若葉区にオープン予定の「千葉ウシノヒロバ」 経験ゼロから酪農の世界へ!
2020年10月、千葉市若葉区に市内で初となる観光牧場「千葉ウシノヒロバ」が誕生するのをご存じですか?
牛とのふれあいはもちろん、オートキャンプやワークショップ体験、牛舎レストランやチーズ工房…など、見どころ満載で新たな人気スポットになりそうな予感。
実はオープンの背景には、日本の酪農の将来を思う、熱い信念があったのです。
「千葉ウシノヒロバ」を運営する株式会社千葉牧場を立ち上げた川上鉄太郎さんにお話を伺いました。
▲気さくな人柄が魅力的な代表取締役の川上鉄太郎さん。完成予想模型の前で。
公開 2020/08/21(最終更新 2020/10/08)
編集部 モティ
編集/ライター。千葉市生まれ、千葉市在住。甘い物とパンと漫画が大好き。土偶を愛でてます。私生活では5歳違いの姉妹育児に奮闘中。★Twitter★ https://twitter.com/NHeRl8rwLT1PRLB
記事一覧へ縁がつながり、酪農の道へ
――川上さんは、各地の企業プロモーションなどを手掛ける株式会社チカビをはじめ、いくつか会社を経営されているとのこと。千葉との関わりもこちらのお仕事の関係からだったとか…。
川上さん:4年ほど前から、不思議と千葉でのお仕事が増えたんです。
成田ゆめ牧場での「チーズフォンデュ晩餐会」や、九十九里町でのイベント企画、栄町で訪日外国人向けのバスツアーなど…。
その縁もあって千葉県への愛着が湧いてきたころ、公募(※)の話を聞いて興味を持ちました。
※編集部注:2019年、若葉区にある「千葉市乳牛育成牧場」が廃業となるのにあたり、千葉市がその跡地整備を行う民間企業を募集した。
――これまで、もちろん酪農の経験は…。
川上さん:ありません! なのでまずは勉強ですよね。
お付き合いのあった成田ゆめ牧場をはじめ、行政や学者の方、銀行関係者など各方面の有識者からもいろいろな話を聞きました。
その上で痛感したのが、日本の酪農業を取り巻く課題の多さと、廃業に追い込まれた乳牛育成牧場の重要性。
乳牛育成牧場って、一般にはあまりなじみはないかもしれませんが、生後4カ月~6カ月の子牛を酪農家さんから預かり、18カ月間育てる場所なんです。
酪農家さんは限られたスペースで、できれば生産力のある成牛だけを育成したいと考えます。
そこで、子牛を酪農家さんに代わって生育する「預託事業」を請け負うのが、乳牛育成牧場。
いわば日本の酪農の土台ともいえる場所です。それが失われるという事態に、危機感を覚えました。
▲酪農で千葉を盛り上げたい!
川上さん:そして千葉県は酪農発祥の地でもあります。
だからこそ、この場所で酪農を盛り上げるお手伝いがしたい。とはいっても、酪農については素人ですし、ぎりぎりまで悩みました。
でも結果、締め切り直前に提案書を作成し、成田ゆめ牧場を運営する(株)秋葉牧場と共に公募に手を上げ、事業を引き継ぐことになりました。
「千葉ウシノヒロバ」でできること
――「千葉市乳牛育成牧場」の跡地活用を民間に募集したということは、預託事業だけでは存続は厳しいのでしょうか…?
川上さん:酪農家さんから支払われる預託料で人件費とエサ代を賄うという、とてもシンプルなビジネスなんです。それだけになかなか黒字化が難しいと言われています。
「千葉ウシノヒロバ」では、育成牧場の預託事業を継承しつつ、観光牧場として、一般の来場者が楽しめる要素を盛り込みました。
10月のプレオープンでは、バーベキュー、マルシェ、ワークショップなどが楽しめます。
さらに11月にはキャンプ場もオープン予定です。
本来は子牛しかいない乳牛育成牧場ですが、「千葉ウシノヒロバ」では成牛もいますので、搾乳体験などもご用意しています。
――牧場の敷地内でキャンプができるのは、すてきですね!
▲キャンプ道具のレンタルもあるので手ぶらでもOK
川上さん:さらに、若葉区は農家が多いという特徴もあるので、近隣農家さんと連携して地元野菜が購入できるマルシェも開催する予定です。
▲新鮮な地場野菜でバーベキュー、なんてこともできちゃいます!
川上さん:近隣農家さんからの協力にあたっては、一軒一軒自身で訪ね、理解を深めてもらっています。
実は僕が経営している別の会社で、九十九里町に食品工場を設立したんです。
そのときも、反対、賛成それぞれの方がいらっしゃいましたが、実際に会って話すことで信頼関係を築けました。
その経験からも、時間をかけてコミュニケーションを取り、お互いに知ることを大切にしています。
――ワークショップではどんな体験ができるのですか?
川上さん:ここならではの内容のものを考えています。廃材を使ったワークショップはぜひやりたいですね。
牛舎など、既存の建物をできるだけ利用していますが、リニューアル工事に伴い、どうしても廃材が出てしまうんです。
それらを新たな作品として生まれ変わらせることができたらいいなって。
▲木々に囲まれた空間をただ歩くだけでも癒されそう
川上さん:今後は、牛舎を利用したレストラン、できたてのチーズを提供するチーズ工房、新鮮なミルクが味わえるミルクバー…と、楽しい施設を続々オープン予定です。
ミルク風呂に入れる温浴施設を作る構想もあるのですが、かなり大規模な工事となりそうなので、ゆくゆくは…という感じですね(笑)。
千葉県を掘り下げ、魅力を発信する
――千葉ウシノヒロバで働く方は地元の人が多いのですか?
川上さん:地域の雇用創出、というのも大事にしたいので、オープニングスタッフは、地元住民を中心に募集させていただきました。
中には、僕たちのnoteを読んで面接に来てくださった方もいて、想いやビジョンが共感できていることがうれしかったですね。
川上さん:実際に地元の方々と交流が増えて思うのは、千葉の方たちって「フラットな印象だな」ということです。
傾向として、東京は他人には興味が薄い、地方は人同士の距離が近いというのがあると思うんですが、そのあたり千葉の人たちの距離感ってちょうどいいですよね。
ここからは、僕の勝手な解釈なんですけど、千葉って「江戸の裏庭」的な立ち位置だったんじゃないかと想像しています。
江戸から近くて広大な土地があるのに、大規模な侵略もなく、自由にやってこられたイメージ。東金御成街道は実際、徳川将軍が鷹狩りに使っていたと聞きますし。
「千葉」という地名も日本書紀にすでに登場しています。
1000年以上も前に誕生した地名がいまだに現存しているってすごいこと。
名前の由来も、「千枚の葉が繁茂するほど実りが豊か」という意味が込められているといわれています。
それだけ千葉には魅力がたくさんあると思うんですよね。
だから僕たちは、ただポンッと新しい施設を作るのではなく、その地域に潜在する『いいところ』を引き出して、付加価値を付けたいと考えています。
――千葉のことをたくさん褒めていただいて、恐縮ですがうれしいです!
ありがとうございました!!
株式会社千葉牧場では、今後は酒々井でも新施設を展開予定とのこと。
川上さんたちの取り組みを通じて、住んでいる私たちも、もっともっと千葉のことが好きになるかもしれません!
問い合わせ/info@chiba.farm