので大きめのものを選ぶのが正解です。
また、単に料理を乗せていくだけだと「のっぺり」とした感じになってしまいイマイチな見た目に。
コツは…
1.小皿を組み合わせること
2.「あしらい」を添えること
3.高さのあるものは奥にするなど高低差を付けること
小皿には汁気があるものやバラバラになりやすいもの(黒豆やなますなど)を盛り付けます。
また、ぜひ取り入れたいのが「あしらい」。
「お正月らしい『あしらい』(葉や実などの飾り)があるとグッと華やかになりお料理も引き立つのでぜひ。お花屋さんなどで入手可能です」と廣瀬さん。
一般的に、大きな葉の「バラン」、鏡餅などにも飾られる「ウラジロ」、赤い実が鮮やかな「万両」などが定番。
葉を料理の下に置いて、小皿のように使うのもよし!

(ウラジロ)
ただ「あしらい」を添えるだけでワンランク上のおせちになります。
伊達巻やかまぼこなどの自立するものは奥に配置。
焼き魚などの高さのないものは、小皿の淵にもたせかけるなどして少し高さを出し、バランスを整えましょう。
「1品1品の間を空けず、ぎゅっと中央に寄せるように盛ること、お皿の淵ギリギリまで盛らないことを意識すると、かっこいい雰囲気になりますよ」(廣瀬さん)。
こうやって1人前ずつ盛り付けると、同じおせちでも重箱に詰めたときとはまた違った気持ちで食べられますね。
重箱への詰め方
意外と難しいのが重箱の詰め方。
重箱は「一の重」「二の重」「三の重」「与の重」の四段が基本です。
・「一の重」には「祝いの肴」
・「二の重」には「焼き物」
・「三の重」には「お煮しめ」
・「与の重」には「酢の物・和え物」
を入れるのがしきたり。
バランなどの葉を入れる場合、はじめにお重に敷いておきましょう。
「『一の重』は、中央の黒豆から入れます。
正式には、2等分にして中をくり抜いた柚子を器にするのですが手間なので、小鉢で代用しちゃいましょう」と廣瀬さん。
祝い肴三種の他、伊達巻やかまぼこ、数の子などを「一の重」に。
センターを黒豆で固めたら、端からかまぼこや伊達巻などを隙間なく詰めていくとキレイに入ります。
次に「二の重」は火が通っているものを入れるのが原則。
洋風メニューや海老チリ、タコの唐揚げなどもこの段に。
「与の重」にはなますや菊花蕪、たたきごぼうなど。
「二の重」や「与の重」は入れる品目が多いので、ごちゃごちゃとしてしまうようなら、仕切りのついた重箱やおかずカップなどを使うのも手です。
「ただ、四段分のおせちを作るのは結構ハードルが高いので、三段あれば十分だと思います。
わが家の場合は大きめのお重を用意して、一段分にその日に食べる分を詰めて出し、お煮しめはお皿に盛ってしまいます」と廣瀬さんが話すとおり、しきたりはしきたりとして知っておいて、各家庭でやりやすい方法を取るのが一番かもしれません。
POINT
1.「一の重」のセンターには黒豆
2.おかずカップや小鉢を上手に使って
3.大きめのお重一段に全て詰めるのもアリ
覚えておきたい定番おせちレシピ
廣瀬さんも必ず作る基本の3品
「祝の肴三種」
代表的なおせちといえばこの「黒豆」「数の子」「田作り」。
黒豆や数の子は時間こそかかりますが、どの品も工程はシンプルでとっても簡単。
まずはこの三品から手作りおせちにトライしてみませんか?

