【千葉県】人々を水不足から救った印旛沼の龍と楽しくも悲しい證誠寺の狸伝説
たくさんの妖怪や伝説の生き物の話が今もなお残されている千葉県。
そんなたくさんの伝説から、印旛沼の龍伝説と證誠寺の狸伝説をご紹介します!
公開 2020/08/14(最終更新 2024/03/16)
編集部 石田祐葵子(いしだゆきこ)
編集/ライター/漫画家/イラストレーター 埼玉県出身、東京都江東区在住です。以前は漫画業界にいました。漫画の師匠は安野モヨコ先生です。『江ノ島高校ワンダーフォーゲル部』で検索!今は「ちいき新聞」編集者。千葉県いいところですね!★Twitter★@LoveMtmoutain
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▲龍角寺(印旛郡栄町龍角寺239)
龍角寺は、和銅2(709)年、天から龍女がやって来て一晩のうちに寺の全ての建物を建てたといわれ、初めは龍閣寺といいました。
奈良時代の天平3(731)年、この年は春からの日照り続きで水不足となり作物は実らず、人々は困窮していました。
聖武天皇は、諸国の神社仏閣に雨乞いの祈願をさせましたが、一向にその効果がありませんでした。
そこで、龍神に由縁のある龍閣寺に雨乞いの祈願を命じました。
龍閣寺の釈命上人(しゃくめいしょうにん)は、大勢の弟子とお経を読み、昼夜を問わずに祈り続けました。
とうとう結願の日、聴衆の中から印旛沼の主と名乗る小龍の化身が現れました。
小龍はお経を読んでもらった代わりに、大龍に命を奪われることを承知の上で、雨乞いの願いを聞き入れました。
「私が雨を降らせれば、この命は奪われるでしょう。この身は三つに裂かれ、印旛沼のほとりに落ちるでしょう。
そうしたら、頭は龍閣寺に、腹は印西の地蔵堂に、尾は匝瑳の大寺に納めてください。
そして、どうか、私のために祈ってください」と言うと、姿が見えなくなり、部厚い黒雲が空を覆いつくし、どっと雨が降り始めました。
田畑の作物は息を吹き返し、人々は歓喜の声を上げました。
雨は七日七晩降り続き、雨が上がると上人たちは印旛沼を訪れました。
小龍の言う通り、小龍の体は三つに裂かれ落ちていました。
約束通り、その体を3カ所に葬りました。人々は龍のために祈りを捧げました。
頭を納めた龍閣寺は「龍角寺」(栄町)に、腹を納めた地蔵堂は「龍腹寺」(印西市)、尾を納めた大寺は「龍尾寺」(匝瑳市)に名を改めました。
※参考資料 龍角寺縁起
▲龍角寺所蔵「小龍の頭部のミイラ」写真提供/栄町役場 産業課
悲しくも楽しい 狸の伝説
▲證誠寺(木更津市富士見2-9-30)
木更津市にある浄土真宗本願寺派證誠寺。
こちらに伝わる伝説「狸囃子」は日本三大狸伝説の一つです。
今でこそ想像もつきませんが、かつて證誠寺の周囲は竹やぶに囲まれ、昼でも暗い狸のすみかだったそうです。
證誠寺の和尚さんを驚かそうと月夜に狸たちが庭に現れ、大狸がおなかを太鼓のようにたたく音に合わせて踊っていました。
和尚さんは驚くどころか一緒に三味線を弾きながら踊っていましたが、4日目の晩に大狸がおなかを破って死んでしまったという、楽しくも悲しいお話です。
その話を聞いた野口雨情が作詞したのが「しょ、しょ、しょうじょうじ〜」の歌詞で知られる「※証城寺の狸囃子」です。
今年は残念ながら中止ですが、毎年10月には地元小学生が狸のメイクと衣装でこの童謡に合わせて歌い踊る「たぬき祭り」が開催されています。
※童謡が「証城寺」表記なのには諸説あります。
(ちいきレポーター・ブルー)