2019年10月増税決定!  増税前と後でマイホーム購入はどう変わる?

2018年10月15日に安倍首相から正式に発表された消費税10%へのアップ。

マイホームを現在検討中の人は、2019年10月の増税を前に気持ちが焦っているかもしれません。

実は住宅を購入する際には、購入者の負担を軽減するために住宅ローン利用者を対象とした補助制度が用意されています。

増税後には拡充する制度もあり!

それでは一体、家を買うなら増税前と後でどちらがお得なの? ファイナンシャルプランナーの武田明日香さんにお話を伺いました。

公開 2018/10/31

編集部 モティ

編集部 モティ

編集/ライター。千葉市生まれ、千葉市在住。甘い物とパンと漫画が大好き。土偶を愛でてます。私生活では5歳違いの姉妹育児に奮闘中。★Twitter★ https://twitter.com/NHeRl8rwLT1PRLB

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まずはチェック!マイホーム購入、いつまで8%?

もしも増税前に住宅購入をしたい場合、いつまでに契約をすればいいのでしょう?

建売住宅と注文住宅とでそのタイミングは変わります。

 

【建売の場合】

建物の引渡し時の税率が適用されます。

・2019年9月30日以前の引渡しなら「8%」

・2019年10月1日以降の引渡しなら「10%」

 

【注文住宅の場合】

契約締結の時期と引渡しの時期によって税率が変わります。

・2019年3月31日以前に工事会社と「建築請負契約」を結ぶと「8%」

※引渡しが10月1日以降でも「8%」が適用されます。

・2019年4月1日以降に工事会社と「建築請負契約」を結ぶと「10%」

※2019年9月30日以前に引渡しができれば「8%」が適用されます。

 

 

 

2019年3月末には増税前の駆け込み需要が予想されるため、人出や資材が不足し、工期の遅れが生じる可能性も。

短納期での工事はトラブルが起こるケースも多いので、余裕を持ったスケジューリングが必要です。

増税前と増税後で恩恵を比較! 「負担軽減制度」利用シミュレーション

話を聞いたのは…

株式会社エフピーウーマン
ファイナンシャルプランナー キャリア・デベロップメント・アドバイザー

武田明日香さん

■プロフィール

2013年にファイナンシャルプランナーとなり、女性が豊かな人生を送るための知識を伝えるべく活動中。
「お金の体質改善マンツーマントレーニング(jfa.ac/fpw)」のマネートレーナー。

住宅ローン減税とすまい給付金

消費税が5%から8%に上がる直前には駆け込み消費が集中し、増税後に景気が冷え込みました。

金額の大きい住宅は特に影響力大。

そこで政府は増税後の住宅購入を後押しする制度を設けています。

 

そのひとつが「住宅ローン減税」で、住宅ローン残高の1%を10年間所得税から控除する制度。

初年度は確定申告が必要ですが、翌年以降は年末調整だけでOKです。

 

【住宅ローン減税】

・年末ローン残高の1%を上限として、10年間所得税を控除

・消費税が8%から10%に上がっても変更なし(2018年10月末現在)

・受けるには、所得金額3,000万円以下、10年以上借入などの条件あり

・最大控除額は400万円(長期優良住宅の場合、500万円)

・所得税で控除しきれない分は、住民税からも一部控除

 

ただしこの「住宅ローン減税」は所得が低いと恩恵が限られる仕組み。

それを補う制度が、「すまい給付金」で、年収が低いほど支給額もアップします。

しかも消費税が10%になると、適用条件が緩和されることが決定しています!!

すまい給付金

消費税 年収
8% 425万円以下 425万超~ 475万円以下 475万超~ 510万円以下
10% 450万円以下 450万超~ 525万円以下 525万超~ 600万円以下 600万超~ 675万円以下 675万超~ 775万円以下
給付基礎額 50万円 40万円 30万円 20万円 10万円

※給付は一度限り

 

これまで年収510万円以下の世帯が対象だった「すまい給付金」ですが、増税のタイミングで年収510万円以上775万円以下の世帯も給付対象に。

特に増税前は支給額がゼロの年収510万円前後の人にとっては、増税後には支給額40万円と大きな恩恵がありそうです。

(給付対象は、消費税引き上げ後の10%が適用された住宅を購入した場合)

とはいえ、建物にかかる消費税が2%上がれば相当な金額になります。やはり増税前に買った方が得では? 

実際どうなのか、2つの家族モデルを使って、おおよその金額を見てみましょう。

(※①②③すべて金利1.5%固定、借入期間35年で設定 ※所得税額、住民税額を算出し、今後10年間一定として計算)

 

8%時と10%時の負担増減をシミュレーション

※シミュレーションはあくまで目安です。

 

【モデル① 住宅購入を考える標準的な家庭】

世帯収入 夫550万円 家族構成 夫35歳(会社員) 妻35歳(専業主婦) 子 4歳、2歳
物件価格 4,000万円(うち建物1,500万円)
借入金 3,500万円
 
  消費税率 8% 10%
(A)負担減 すまい給付金支給額 0 30万円
住宅ローン控除額(10年合計) 267.5万円 267.5万円
(B)負担増 建物代(1,500万円)に かかる税金が2%UP 30万円
(A)-(B) 恩恵額合計 – 増税による負担額 267.5万円 267.5万円
結果 増税後に購入しても変わらず

 

消費税8%時に対象外だったすまい給付金が10%時に30万円支給されます。
増税で建物代に支払う金額も2%(30万円)増えますが、それを差し引いてもプラスマイナスゼロ。

【モデル② ①より年収・借入が少ない家庭】

 

世帯収入 夫450万円 家族構成 夫37歳(会社員) 妻35歳(専業主婦) 子 4歳、2歳
物件価格 2,500万円(うち建物1,000万円)
借入金 2,300万円
 