黒豆
<材料> |
黒豆 …… 300g |
黒豆を戻したときの水……200cc~ |
砂糖 …… 300g |
醤油 …… 小さじ1 |
<作り方>
(1) 黒豆はたっぷりの水に一晩浸して戻す。
(2) 鍋に黒豆、戻した水、半量の砂糖、鉄くぎを入れて火にかける。
沸騰してきたらあくを取り、弱火にして4~5時間煮る。
※落とし蓋をして軽く煮えばなが立つくらいの火加減にする
(3)翌日、残りの砂糖と醤油を入れて再び火にかける。
やわらかくなるまで、7~8時間煮る。
※鉄くぎは光沢を出すために使用するので、鉄くぎがなければ鉄の鍋や中華鍋で煮てもOK。
入れなくても味に問題はありません。
田作り
<材料> |
ごまめ …… 10g |
くるみ …… 10g |
白ごま …… 小さじ1 |
【調味料】 |
・砂糖 …… 小さじ2 |
・みりん …… 小さじ1 |
・醤油 …… 小さじ1 |
・水 …… 大さじ1 |
<作り方>
(1)ごまめとくるみはフライパンで乾煎りして、一度取り出す。
(2)同じフライパンに、【調味料】を入れて沸騰させる。
(3)煮汁が煮詰まる寸前で(1)を一気に加えて手早くからめ、白ごまを加えたら火を止める。
数の子
<材料> |
数の子(塩漬け) …… 4本 |
だし …… 200g |
みりん …… 大さじ2 |
薄口醤油 …… 大さじ2 |
<作り方>
(1) 数の子は水に漬けて一晩塩抜きする。
味見をして軽く塩が残っている程度で水を切る。
(2)だし、みりん、薄口醤油を合わせてひと煮立ちさせ冷ましておく。
(3)(1)の数の子を(2)の漬け汁に漬ける。(2~3日後が食べごろ)
余ったおせちの
アレンジアイデア
アレンジアイデア
おせちに飽きた!そんなときのアレンジアイデアも教えてもらいました。
●お煮しめ…具材をみじん切りにして、コロッケの具材に。
また、細かく刻んで炊き上がったごはんと合わせて「混ぜごはん」にしても。
●なます…オリーブオイルとマヨネーズで和えて、コールスロー風にアレンジ。
ゴマ油で和えればナムル風になるので、そのままでもビビンバの具としても活用できます。
●黒豆…マフィンなどの焼き菓子や手作りパンの生地に入れて焼くと美味!
●伊達巻…バターでソテーしてフレンチトースト風のおやつに。
もしくは薄く切って冷凍しておいて、卵焼きの代わりにお弁当のおかずに。
おせちの基礎知識
おせち料理を食べる際は、おせちの由来も子どもたちに伝えたいもの。
基本の知識も押さえておきましょう。
おせち料理の意味
「おせち」とは「節供(せちく)料理」の略称です。
節供料理とは五節句(「人日(1月7日)」「上巳(3月23日)/ひな祭り」「端午(5月5日)/子どもの日」「七夕(7月7日)」「重陽(9月9日)」)に食べられる神様へお供えする料理のこと。
やがて、時代の変化とともにお正月に食べる料理のみを「おせち」と呼ぶようになったといわれています。
おせちのメニューにはそれぞれ意味があることもよく知られています。
祝い肴三種を例に挙げると…
「黒豆」は「マメに働きマメに暮らす」、「田作り」は「五穀豊穣」、「数の子」は「子孫繁栄」を表しています。
「栗きんとん」は「財産」、「海老」は「長寿」、「昆布巻き」は「よろこぶ」などなど、1品1品の由来を、なんとなく子どもに話しながらおせちを頂くのもお正月の楽しみ方の一つ。
「子どもに意味を教えてもすぐに忘れちゃいますが、毎年話し続けることで、伝統行事を次世代に伝えられるのではないかと思っています。
好き嫌いはもちろんありますが、うちでは毎年『一口ずつでもいいから全品食べてね』と薦めています」。
廣瀬さんがお母さまの影響で今でも毎年おせち作りを欠かさないように、廣瀬さんのお子さんたちも、ママの手作りおせちを通じて自然とお正月の風習を覚えていくのかもしれません。
