【富津市】地元で守る神秘の洞窟数馬区・岩谷観音堂やぐら群
富津市にある岩谷観音堂やぐら群。
崖の表面に大小14の岩穴が並ぶ神秘的な様子が古代遺跡のようだと、SNSなどで話題を集めています。
公開 2020/08/17(最終更新 2021/06/28)
編集部 モティ
編集/ライター。千葉市生まれ、千葉市在住。甘い物とパンと漫画が大好き。土偶を愛でてます。私生活では5歳違いの姉妹育児に奮闘中。★Twitter★ https://twitter.com/NHeRl8rwLT1PRLB
記事一覧へ岩肌に刻まれた神秘的な仏様
岩穴をのぞくと、壁に掘られた磨崖仏(まがいぶつ)や五輪塔がひっそりとたたずみ、厳かな雰囲気が感じられます。
立体的に掘られたもの、線画で刻まれたものなど、その姿もさまざま。
この岩谷観音堂やぐら群の岩穴は、房総地方に多く見られる古墳時代の横穴墓。壁の磨崖仏は、その穴を利用して奈良時代から鎌倉、江戸にかけて掘られたと考えられています。
誰がいつ掘ったのか不明な点は多いが、奈良時代の高僧・行基が一夜にして完成させたという伝説も残っているそう。
14個ある岩穴のうち、実際に中に入れるのは第二〜第六窟。
見どころは、第二窟に当たるコの字型の廻廊窟です。
備え付けの懐中電灯を手に中に入ると、廻廊の両壁に、ズラリと等間隔に掘られた推定68体の磨崖仏が迎えてくれました。
▲高さ1.8m、幅約1m、奥行き7mの廻廊
常に自然にさらされる磨崖仏は、雨風による風化は避けられません。けれども、第二窟入り口付近に掘られた仁王像は、特にはっきりとした姿を現在に残し、必見なのです。
▲第二窟の仁王像
また、第一窟は、岩の中腹に位置する観音堂(正式名称は大悲山岩谷堂清巌寺)のちょうど裏に位置し、普段は見ることができません。
年に1度、8月10日の「十日参り」のみ、拝観することが可能です。その日はお茶の振る舞いがあり、近隣住人のみなさんにとって特別な日なのだそうですよ。
地域住民から厚く信仰
今回、岩谷観音堂を案内してくれたのは、地元自治会長の鹿嶌長治さん。
▲案内してくれた鹿嶌長治さん
「この辺りは、砂岩が多く、崖崩れ危険地域でもあります。
ですが、元禄、安政、大正と数々の大地震に耐えて、現在に残っているんです。目の前を
流れる湊川から向こうには房州石で有名な鋸山などがあるので、ちょうどこの辺りが境目で、固過ぎず、軟らか過ぎず、岩壁を掘りやすい地質だったのかもしれませんね」と鹿嶌さんは想像します。
古墳時代から、さまざまな時代を経て、長年地域住民に厚く信仰され、第二次世界大戦中には、防空壕として利用されてきた岩谷観音堂。
一巡すると全国の霊場を巡礼したのと同じ御利益が得られるともいわれ、遠方から足を伸ばす人も多くいます。
▲洞窟内にはテーブルセットが置かれ、休憩もできます。
参拝者の増加に伴い、約10年前に手すりを付けるなどの整備も行いました。訪れる人も
また、マナーを守って参拝し、磨崖仏を大切にしてくれているそう。
地域の人の手によって守られる、地域が誇る遺物なのです。
住所/富津市数馬268-3
問い合わせ/0439-80-1291 (富津市役所商工観光課)