災害時のこころのケアこころを守る準備もしましょう

普段の日常とはかけ離れた状況となる災害時は、こころにさまざまな負荷がかかり、ストレスフルな状態に。自分自身の、そして身近な人のこころを守るための対処法を教えてもらいました。

臨床心理士の橘先生

公開 2020/08/26

編集部のやまぐち

編集部のやまぐち

編集者&ライター。最近は動画編集にも手をだしています。怖がりだけどホラー映画とホラー系のゲーム実況見るのが好きです。ゾンビはダッシュしない派。

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知らない・分からないが不安や心配に

災害時は予期できないことが多く起こり、日常とはかけ離れた異常な状況下に置かれるため、誰もが精神的ストレスを受けます。その要因としては、災害時の恐怖体験、大切な人や思い出を失う喪失体験、そして助けられなかったという無念などの危機的ストレスが一つ。

それから、ライフラインの課題や避難所での生活、入浴の困難、治療や介護の中断といった生活環境の変化や、新しい環境へ適応しなければならない生活再建に対するストレスも挙げられます。

そのような中で特にストレスを受けやすいといわれているのが、高齢者、子ども、妊産婦、障害者といった、特別な配慮を必要とされる方です。中でも小さなお子さんと高齢者は影響を受けやすく、ストレス反応が大きく出るといわれています。

ただ子どもの場合は、安心感と安全な場所の確保、落ち着いた大人が周囲にいることで安定したこころの状態を取り戻します。また、歯を磨く、顔を洗う、挨拶をするといった日常生活の行動を取ることも安心につながります。

高齢者は、孤立させないこと。それから、安心できる環境を確保し、支援やサービスが途絶えてしまっている場合は行き届くようにすることも大切です。子どもも大人も、知らない・分からないということが不安や心配を大きくするので、状況の説明や欲しい情報を伝えることが重要です。子どもには、年齢に合わせた表現で伝える工夫をしましょう。

 

心のケアのイメージ

時間の経過によって現れる反応

人はストレスを受けると、身体・こころ・行動に現れ、時間の経過とともに反応は変わっていきます。発災直後から数日間の急性期は、心拍や血圧の上昇、呼吸が速くなるなどの身体への反応が見られます。

また、集中力や記憶力の低下、不安や恐怖によるイライラも特徴です。1週間から1カ月くらいを反応期といい、この時期は身体に疲労が蓄積してくるため、だるさや頭痛、腰痛などが出やすくなる他、感覚にも変化が現れ、睡眠障害や抑うつ的になる方もいます。

その後、1カ月半くらいを経過すると修復期に入り、悲しみや寂しさ、不安を感じることはありますが、日常への関心、将来への見通しに目が向けられるようになっていき、混乱した感情が徐々に修復されていきます。

 

もちろん、災害の状況や規模、その方の置かれている環境や性格などによってストレス反応は異なりますが、多くの方は時間とともに回復に向かっていきます。

セルフケアでこころと身体の負荷を和らげる

こころの回復にはセルフケアも欠かせません。睡眠や食事を取る、ストレッチをして身体を動かす、何でもいいので自分なりのリラックス法を行うことで、緊張がほぐれたり、ほっとしたり、こころや身体への負荷が和らぎます。「今は休息時間」と意識をすることがポイントです。

また、下記のストレスチェックは、こころの状態を客観視できるので、併せて行ってみてください。

ストレスチェックリスト

□眠れない

□食欲がない

□不安や恐怖を感じる

□イライラする

□ぼーっとする

□集中できない

□笑っていない

□涙もろくなった

□緊張している

□ちょっとした音に過敏に反応する

□体験した災害現場のことが頭から離れない

※一つでも当てはまったら休息を取りましょう

災害時のこころの状態を知っておく、ケア方法を持っている、そういったストレスに対
して備えておくことが、こころを守る第一歩です。