つまみ細工の作り方【動画あり】かんざしや髪飾りもハンドメイドで
江戸時代から伝わる伝統工芸の「つまみ細工」は、ハンドメイド好きから注目を集める手芸趣味のひとつ。
見た目のかわいさはもちろん、「羽二重」や「ちりめん」など使用する生地素材やパーツの組み合わせによってアレンジの幅が広いのが人気の秘密です。
「つまみ細工をメジャーなカルチャーにしたい」と考え、その魅力を発信する「つまみ堂」(東京都台東区)におじゃまして、つまみ細工の世界に触れてきました!
公開 2018/10/05(最終更新 2023/03/02)
編集部 モティ
編集/ライター。千葉市生まれ、千葉市在住。甘い物とパンと漫画が大好き。土偶を愛でてます。私生活では5歳違いの姉妹育児に奮闘中。★Twitter★ https://twitter.com/NHeRl8rwLT1PRLB
記事一覧へ目次
つまみ細工とは
正方形の「羽二重」(絹)を折ってパーツを作り、それらを組み合わせ花などを形成する技法のこと。
江戸時代から伝わる東京都指定の伝統工芸で、舞妓さんのかんざしなどに使われてきました。
最近では、七五三や成人式、和装ブライダルのヘアアクセサリーとして、その魅力が見直されてきています。
また、ハンドメイドの趣味としても人気が高く、子どもの七五三のために手作りするママも増えてきているそう。
つまみ細工は大きく分けて2種類
花弁の角を丸く、ふっくらと仕上げる技法「丸つまみ」。
花弁の角を細くとがった形に仕上げる技法「剣つまみ」。
この2種類のパーツを組み合わせて、さまざまなモチーフを成型していきます。
つまみ細工作りに挑戦! ~材料・道具編~
取材に伺った東京・浅草橋にあるつまみ細工専門店「つまみ堂」では、つまみ細工の材料の販売をはじめ、つまみ細工を用いた髪飾りなどのアクセサリー販売(既製品・オーダーメイド)を行っています。
さらに、つまみ細工の体験や講座も実施。
今回は、「2wayブローチ」の制作に挑戦させていただきました。
教えてくださるのはスタッフの山下知美さん。もともと海外の方に日本の文化を伝えるお仕事をされていて、そのつながりでつまみ細工を始めることになったそう。
まずはつまみ細工に必要な材料と道具について。
<材料と道具>
・ピンセット(2種類)
・でんぷんのり
・工作用接着剤
・のり板
・布(一越ちりめん)
※今回は、3cm四方のもの5枚と2.5cm四方のもの4枚を使用
・台紙用の厚紙(大小1枚ずつ)
・布巾またはタオル(濡らして固く絞っておく)
ピンセットは「布をつまむ用」と「パーツを乗せる用」の2種類を用意。
布用のピンセットは柄が長いものだとスムーズにつまめます。
また、布がひっかかったりしないように、先端がなめらかでしっかりとかみ合うものが最適。
生地はレーヨン素材の「一越ちりめん」。
職人さんは「羽二重」で作ることが多いのですが、趣味として楽しむなら価格も手ごろで扱いやすい「一越ちりめん」がおすすめとのこと。
同じちりめん生地でも、厚みがある「鬼ちりめん」は折りにくいので慣れないうちは避けた方が無難です。
また、はさみでカットするとうまく切れないので、「つまみ堂」では金定規とロールカッターを使っているそうです。
初心者はあらかじめカットされているものを選ぶといいかもしれません。
そして最大のポイントはのり。
「つまみ細工には専用のでんぷんのりを用いるのが伝統的な手法なんです。
つまみ用のでんぷんのりは、他ののりなどと比べて水分量が少なく、のり自体が『どっしり』としています。
布を折って、のりに入れるときでも安定しやすいですし、乾くのに時間がかかるので、葺く(ふく)ときにもバランスを見ながら整えることができるんですよ」と山下さん。
「葺く」とは、成型した布をのり板に並べたり、台紙に乗せたりすること。
その様子が屋根を葺くのに似ているため、つまみ細工でも「葺く」という言葉を使うそうです。
でんぷんのりは、使う前に練ってなめらかにやわらかくします。
「ここは時間をかけてしっかり練るのがコツ。
へらを板と平行にして、すりつぶすようにするといいですよ」と教えてくれました!
