【夏休みの宿題】自由研究のテーマに迷ったら… 昆虫について調べてみよう!千葉県「昆虫ドーム」情報も
(昆虫ドームのカブトムシ)
※こちらの記事は2019年7月15日に更新しました。
今年もやってきました、夏休み。
夏休みといえば…昆虫!!からの自由研究!!
ネットであれやこれや調べて、子どもに無理やりやらせてみたり、いろいろ口出し手出ししたりして、一体誰のための自由研究なんだ?ってなっていませんか?
そこで、子供の自由研究のヒントを求めて、2018年7月、国立科学博物館で開催された特別展「昆虫」と、千葉県長生郡の「昆虫ドーム」へ行ってきました。
男の子には特に人気の昆虫。採集方法や、観察の仕方などを特別展「昆虫」を監修した博士に聞いてみました。 家の近所の 雑草でも珍しい昆虫が見つかるかも!?参考 にしてみてください。
公開 2019/07/18
自由研究のテーマのヒント
2018年夏に開催された国立科学博物館(東京上野公園)の特別展「昆虫」。
特別展「昆虫」は、国立科学博物館 動物研究部所属の野村周平さん(研究内容:アジア、オセアニア産ハネカクシ上科甲虫の系統分類学的研究など)、神保宇嗣さん(研究内容:チョウやガの仲間、特にハマキガ科の分類学的な研究など)、井手竜也さん(研究内容:タマバチ科“ハチ目”の分類および生態に関する研究)、丸山宗利さん(九州大学総合研究博物館)が監修で参加されました。
監修者のお一人でチョウやガの仲間の研究をしている神保宇嗣さんに、夏休みの自由研究でどんなことを調べたら良いか聞いてみました。
――――自由研究でどんなことを調べたらいいと思いますか? 何かヒントのようなものがあれば教えてください。
昆虫には、私たちが知っていること、私たちが知らないこと、謎のかけらみたいなものがいっぱいあるので、その中から自分なりの疑問を見つけてほしいと思います。
疑問が見つかったら、その虫を取ってみないといけない、観察してみないといけないと思うんです。
「じっくり観察するっていうこと」がどういうことなんだっていうのが分かったら、疑問に思ったことを観察するときに、差ができるのではないかというのが一つです。
ですので、「自由研究はこれ」っていうよりは、自由研究のかけらを探してもらって、自由研究の方法について興味を持っていただけるとすごくいい研究になるんじゃないかなと思います。
(特別展「昆虫」に展示された標本)
―――――神保先生は小さい頃から虫が好きだったんですか?
興味を持ち始めたのは4歳、5歳くらいです。
東京近郊に住んでいたけれど周りが田んぼだったのが幸運でした。
――――都会に住んでいたら、虫にあまり出会えないから昆虫博士になっていなかったかもしれないですね。
ただ都心であっても見ようとしないだけ、見えてないだけで案外いるものなんです。
皇居や、国立科学博物館附属自然教育園(港区白金台)という施設なども調査するとものすごく面白いものが出てくるんですね。
ですから、都会でも緑地のようなところで探すといろいろなものが出てきます。
例えばせみの抜け殻探しなんていうのもできるかもしれないですね。
「都会のこんな場所に、アブラゼミの抜け殻がいくつあった」なんていう探し方だってできますからね。
―――――夏休みだからこそ、そういった普段見えてないことを見つけるチャンスかもしれないですね。捕まえるときの持ち方などで注意することはありますか?
チョウやガでしたら網で捕まえるのが一般的です。
チョウやガの仲間は、羽を持つと「りんぷん」という粉が付いてしまいますし、柔らかいものなので羽がちぎれちゃったりもします。
手で捕まえるときは、胸の部分を横から優しく持ってあげるようにしましょう。
――――チョウの胸の部分はどこになりますか?
横から見ると脚が生えている部分が胸の部分になります。
頭と胸とおなかの三つの部分があるんですね。脚が生えている胸の部分を挟むように軽く持ってあげると体に傷をつけずに持ってあげられます。
そうすると逃げようとするので、ピチピチと筋肉が動くのが分かるんですよ。
(チョウのオブジェで胸の部分を確認!)
―――――筋肉が動くのが分かるんですか??そうやって実際に子どもが感じ取ることができる、五感を使っていろいろな疑問を抱いていくことが自由研究につながりますね。
タテハチョウというチョウの仲間は、6本脚のうち、前の2本を使わず、後ろの4本しか使わないんです。前の2本は何かの感覚器として使っているんですね。それがタテハチョウの特徴。他の仲間は6本使う。
では、この4本をどうやって使っているのか見てみようなんていったら、それはもう立派な研究ですよ。
じゃーそれをビデオにとってスローモーションで見てみようか?なんて感じでやっていくといいですよね。
―――――そもそもチョウやガはどのくらいの種類がいるんですか?
