車いすバスケットボールの名門チーム 「千葉ホークス」が目指すこと
千葉市稲毛区にある、千葉県障害者スポーツ・レクリエーションセンターを拠点に活動する千葉ホークス。
チームの歴史は半世紀にもおよび、数々の全国優勝や日本代表選手を輩出する名門チームです。
車いすバスケ界で先陣をきる千葉ホークスの代表、田中恒一(つねかず)さんに車いすバスケの魅力やチームが目指すことを聞きました。
公開 2020/01/07
車いすバスケのざっくり基本情報
車いすバスケのルールは、一般のバスケとほぼ同じ。
1チーム5人で戦い、試合時間は1ピリオド10分を4回行い、コートの大きさやゴールの高さも同じです。
大きな違いは車いすバスケにはダブルドリブルが無いこと。
また、選手は障害の重い順に1.0~4.5点の持ち点があり、コートの中にいる5人の持ち点の合計を14点以内にしなければなりません。
持ち点ルールがあるので、障害の重い人でも試合に出られるようになっています。
重要なのは「チェアワーク」
車いすバスケは、「チェアワーク」と呼ばれる車いす操作ができることが大前提。
操作するのは競技用車いす。
ブレーキが無いので、停車するときはタイヤを手で握って止めるので、自分の握力が頼り!
慣れるまでは手の皮がむけたり、水ぶくれになったり…。
手の皮が厚くなるまで1年ほどかかるそうです。
プレーはまっすぐ走るだけではなく、体の動きで向きを変えたり、ドリブルして止まったり。
どれもチェアワークの技術によって成り立っています。
そして、チェアワークの技術をサポートしているのが競技用車いす。
素早く動くために軽く、接触や転倒から選手を守るために全面にバンパーが付いています。
一番の特徴はタイヤがハの字になっていること。
ハの字の角度は選手ごとに違い、ハの字が広ければ広いほど旋回はしやいですが直進は遅くなり、ハの字が狭ければ直進は早いですが旋回はしづらくなります。
また、座面の高さも違い、座面が高いとゴールに近くなりシュートに有利ですが不安定になり、座面が低いと安定はしますがゴールからは遠くなってしまいます。
障害の状況もそれぞれなので、選手は自分のプレーが最も生かせるように車いすを選び、足りない部分は筋力トレーニングをして補っています。
タイヤがハの字になっている競技用車いす。車いすにも選手の個性が表れます
巧みに車いすを操る選手たちですが、もともとはリハビリの一環として車いすバスケを始めた人がほとんど。
難なくプレーしていますが、一般の人が車いすバスケをすると息が上がる前に腕が上がらなくなってしまうそうです。
華麗なチェアワークはトレーニングの賜物なんですね。
正確なシュートも地道な練習から!
車いすバスケ、ここを見ろ!
一般のバスケの試合ではやっぱりシュートをする選手が目立ちます。
個人の妙技で相手をかわし、豪快にダンクシュート!
観客が湧く花形プレーです。
一方、車いすバスケのシュートは個人の技ではなく、チームプレーで成り立つもの。
車いす同士のポジション争いの中で、シュートする選手をいかにゴールに近づけるよう、
自分が壁になって敵を近づけないようするプレーもあります。
タイヤを持つ手の位置を見てどの方向に行こうとしているのかを判断して、ディフェンスをしたりします。
また、車いすは後ろが見えない分、常に声を出して状況を伝えています。
こうして、シュートをする選手のために「道」を作ってシュートにつなげているのです。
反応の速さ、判断力、伝達力が求められる車いすバスケットボール。
シュートよりもボールを持っていない選手のポジション取りが注目ポイントです!
特に頭脳戦が繰り広げられているゴール下のポジション取りは見逃せない。
緻密なプレーがシュートにつながることが分かってくると、観戦がより楽しくなってきますよ!!
目指すはプロ!世界に通用するチームになる
千葉ホークスの歴史は長く、1969年に労働災害者の訓練施設(白子作業所)で「千葉作業所チーム」として誕生したのが始まり。
1985年に活動拠点を千葉市稲毛区にある「千葉県障害者スポーツ・レクリエーションセンター」に移し、チーム名も「千葉ホークス」に改称されました。
創部当初から練習量の多さと厳しい練習が有名で、輝かしい成績を残し続け、名門と呼ばれている車いすバスケチームです。
現在のチームの代表・ヘッドコーチを務めるのは、田中恒一さん。
眼光鋭い田中さんは、元日本代表選手。
名門であり続けなければいけないチームの代表となり、目指すことは何か。
話を聞きました。
千葉ホークス代表・ヘッドコーチ 田中恒一さん
――車いすバスケは人気ですね。
車いすバスケはパラスポーツの中では飛びぬけた存在で、健常者も楽しんでいます。
障害者のスポーツではなく一つの競技として見られるようになり、ドイツやスペインにはプロチームがあります。
ですが、日本は海外から見るとまだまだ環境が整っておらず、地域でも格差があります。
海外チームを呼びたくても呼べる状況ではありません。
――東京でパラリンピックがあるので、環境が整ってきているのかと思っていました。
企業がスポンサーになってくれたり、良い面はもちろんあります。
しかし、パラリンピックで一瞬人気になったパラスポーツは無くなってしまうかもしれません。
2020年以降、どうしていくかを考えていないといけませんね。
――千葉ホークスは何を目指していますか?
プロチームになることです。
千葉ホークスは50年の歴史があり、トップにいます。
日本代表選手も指導者も千葉ホークス出身が多く、そういった面でもお手本にならないといけないと思っています。
――強さの秘密は何ですか?
車いすバスケは習慣のスポーツ。練習量・練習の質で強くなります。
そして、練習以外の時間配分ができるのがプロ。
仕事・家庭があり、日常生を過ごす中で、いかに効率よく体を動かすか考えていかないと。
これは障害がある・なしに関係なく言えることですね。
――選手が車いすバスケを始めるのはリハビリがきっかけと聞きました。
そうですね。
僕自身もそうですし、ほとんどの選手がリハビリからです。
障害があると家にこもってしまいがちですが、障害があってもできることは多いです。
今は情報もたくさんあるので、車いすでもスポーツができるんだと前向きになってほしい。
車いすをきっかけに、社会復帰してほしいですね。
2020年の先を見据えて活動する千葉ホークス。
どんどん興味が湧いてきます。
千葉ホークスの練習は見学自由、3月には千葉市長杯が開催されます。
エキサイティングな車いすバスケ、ぜひライブで楽しんで!
<千葉ホークス>
練習場所:千葉県障害者スポーツ・レクリエーションセンター(千葉県千葉市稲毛区天台6-5-1)
見学自由!スケジュールをチェック!!