【埼玉県越谷市】本のある蔵 「糀屋」誕生!江戸時代の味噌蔵を再生
歴史ある味噌蔵が、読書やカフェ、ワークショップが楽しめるスペースに再生されて、2020年5月にオープンしました。
屋号はそのまま「糀屋(こうじや)」。
越谷にまた新しい「立ち寄りたくなる場所」が生まれました。
公開 2020/09/11(最終更新 2020/10/08)
目次
はかり屋の「絵本のあるへや」が新装
越谷市内を流れる元荒川「大沢橋」に近い旧日光街道沿いで、江戸時代に味噌醸造・販売を創業した「糀屋」。
その味噌蔵は大正6(1917)年建築と伝えられ、市内最古の洋式建築物と考えられています。
珍しい鉄筋コンクリート造りなので頑丈。
今回の再生工事も、構造体にはほとんど手を付けずに済んだそうです。
生まれ変わった糀屋のメインとなるのは、戸田道子さんの私設文庫「watage(わたげ)」。
糀屋の斜め向かいに2年前にオープンした古民家再生複合施設「はかり屋」で、月曜日だけ開いていた「絵本のあるへや」の移転新装です。
▲木材をふんだんに使った温かみのある空間
本を仲立ちに、人々がつながれる場所
子育て時代には小学校で読み聞かせや、その指導も行ってきた戸田さん。
子育てを終えて「本を仲立ちに人々が集い、学び語らい、つながれる場所を作りたい」と、文庫活動を始めました。
「絵本は子どもだけのものじゃない。大人になって読み直すと、子どもの頃と印象が変わって面白いですよ。親子でも夫婦でもお一人でも、どうぞお気軽に」と笑顔で迎えてくれます。
日替わりカフェやワークショップも
「watage」は日〜火曜の3日間で、水・金曜はそれぞれ別のカフェが営業中です。
日~火曜/午前10時30分~午後6時
水曜/午前11時~午後5時
金曜/午前9時~午後4時
ヨガ、ちりめん細工、サンキャッチャーのワークショップの他に、アナログレコードの鑑賞会や琵琶などの楽器演奏会、作品展示会なども月ごとに開催しています。
詳しくはこちらをチェック!
蔵の再生物語「糀屋」に込められたまちづくりへの思い
歴史を残して今に生かす新しい試み
この味噌蔵の持ち主である都築家は、「歴史ある建物なので残したいが、維持するのが大変」と、越谷市役所に相談。そこから越谷市住まい・まちづくり協議会に話が持ち掛けられました。
この協議会の拠点である「油長内蔵(あぶらちょううちくら」は、ポラスグループ(株)中央住宅が移築再生を手掛けて市に寄贈したものです。
そして糀屋の斜め向かいにある「はかり屋」は、築120年の古民家を再生し、同社が所有。ショップやレストランの複合施設として人気を博しています。
一方、「糀屋」は寄贈でも所有でもない、新しい形を実現しました。
まず同社が蔵を補修します。そしてオーナーの都築家と、はかり屋の運営も手掛ける有志による「一般社団法人越谷テロワール」がリース契約を結び、テロワールがさらに複数の店子とサブリース契約を結ぶというもの。
こうして歴史的価値のある建物が新しい魅力を伴って再生・維持され、人々が集い、つながる場所になることで、町の歴史やまちづくりに関心が高まる好循環が期待できます。
町の原風景を残した新しいまちづくり
私設文庫「watage」の戸田道子さんもテロワールの一員です。
「文庫活動は収益を望めるものではないけれど、この形でなら場所を確保できる。将来自分の店を開きたい人のチャレンジの場所にもなるし、さまざまな人が足を運び、越谷の歴史に触れられる」と、メリットを語ります。
中央住宅の担当者は、
「今回同様『本当は残したいけれど…』と悩まれている方にとって、理想的な打開策になるのでは。その町の原風景を残して再生する、新しいまちづくりの形です」
「いつも以上に多くの地元の方々と関わることができるので、地域密着企業としてとてもやりがいがあります」と話しています。
▲再生事業を担当した(株)中央住宅の池ノ谷さん(右)と関根さん