台紙はどうする?
花弁を並べていく台紙は、厚紙を好みのサイズに丸く切りぬき、白いちりめんで包みます。
一回り大きい正方形のちりめんを重ねて、四つ角を落として八角形にしたのち、辺の中央部分に1箇所ずつ切れ目を入れましょう。
切れ目が入ったら、厚紙に工作用接着剤を塗って、ちりめんを包むように貼り付けていきます。
それでは、いよいよ「つまみ」にとりかかります!
つまみ細工作りに挑戦! ~実践編~
今回は、花弁5枚でお花を作り、横に花弁と葉を2枚ずつ添えます。
花弁の色をそれぞれ変える場合は、「あらかじめ完成したときの配色をイメージしておくと失敗しづらい」とのことでまず配置を決めました。
「つまみ細工」の作り方はとてもシンプル。
まずは丸つまみの作り方を教えていただきました。
丸つまみの作り方
写真でおさらい。
まず布用のピンセットを手に持ちます。
ピンセットは下からえんぴつ持ち。なるべく下の方を持つのがコツです!
ちりめんを1枚ピンセットでつまみ、角が上に向くように持ちます。
下の角と上の角を合わせて三角形を作ります。
合わせた角が左にくるよう横向きにして、左の角より少し上にピンセットを入れます。
手前に折ってさらに三角形を半分の大きさに。
左手の親指と人差し指で布をしっかり押さえながら、右からピンセットを入れて、三角形を二等分するように、中央部分を挟みます。
布を人指し指の腹の上に乗せて、両端を持ち上げます。
左手の人差し指と親指で布を押さえながらピンセットをそっと抜きます。
3つの辺の高さがそろっていればOK。
※ここで中央の角が高い場合は、中央の山を挟むようにピンセットを入れて、上に少し引き出しましょう。
中央の山を2ミリほどピンセットでつまみ、外側に引いて高さを出します。
下の方をピンセットで挟み直し、のり板の上にストンと置きます。
ピンセットを布巾やタオルで拭いてから、高さを出した部分をグッと前にひと押しするとキレイな仕上がりに。
ちりめんは水分を吸いすぎると縮んでしまう性質があるため、ピンセットは1回1回しっかり拭くのも大切です。
これらの工程を枚数分繰り返し、そのまま15~20分置いて、布にのりをしっかり吸収させます。
剣つまみの作り方
剣つまみも、まずは丸つまみと同様に2回三角形に折ります。
丸つまみと違うのは3回目以降の折り方。
3回目も単純にピンセットではさんだ状態で半分に折り、正方形を四等分した三角形を作ります。
その後、左手の親指と人差し指で押さえながら右からピンセットを入れます。
そのピンセットを下に向かってパチンとはじいて、先端をしならせます。
布の折り方は丸つまみより簡単ですが、この「はじく」のが少し難易度高め。
ビギナーはまず丸つまみからマスターするのがよさそうです。
花弁にのりがしっかり吸収したら、今度は台紙に「葺いて」いきます。
足の右側をピンセットでつまんで取ります。
はじめに考えた配置の順番に、台紙に乗せていきます。
「ここでバランスが悪くても後で修正できるので大丈夫です。
とりあえず5枚の花弁を全部乗せてから調整していきましょう」と山下さん。
すべての花弁を乗せたらピンセットを使ってバランスを整えます。
最後にパーツ用のピンセットで花芯(パール)を取り、接着剤を付けて中心に乗せれば完成です!
「台紙に葺いていく段階で、中心がずれちゃった、花弁のバランスが悪い…などという場合でも乾燥が遅いでんぷんのりなら、いくらか調整がききます。
そういう意味でもでんぷんのりは便利ですね」(山下さん)。
山下さんにかなりフォローしていただきましたが、不器用な筆者にしては大満足の出来栄えです!