日本には、チョウは250種、ガは6,000種もいるんです。
ポケモンもびっくりですよ!!
見つかってないものがあったりするので、7,000種以上いるでしょう
その辺の桜並木にいるけど、名前が付いていないものもいます。
―――――え!? 自分が初めて見つけたら、名前を付けられるんですか???
ま、まあそうですね。
ただ、世界中どこでも名前を付けられていないという証明をするのが一番大変なんです。
見つけた!って思ったらヨーロッパのフィンランド辺りで誰かが先に見つけてたなんてことになる…。
ですので、見つけたらすぐに新種というわけにはいきませんが、新種になるかもしれない種類を見つけるのはそんなに難しくないことかもしれません。
――――その虫が新種なのか、それともある種の奇形なのかはどうやってわかるんですか?
それは同じ場所から同じ種類がいくつもでてきたら新種と判断しますし、1個体だけだったら奇形と判断したりします。
対応するオスとメスがいて、同じ共有する環境にいるとなったら新種かなって分かってきます。
そういう判断をするには、ある種類についてたくさんの標本が必要になってきます。
そうすることで、個体を持ってきたらどれにもあてはまらない。これは新種かもしれない!となる。
そのために私たちは、収蔵庫にはおよそ200万点の標本があって、それでも全く足りないんです。
―――――200万点でも全然足りない! 果てしない!!! 毎日捕まえにいってるんですか?
毎日捕まえたいところだけど毎日はさすがにいけない。
ある人が一生かけて集めた標本コレクションを私たちに預けてくれたりします。
コレクションの寄贈がいろいろあるんです。
一人でなんてぜったいできない世界。それはもうプロもアマチュアも関係ない。
日本中のアマチュアの方とタッグを組んで、プロなので海外の文献を調べたりして、研究しているということです。
ですので、誰にでも新発見するチャンスはあります。それは子どもでも!
私が足りてないと思う事は、野外に出てじっくり観察する時間です。
野外にでると「あれ?おかしいな」っていうことに気がつけることが絶対あるんです。
もしかしたら柔軟なお子さんの方が超大発見をするかもしれませんよ。
―――――夢がありますね!
いわれてみればそれは誰も考えたことがなかった!ってなるかもしれない。
―――――誰も考えたことがない…柔軟な発想は子どもならではかもしれませんね。私は子どもの頃、チョウのストローみたいな口を不思議に思いましたが、これはどういう仕組みなんですか?
ストローといわれているチョウの口は、吸っているわけではなく、毛細管現象といって勝手に吸い上がってくるんです。浸透してきている。
筋肉があるので動かせるけど、べちゃっと蜜などにさすと、ひゅーって吸い上がる仕組みなんです。
―――――ストローみたいに吸っているのかと思っていました。知らないことがいっぱいで面白いですね!
昆虫っていうのは卵があって幼虫の期間があって、さなぎがあって成虫になるんですね。
実は幼虫(芋虫、毛虫のとき)と成虫(チョウ、ガのとき)っていうのは明確に役割をわけています。
幼虫の時期は栄養をとって育つための時期。
成虫っていうのは、生殖のための時期。
成虫になったらもう大きくならない、蜜を吸うのは飛ぶときのエネルギーとして補助として吸っているんです。
種類によっては、成虫になったときに口を持たないものもいて、その補助的な栄養をとらないで、ガになったときに使うためのエネルギーもたくわえておいて、生殖だけのために生きているものもいます。
昆虫っていうのは空に飛び出した最初の生き物なんですね。数億年前には空を飛んでいましたから、それは恐竜より早い。
羽っていうのは大事で、チョウはキレイな模様で繁殖相手を見つけるためのものだったりします。
―――――「りんぷん」に毒があるのは本当ですか?毒はなんのためなんですか?
りんぷんは、元々は体毛なんですね。毛が平べったくなって、ちょうど瓦葺屋根みたいに並んでいるのがりんぷんなんですけど、羽についているりんぷんは毒はありません。
しかし、毒がある種類がいますか?って聞かれると「います」。
かぶれる種類のガがいます。
粉には毒がなくて、おしりにあるモサモサのところに幼虫時代の毒を残していて、この毛の中にまぶしているんです。
一粒で二度おいしい!
成虫になったら幼虫のときの毒毛を使って自分の身を守っているんです。
また、卵を産みつけるときに、毛をくっつけるためにもなるんです。
そうなると、一粒で三度おいしい!!