  消費税率 8% 10%
(A)負担減 すまい給付金支給額 20万円 50万円
住宅ローン控除額(10年合計) 200.6万円 200.6万円
(B)負担増 建物代(1,000万円)に かかる税金が2%UP 20万円
(A)-(B) 恩恵額合計 – 増税による負担額 220.6万円 230.6万円
結果 増税後に購入すると10万円プラス

 

制度による恩恵が増税分の負担を上回り、10万円プラスになります。

【モデル③ 長期優良住宅購入、高額所得層】

 

世帯収入 夫900万円 家族構成 夫37歳(会社員) 妻35歳(専業主婦) 子 4歳、2歳
物件価格 4,000万円(うち建物1,500万円)
借入金 3,500万円
 
  消費税率 8% 10%
(A)負担減 すまい給付金支給額 0万円 0万円
住宅ローン控除額(10年合計) 305.8万円 305.8万円
(B)負担増 建物代(1,500万円)に かかる税金が2%UP 30万円
(A)-(B) 恩恵額合計 – 増税による負担額 305.8万円 275.8万円
結果 増税後に購入すると30万円マイナス

すまい給付金の支給なし。
単純に建物価格の増税分(30万円)のみ負担が増える。

 

恩恵の度合いは年収や借入金額など諸条件によって変動します。

国土交通省のすまい給付金のサイトに、給付金額や控除額を簡単に算出できるページがあるので、利用してみては?

【すまい給付金シミュレーションはこちら】

 

シミュレーションの結果「やはり増税前に買いたい」と思うなら、実施予定まで1年を切った今、早めに検討を。

物件を見に行く前には、返済できる額や今後のライフプランなどを確認して臨みましょう。

ノープランで物件を見ると「欲しい」という気持ちが冷静な判断を狂わせがち。

住居費は手取り収入の25%以内に抑えるなど最低限の予算感を持った上で、制度利用の損得はプラスα程度に考えておきましょう。

住宅ローンを組むときの注意点

モデルハウスなどに出掛けて実際にステキなおうちを目の当たりにすると、予算オーバーでも「一生に一度の買い物。頑張ればいいか」と考えてしまうもの。

見学前にある程度の予算感を持っておけば無理な買い物をしなくて済みます。

住宅ローン額を算出する際には、まず「借りられる額」と「返せる額」は違うということを念頭に置きましょう。

例えばフラット35だと年収の35%までが借入可能ですが、このときの「年収」とは、社会保険料などが引かれる前の金額です。

借入金額を決める際には、手取りベースで考えること、月々の返済額が現在の生活レベルで無理なく返せるものであることが重要。

例えば、いま支払っている家賃を負担に感じていないのなら、その金額を月々の返済額の目安にするのも一つです。

見落としがちなメンテナンス費用についても考えておきましょう。

戸建ての場合、水回りや外壁などだいたい10年単位で何かしらのメンテナンスが発生しますが、持ち家は賃貸と違って自分自身でメンテナンス費を用意しなくてはなりません。

1回のメンテナンスに掛かる費用を100~200万円と考えて、月々1~2万円は積み立てしておきたいところ。

 

ですので、例えば現在の家賃が8万円なら…

月々の返済額…7万円/メンテナンス費用の積み立て貯金…1万円

と考えれば、無理のない借入額が見えてきます。

 

また、住宅購入のために積み立てている貯金があるなら、住宅購入後も貯金を続けてメンテナンスに充てる…という方法もあります。

住宅ローンの返済期間は、なるべく長く取って月々の負担額を少なくするのが定石ですが、基本的には定年(65歳前後)までに支払いが終わる期間で設定すること。

返済完了時の年齢が65歳を超えてしまうようなら、定年からその年齢までの間の返済をどうするのか…相続の予定があるのか、退職金を充てるのか、ある程度の見通しをつけておきましょう。

ちなみにこのご時勢、ボーナスはないものとして返済プランを立てるのが安心です。

 

低金利はいつまで? 変動金利、固定金利はどちらを選ぶ?

長らく続いている「超低金利時代」ですが、2018年10月にフラット35の金利が0.05%引き上げられ、少しずつ上昇傾向にあります。

それでも変動金利は各社1%を切り、まだまだ低い水準といえます。

最初は変動金利を選んでおいて推移をマメに確認し、金利が上昇してきたら固定金利に変更するのが理想のかたち。

この低金利がいつまでも続くと考えず、返済プランを立てる際には仮に金利が上昇した場合でも家計で吸収できるかどうか、きっちりシミュレーションしておくと安心です。

 

「頭金ゼロ」本当にOK?

最近よく耳にする「頭金ゼロでの住宅購入」ですが、こちらも注意が必要。

一戸建てやマンションに関わらず、新築物件は「新築プレミアム」といって約1~2割上乗せされています。そのため、1日でも人が住んだ時点で価値が1~2割下がるといわれています。

万が一、家を手放さなくてはならない状況になった際、「頭金ゼロ」だと家を売却しても負債が残るリスクが高くなります。

できれば、物件価格の1~2割でも頭金を確保してからマイホーム購入の検討を始めましょう。

 

「増税」にとらわれすぎないのも大切!

過去の増税時には、増税前に高騰した物件価格が増税後の需要の冷え込みを受けて下落する…というケースも見受けられました。

増税前は、メーカー側も強気なので価格交渉がしづらい、契約を急がされる…などのデメリットもあります。

「なにがなんでも税率8%で手に入れる!」と息巻くのではなく、現在の家計の状況を踏まえた上で賢い選択をするのがベスト。

焦らず、家族でじっくり話し合いながら理想のマイホームを探しましょう!

 
 
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