一見難しそうなつまみ細工ですが、慣れてしまえばスイスイ作れそうな予感。
まずは小さいものから挑戦して、だんだんと大作に挑戦していくのがいいかもしれません!
大きな髪飾りを作るなら
七五三などに使うなら、ある程度のボリュームと華やかさが必要。
その場合は、台紙をワイヤー付きのものにします。
専用のものを購入してもいいですが、自分で作ることも可能です。その場合は、ちりめん生地で包んだ台紙に穴を開けて、ワイヤーを通します。
あとは、同じように布を葺いていき、花を1輪ずつ作っていきます。
のりを乾かす際には、発泡スチロールや段ボールなどに差して立てておくこと。
そうして小さな花をいくつか作ったら、ワイヤーや絹糸などで仕上げたい形に束ね、コームやUピンなどにくくりつけます。
つまみ堂について
今回、つまみ細工の作り方を教えていただいた「つまみ堂」。
日本随一の品ぞろえを誇るつまみ細工専門店ということで、ここに来れば羽二重や一越ちりめんといった布(正方形にカット済み)、ワイヤー付きの台紙、専用のでんぷんのりなど、つまみ細工を作るのに必要な材料を一度にそろえることができます。
また、ハンドメイドの材料だけでなく、髪飾りを中心とした既製品の販売も行っています。
中でも好評なのがオーダーメイド。
店頭に並ぶパーツ「ICHIRIN」を組み合わせて、好みの色や大きさの髪飾りがオーダーできるんです。
価格は大きさや素材により変わりますが、七五三の髪飾りであれば、だいたい5000円から1万円程度が多いそうです。
最短2週間で完成するので、自分で作る時間がない!という人はコチラを利用するのもいいですね。
また、イヤリングやピアス、リングなどのアクセサリーにも対応しているので、お子さんの髪飾りとおそろいでママのアクセサリーをオーダーするのも素敵かも!
~マメ知識 髪飾りの選び方~
着物のときに付ける髪飾りは大きいものと小さいものとが対になっていることが多いそう。
「舞妓さんを思い浮かべてみてください。
左側に垂れ飾りなどが付いた大きな飾りをつけて、右側に小さな飾りを付けていますよね。本来は、そんな風に髪に飾るものなんですよ」(山下さん)
7歳の七五三では、日本髪を結って左右だけでなく正面にもかんざしを挿すことも。
ですが、「3歳だと髪の毛のボリュームがまだないので『1つでいいわ』という方もいますし、最近は洋髪にする方も多いので、みなさん好きなように選ばれています」と教えていただきました。
また、これから「つまみ細工を始めたい」という人に向けた体験メニューや基礎講座も定期的に開催しています。
■つまみ細工体験(予約制)
「一越ちりめん」を材料に、丸つまみと剣つまみの両方が体験できます。
「かんざし」か「2wayブローチ」のいずれかをチョイス!
開催日/火曜~土曜の営業時間内(前日15時までに要予約)
所要時間/90分~120分
料金/3,500円(税込)
■お子様用つまみ細工
5歳から小学生までを対象とした体験メニューで、「パッチンピン」か「マグネット」から選べます。
お子さんを伝統工芸に触れさせたい!という人におすすめ。
開催日/火曜~土曜の営業時間内(前日15時までに要予約)
所要時間/40分~60分
料金/1,000円(税込)
申込み・詳細は公式HPへ
【おまけ】さらに奥深い「つまみ細工」の世界
つまみ細工というと花のモチーフをまず想像しますが、こんなユニークな造形のものもあるんです!
これらは、つまみ堂が所有する貴重な品々。
明治から昭和初期にかけて作られた作品を、戦後復刻したものだそうです。
本当に髪飾りとして使われていたのかは不明とのことですが、職人さんの粋な遊び心が感じられ、眺めているだけでも楽しいですね!
【取材協力】
場所/東京都台東区浅草橋3-20-16
営業時間/11時~18時
定休日/日曜・月曜・祝日
駐車場/なし
アクセス/JR総武線浅草橋駅東口・都営浅草線浅草橋駅A3出口から徒歩7分
電話番号/03-3864-8716