―――――なぜ毒がある種類とない種類がいるんですか?
それは謎です!私にもわかりません。
6,000種類いるガの中で、毒があるのは20種以内しかいないんです。種類としてはレアなんですが、身近なところにいるから気をつけなきゃいけない。
一番身近なのは椿とさざんかの植え込みの中。茶毒ガという、大変かぶれやすい種類のガがいるので気をつけてください。私も何度もやられてます。
――――普段ほとんど考えることのない昆虫の世界の話。少し聞いただけでももっと聞きたくなりました。最後に、研究とは何なのか、研究の行き先を教えてください。
私たちの研究は役に立つものには行き着かないです…。
そもそも、周りにある全然分からない「自然」というものが、「どういう風に成り立っているのか、どんなものがいるのか」を枚挙していこうと…。
「名前を付けて、区別できるようにしよう」というところからスタートするんですね。
で、その部分を中心にしているわけですけども、この種類は絶滅しそうだから、守りましょうという話なんですが、「その虫に名前が付いていない、人間が認識していない」となると絶滅するもなにもないわけですよね。
何が絶滅するか調べるにはそこにどういう虫がいて、どんな名前が付いていて、どういう生活をしているということを知らないといけません。
それが回りまわってたまっていくと環境の保全になると思うんです。
もう一つは、新しい素材なんかを作るってなったときですね。
モルフォチョウっていうキラキラしたチョウを使って、見る方向によって色がかわる素材を作るとなったとき、モルフォチョウの半透明の部分は、顕微鏡で見ないとわからないような突起があって、水をはじいたり、光の反射を抑えたりする効果があるっていうことが分かっているんですけど、素材を作るときにこういう構造が分かっていると、ここに何かありそうだ! じゃーどの昆虫を調べたらいいんだろう…こういうことに使いたいんだったらこれとこれが候補になるんじゃないですかね?っていうレファンスとして使えます。
まあ、図書館みたいなものです。
要するにいつ使えるか分からない本があったとして、何か調べたくて行ったときに「ここにあった!!」という風に出てくれば、もしかしたら役にたつかもしれないってそんな風に私は思っています。
――――――壮大!!!研究つらくないですか?
そりゃーつらくなったりもします(笑)。
昆虫ドームでカブトムシを捕まえよう
続いては、たくさんのカブトムシに会える「昆虫ドーム」(千葉県長生郡長柄町)にヒントを探しに行ってきました。
昆虫ドーム内には、カブトムシが放し飼いにされており、気軽にカブトムシ採集を楽しめるとあって親子に人気。
木の枝や足元の木枠の隙間、葉っぱの陰などを注意深く見てみると、カブトムシの姿が! 探すのは意外と難しいですが、それがまた楽しいです。
(立派な角を持つカブトムシを発見! 昼間は葉っぱの陰や、木の根元にいることも)
「どこにいるのかな〜」と子どもだけでなく大人もつい夢中になってしまいます。見つけたカブトムシは捕まえて観察したり、触れてみたり、楽しみ方は自由。
もちろん気に入ったら何匹でも持ち帰ることができます(有料)。
期間中には「昆虫講座」(開催日時限定)も行われており、カブトムシの生態や正しい飼い方、採集のヒントなどを学ぶことができます。
(2018年の講座に登場したゲスト昆虫、オーストラリアのニジイロクワガタ)
「カブトムシに触れることで子どもたちが自然に興味を持ってくれるとうれしいです。ここがそのきっかけになればいいですね」と同センターの所長・内山良宏さんは話します。
飼育の仕方次第で、12月くらいまで生きることもあるというカブトムシ。
山奥などに行かなくとも、意外と家の近所にいたりもするそうです。内山さんは、千葉市内の公園で見つけたこともあるんだとか。
内山さんに、カブトムシの持ち方を実践してもらいました。
オスは、2本ある角のうち短い方の角を持ちます。
メスは、胸とおなかの部分を持ちます。
採る楽しさ、カブトムシの魅力に触れることで、そこからカブトムシについて疑問がわいてくるかもしれません。
「昆虫ドーム」に訪れてはいかがですか?
住所/長生郡長柄町山之郷70-15(長柄町都市農村交流センター)
開催期間/7月中の土・日・祝及び7月20日(土)~8月15日(木)まで
※天候の理由による臨時休業や生育状況により早期閉園の場合あり
時間/9時~16時30分
料金/200円(3歳以上)
電話番号/0475-35-0055
昆虫講座
開催日時/7月8日(土)・13日(土)・8月3日(土)・11日(日)10~11時ごろ
料金/300円
対象/小学生以上(未就学児は要相談)
定員/各回30人(予約制・先着順)